あれから5日・・・

目まぐるしく忙しいのに、

悲劇の夜から何も進展していない・・・

 

「お姉さまー」

「リリ、どうしました?」

「いえー・・・お姉さま、少しは休まれた方がー・・・」

「じゅうぶん休みましたわ、それよりする事が山ほどありますから・・・」

「でもー、ほとんど寝ていないとー・・・お姉さままで倒られてはー・・・」

 

確かに少し頭がクラクラするけど、

弱音を吐いてはいられない・・・ハプニカ様もあのお方も、もっと大変なんですから。

 

「リリ、ハプニカ様はどうしています?」

「はいー、シャクナさんがお世話していますー、扉の前ではターレ公爵が見張りをー・・・」

「ではあのお方は?」

「ミル様の治療が続いていますがー、まったく変わらずー・・・」

「・・・死んでしまっているという訳ではなさそうなのですね?」

「だとー・・・ミル様はレンがお守りしていますー」

 

ミル様もほとんど休んでいないはず・・・

かといって、あのお方の命を見切るなんて事は絶対にできないですものね・・・

 

ガチャッ

 

「ララ姉さん」

「どうしました?ルル」

「その・・・マリーが・・・脱走しました」

 

なんてことでしょう・・・!!

本来ならあと1・2週間は安静なところを、

一応、皇族の方だからと特別牢で重点的に治療魔法をかけるように指示はしていましたが・・・

顔の傷もほぼ復元できたとはいえ、まだまだ治療の途中なのに・・・

皆がまだマリーの体は動けないだろうと思っている隙を突いて、強引に逃げ出すなんて!!

 

「それで、警備は!?」

「いえ・・・すぐに捕まえました、屋上でマリーの白竜を呼ぼうとして、来なかったみたいです」

「そうですか・・・よかった・・・でもどうやって逃げたのですか?」

 

やはりまだ味方が残っていて・・・!?

 

「それがその・・・アレをアレして、アレがあーなっている間に・・・」

 

顔を紅くしているルル。

 

「・・・・・きちんと報告していただけますか?」

「は、はい!鍵を持った看守を誘惑して、檻ごしに・・・口で・・・しゃぶっている間に、

 鍵を奪って・・・口の中に何度も何度も看守の・・を出させて、限界を超えて出させて気絶させた隙に・・・」

「・・わかりました、ではマリーは独房へ入れて、衛兵には女性をつけてください」

 

マリーからは、まだまだ聞き出さなければならない事が山ほどある・・・

逃がす訳にはいかないわ、でもどうやって口を割らせれば良いのでしょうか・・・

 

「スロトはどうしています?」

「あいかわらず独房でふんぞり返っています、食事がまずいと文句を・・・」

「尋問は続けているのですね?」

「はい、私が・・・でもなかなか難しいです」

「ルル、大変でしょうけどハプニカ様の意識が元に戻るまでの辛抱です」

 

一礼して出て行くルルの表情は、重く暗い・・・

ハプニカ様がいつ元に戻るか、その予測は・・・まったくつきませんものね。

 

「リリ、国民はどうしていますか?」

「はいー・・・皆さん、トレオ殿の正体をわかってしまったようでー・・・」

「それで・・・どうなっています?」

「嘆き、怒っておられますー・・・」

「そうでしょう・・・我々の落ち度は言い逃れできませんから」

 

国民全員、あのお方を敵と思って疑わなかったのですから。

 

「ターレ公爵の演説で一応おさまってはいますがー・・・そのー・・・」

「不満の火種はあるでしょうね」

「あのお方を刺した、レンに責任を取らせるべきとの声がー・・・」

 

・・・レンは悪くはないわ、

あの状況では気付く事など、到底無理・・・

いえ、レンが悪いとしても、みんなが悪いわ、レンだけが悪い訳ではないわ・・・!

 

「きっとそれは・・・スケープゴートなのでしょう」

「はいー・・・早く一番悪い首謀者を処分しませんとー・・・」

「しかしハプニカ様の命令無しにスロトを処刑する訳にはいきませんわ、尋問もありますし」

「それとー・・・ハプニカ様の結婚の相手ですがー・・・国民はー・・・」

「まさか、ターレ公爵だと・・・?それなら不満もつのるでしょうね」

 

不満というより不安なのでしょうが・・・

 

「いえー、国民の皆様はー、すっかりあのお方だと決め付けていましてー・・・」

「・・・良かったですわ、国民の皆さんも節穴ではないようですわね」

「それでー、ハプニカ様やあのお方の、生きたお姿を早く見たいとー・・・」

 

そういう意味で不安なのね・・・

 

「わかりました・・では・・・ハプニカ様がああなっておられますから、あくまで非公式に・・・」

「婚約の発表ですかー?」

「ターレ公爵が騒ぐと色々面倒ですから、ハプニカ様もあのお方も健在で、元気になり次第、2人で挨拶すると・・・」

 

これなら婚姻の発表だと推測してくださるでしょう。

 

「わかりましたー、非公式に広めさせてきますー」

 

これで良いですわね?ハプニカ様・・・

 

「では私は大臣の中から他に裏切り者がいないか調べましょう」

「密告は多数きていますー、ただ全て本物という訳ではなさそうでー・・・」

「言われ無き誹謗もあるでしょうね、そのための尋問です、では行きましょう」

 

 

 

 

 

その翌日・・・

 

「お姉さまー」

「リリ、どうしました?」

「尋問の途中経過をお持ちしましたー、証拠が固まったのはこれだけですー」

 

・・・やはり昔から、

ジャイラフ様に尽くしていた方が多いですわね・・・

 

「不明なお金の行き来も一緒に出てきましたー」

「・・・これは酷い・・・ハプニカ様が気付かないように巧みに計算させていますわね」

「ハプニカ様にはー、わざと細かいミスを見せて目くらましをしていたようですー」

 

許せない・・・

復興に大切な資金をこんな風に!!

 

ガチャッ

 

「ララさん・・・」

「ミル様!?どうなされたのですか?」

「ふぇえええええええん・・・・」

 

ま・・・まさか!?

 

「ひょっとして・・・あのお方が・・・?」

「まったくよくならないのぉ・・・えぇぇ〜〜〜ん・・・」

 

私の胸に抱きついて泣くミル様・・・

すっかりやつれて・・・ずっと回復魔法をし続けていたのですものね。

 

「お休みになられた方が・・・」

「うん・・・シャクナさんに代わってもらったからぁ、レンちゃんも守ってるからぁ、御姉様と一緒に寝るぅ」

「ハプニカ様と・・・そうですわね、ハプニカ様もミル様がお傍なら、意識が戻るかも知れませんわね」

 

ガチャッ

 

「ララ姉さん」

「どうしました?ルル」

「その・・・マリーが・・・また脱走しました」

 

ま、また!?

 

「それで、行方は?」

「またすぐに捕まりました、今度はハプニカ様の白竜に無理矢理乗ろうとして、返り討ちに」

「そうですか・・・よかった・・・でも看守は女性にしたのでは?」

 

まさかその女性がマリーの手下だったとか?

 

「それが・・・その・・・アレをアレして、アーなっている間に・・・」

 

また顔が真っ赤なルル。

 

「・・・恥ずかしがらずに、ちゃんと報告しなさい」

「は、はい!看守の女性を言葉巧みに小窓まで呼び込んで、

 小窓から指を出して、看守のあそこに指を・・・執拗に感じさせて、

 いかせて欲しかったら中へ入るように誘って、中で徹底的にイカせて、グッタリしている間に・・・」、

 

女性でも駄目だなんて・・・そうだわ!

 

「では看守にターレ公爵をお願いしましょう」

「・・引き受けてくれるでしょうか」

「ハプニカ様のためと言えば喜ぶでしょうし、マリーは一応皇族の人間です、その監視であると言えばいいでしょう」

 

・・・決して馬鹿にしている訳ではありませんわよ、ターレ様・・・

 

「ではお願いしてきます」

「お願いします、それで今のハプニカ様のお世話は?」

「それは・・・あ、ターレ公爵1人だ」

「・・・愚かな事はしていないと信じましょう」

「急いで行ってきます!」

 

一目散に飛び出すルル、

それについていくミル様・・・

やはり本当に信頼のできる人手が足りなすぎるわ、何とかしないと・・・

 

「では今日も尋問を続けましょう」

「はいー、今日は牢に入れる方が多そうですー」

「逃げた方もいるようですわね、隣国に手配書を送りましょう」

 

 

 

 

 

またその翌日・・・

 

「お姉さまー」

「リリ、どうしました?」

「逃亡した大臣や官僚が何人か捕まりましたー」

 

・・・国内で捕まった方が多いようですわね、

逃げてくださった方が自白と同じですから楽かも知れません、

問題なのは、しらばっくれて潔白を言い張る悪人・・・あぶり出さないと。

 

「ハプニカ様の様子は?」

「それがー、今朝から言葉を発する機会が多くなったそうですー」

「それは良い前兆ですか?」

「ミル様がそう申しておりますー、ミル様の看病がきいたのかとー」

「やはり姉妹ですわね・・・」

 

でも一番必要なのは、おそらくあのお方の看病・・・!

 

「あのお方は?」

「それがー・・・シャクナさんがー・・・」

「やはり力量的に無理がありましたか?」

「いえー、シャクナさんが信じられない程、強大な回復魔法をー・・・」

「それは嬉しい誤算ですわね、素質はかなりのものがあったのでしょう」

 

ミル様と同等とまでは言わなくとも、

匹敵する回復魔法の使い手がいれば、交互に休めますものね・・・

 

ガチャッ

 

「ララ姉さん、マリーが・・・」

「逃げたのですね?」

「でもハプニカ様の白竜が捕まえてくれました」

 

・・・・・ターレ公爵、

ハプニカ様に愚かな事をしなかったと安心してマリーの看守を任せたのに・・・

 

「しょうがないですわね」

「ターレ公爵、マリーが独房の中でオナ・・・」

「その報告はもういいですわ、こうなったら私が看守をしましょう」

「いえ、ミル様がすでに看守をしておられます」

「え?ミル様は今日一日静養なさるのでは・・・?」

 

ミル様の幼い体では、今日こそ休ませなくてはいけないのに!

 

「それが、どうしてもってきかなくって・・・」

「・・・・・わかりました、無理なさらぬようお伝えください」

 

私にも山ほどの作業がありますから、

ミル様がそうしたいのであれば、させるしかありませんわ。

 

「それで今、ハプニカ様は?」

「レンが看ています、シャクナさんの警護はターレ公爵に」

「そうですか、不穏な動きはありませんね?」

「いえ、たまに・・・そのつど対処し、牢に放り込んでいます」

「わかりました、ルル、あなたも少しは休みなさい、1時間でも横になると効率が上がりますよ」

 

みんな疲労の色が濃い・・・

しかも、これがいつまで続くかわからない・・・

でも、やるしかないのですから・・・ハプニカ様のためにも、あのお方のためにも・・・

 

 

 

 

 

そしてそのまた翌日・・・・・

 

「・・・・・」

「姉さまー・・・姉さまーー?」

「・・・・・・・あ、リリ・・・どうしましたか?」

「いえー、お休みになられるなら寝室へー・・・」

「私はまだ大丈夫ですわ、それより各経過を教えてもらえますか?」

 

頭を振って眠気を飛ばす・・・

この山ほど作業が残っている状態で寝ても、

悪夢を見るだけですわ、でしたらつらい現実を1つ1つ解決していった方が・・・

 

「ハプニカ様には少しずつ改善が見られるようになってー・・・」

「今朝も生気が蘇ってきたようですものね」

「時間がどれくらいかかるかわかりませんがー、戻る見込みはあるそうですー」

 

良かった・・・さすがハプニカ様ですわ。でも・・・

 

「あのお方はどうですか?」

「・・・ハプニカ様とは違ってー、肉体的なダメージを深刻に受けていますのでー・・・」

「変わらず、ですか」

「むしろー、時間がかかっている分ー、望みがー・・・」

「しかし、ここまで経っても完全に終わったという状態になっていないという事ですから、希望は持ちましょう」

 

そうしないと、やりきれませんもの・・・

 

「今日も尋問の続きですわね、まだまだ裏切り者はいそうですが、霞を掴むとでもいいましょうか・・・」

 

タタタタタタタ・・・・・

 

「ララ姉さん!」

「ルル、どうしました?」

「マリーが・・・ミル様が・・・」

「まさか、ミル様までもがマリーに!?」

「いえ、マリーが、改心しました!ミル様が説得したそうです!!」

 

一体どうやって!?

 

「ミル様が・・・その・・マリーがアレしてアレなときにミル様がアレして・・・」

「報告をしなさい、報告を!」

「はい、ミル様がマリーを独房から牢の風呂に入れたとき、マリーがミル様をいつもの手で墜とそうとして、

 逆にミル様が、マリーのテクニックをしのいで、マリーを魔法で何度も何度もイカせて、全て罪を白状させて・・・」

「それは本当なのですか?ミル様にそんな技が・・・いえ、技以前に経験はまったく無いはずでは?」

「逆にそれがよかったんだと思います、マリーはまったくきかない相手に疲れ果てて、防御がほとんどできなくなったのかと」

 

・・・なんとなく納得できますわ、

逆にミル様が少しでも性的な経験を持っていれば、

マリーの性技にすぐに骨抜きにされ、虜にされていたでしょう・・・

経験がゼロに等しかったからこそ、受けられる快感がどういうものか理解できず、

感覚が鈍ってマリーの魔のテクニックを乗り切る事ができたのでしょう、私が相手ならわからなかった・・・

 

「ミル様はどうしていらっしゃるのですか?」

「それが・・・マリーのつけた火が全然治まらなくって、ハプニカ様の隣でずっと自分を慰めています」

「・・・幼い体に、受け入れきれない快感は大変な苦痛だったのでしょう、それで治療は?」

「ミル様自身が、一晩こうやって自分でやっていれば治まるって・・・」

「わかりました、そっとしておきましょう、それよりマリーから尋問のチャンスです、早速聞き取りをしましょう!」

 

ありがとう、ミル様・・・これで一気に平和に近づきます・・・・・

 

もどる めくる