「ハプニカ様・・・嗚呼・・・ハプニカ様・・・」

 

天覧席で泣きながら大声で笑い続けるハプニカ様、

隣でターレ公爵が必死にそれを止めようとしている・・・

ああ、なんていう事なの・・・私が、ハプニカ親衛隊長の私がついていながら・・・!!

 

「大変なことになりましたー、早く治療をー」

「早く!早くタンカを!僧侶もいるだけ連れてきて!!」

 

妹のリリ・ルルが慌ててトレオ・・いえ、あのお方に駆け寄る、

一歩遅れてミルさまも寄り、杖をかざして凄まじいパワーで回復魔法をかける・・・

しかし、この状態ならおそらく助からないでしょう・・・でも・・・私は助けてみせる!いいえ、助けなくてはいけない!!

 

「槍を抜いてはいけません!このまま城内へ運ぶのです!」

「私もお手伝いします!トレオ様!気をしっかり!」

「あなたは・・・シャクナ、さん?」

 

シャクナもミル様に多少劣るとも強大な回復魔法をかけ続ける、

しかし・・・魔法がまったくきいている気配はなく、血まみれの体はみるみる土色へと変わっていく。

 

「ハハハ!ハハハハハハハハハ!!」

 

頭上ではハプニカ様の悲鳴にも似た笑い声が止まらない・・・

あきらかに常軌を逸した表情・・・ターレ公爵がその顔を無理矢理胸に押し付け、

笑い声をくぐもらせると、城内を見渡し、意を決して大声を張り上げた。

 

「皆よよく聞け!今、レン殿が倒されたのはかの大戦の英雄の・・・」

 

闘技場が一気にどよめく。

 

「手違いでこのような事になったが、すぐに怪我は治るであろう!

それより皆に発表がある!近いうちにハプニカの婚姻がある!式も時間の問題だ!!」

 

さらに城内がどよめく・・・

 

「相手はもちろん、この・・・ええい、しつこい!」

 

天覧席ではまだ揉めている様子・・・

よく見ると衛兵が敵味方関係なく小競り合っている、

いえ、これは・・・スロト派の衛兵とハプニカ様派の衛兵とで戦っているわ!?

 

「リリ!ルル!こちらは任せました!私はハプニカ様の元へ!」

 

ふと視界にステージの上でぼーっと立ちつくしたままのレンが見える、

しかし今はハプニカ様が第一!私は本来、大会の優勝者が登るはずだった天覧席への階段を突破してハプニカ様の元へ!

 

「ハプニカ様!!」

 

ついた時にはスロト派の衛兵は皆、倒されていた・・

倒したのはターレ公爵、ではない事は一目でわかるわ、腰をぬかしてらして・・・

幸いにもスロト派の衛兵はそんなに多くなかった様子で他の衛兵が何とか守りきったようだわ。

 

「ハプニカ様!ハプニカ様!!」

「ハハ・・・ハハハ・・・ハハハハハ・・・・」

「そんな・・・狂って・・しまわれたの・・です・・か」

「我が妻はそんなやわではないわ!一晩眠れば気が休まる!早く城へ!!」

「・・・・・あなたが仕組んだのですね、スロト・・・」

 

組みひしがれているスロト、

しかしその表情は満足そう・・・

 

「ムッホン、最初の予定からかなり違う展開になったが、これはこれで面白い結末になったわい」

「・・・・・覚悟はできているのですね?」

「ああ、次期国王は討った、現女王も、もはや使い物になるまい!ムッホン!!」

「・・・・・・・牢へ連れて行きなさい!他の仲間もです!」

「ララよ、次期国王はこの私・ターレだ!討たれてはおらぬぞ!それよりハプニカを早く!」

 

・・・・・色々複雑なことは後で整理するとして、

とにかく今はハプニカ様とあのお方をお城に運ばなくては!!

下ではあのお方がようやくタンカに乗せられ運ばれる、しかしどう見ても、すでに屍・・・!!

 

「ララよ、私はハプニカと共に行くぞ!」

「・・・いえ、私が連れて行きます!ターレ公爵は場を沈めてください!ターレ様にしかできない事です!」

「おおそうか、では早速、婚姻の演説を・・・」

「こんな状態で何を言っているのですか!ハプニカ様の結婚相手は・・・・・当日まで秘密という事でお願いします!」

「そ、そうだな、その方が面白・・・・いや、よかろう・・・ではここは任せてくれ」

 

ターレ公爵からハプニカ様を奪い取る、

ニヘラとした表情でよだれをたらしている・・・

とにかくハプニカ様の寝室へ運びましょう!大変な事になってしまった・・・まさに悪夢!!

 

ステージの中央で泣きじゃくるレン、

しかし誰もなぐさめに行く事はできない・・・

はやくレンが今、何をすべきか気付いてくれる事を祈るしかないわ。

 

「ハプニカ様、私の背中におつかまりください!いきます!」

 

・・・返事の無い、まるで人形のようなハプニカ様をかつぎ、

天覧席を後にする・・・観客は暴動寸前になっている、ここはターレ公爵得意の大演説にお願いしましょう。

 

「あー、私は皇室と長年付き合いのあるフロン家のターレ公爵である、皆に事実を説明しよう!実は大臣のスロトが・・・」

 

 

 

 

 

 

 

「ハプニカ様・・・」

 

ベットに寝かせたハプニカ様に、

コップの水を少し飲ませる、しかし飲み込みはするものの、

ほとんどがこぼれてしまう・・・視点は定まらず、まさに生ける屍・・・!!

 

ガチャッ

 

「お姉さまー・・・」

「リリ、どうしました?」

「・・・あのお方がー・・・」

「・・・・・・・亡くなられたのですね」

「・・・・・でもー・・・ミル様が回復魔法をやめませんー・・・」

 

・・・本来ならハプニカ様が止めるべきでしょうが、

ハプニカ様がこうなっていらっしゃる以上、私が行くしかないようですわ、

なぜなら・・・私が一番、ハプニカ様の事を知っている、影武者なのですから・・・

 

「ではリリ、ハプニカ様を見てあげていてください」

「はいー、ずっとついていますー」

 

部屋を出て緊急医務室へ・・・

あきらかにあわただしく人が出入りしている、

お城中の特級僧侶が呼び出されているよう・・・中を覗くと・・・

 

「おにぃちゃーん、おにいちゃーん・・今、がんばって治してるからぁ!!」

 

ミル様が泣きながら回復魔法を浴びせ続ける、

他の僧侶も補助していて、ミル様の反対側にいるのは・・・

シャクナさんの回復魔法がミル様の魔法の光とうまく溶け合っている。

 

しかし、肝心のあのお方は・・・

 

「ララ様、よろしいでしょうか?」

「確かあなたはミル様の弟子の・・・」

「特級僧侶のラーナンです、私も回復に参加したいのですが入るスペースがなくて・・・」

 

悔しそうに杖を握り締める、

彼女も助からないとわかっていてもミル様のために尽くしたいのでしょう。

 

「ラーナン、それで今の状態はどうなっているのですか?」

「・・・・・ミル様の気が済むまで続ける、としか・・・」

「やはりもう、天に召されているのですね?」

「・・・いえ、ミル様が信じている限りは、蘇生してくださるものだと、私も信じております」

「そうですわね、では私もそう信じる事にします」

 

そうなった以上、回復魔法が使えない私は邪魔になるわ、

ここは任せて・・・あれ?ルルは?ルルはどこへ行ったのかしら?

 

「・・・・ひっく・・ひっく・・ひっく」

「レン、だから今は泣いてる場合じゃないだろ?」

「だってぇ・・だってぇ・・・だってぇ〜〜〜・・・」

 

廊下の突き当たりでルルがレンをなぐさめているみたいだわ、

私もなぐさめてあげないと・・しかし、どれからどう言っていいのか沢山ありすぎるわね・・・

 

「レン、レンがいくら泣いたってあのお方やハプニカ様が回復する訳じゃないよ」

「でもぉ〜〜〜・・・でもおおおおぉぉぉ〜〜〜・・・」

「だったら、泣いてる時間をみんなが回復してからの後回しにして、今はみんなを手伝わないと」

「・・えっく・・・えっく・・・わたしぃ〜・・てつだったらぁ・・・だってぇ〜・・・」

「んもう!私だって、ララ姉さんリリ姉さん、ミル様だって、みんな泣きたいのを我慢してるんだよ!」

 

目が潤むルル・・・

 

「レンだけずるいよ・・・1人で泣いて・・・泣いたら楽だけど・・でも・・・」

「・・・ルルねぇ・・さ・・ま・・?」

「・・・・・・・ハプニカ様や・・あのお方は・・・泣くことすら・・できないんだから・・・」

 

そう言いながら涙をぼろぼろ・・・

まるで、あのお方やハプニカ様のかわりに涙を流しているかのよう。

ルルもきっと我慢していたのでしょう、レンもそれを見て涙を止めようと・・でも止まらない・・・

 

「うっ・・・・・ううっ・・・だ、だめ・・泣いちゃ・・・うぅぅっ・・・」」

「ふぇぇ〜〜〜ん・・・え〜んえ〜〜〜ん・・・え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん・・・」

 

2人とも泣いてしまった以上、私が入らないといけないわね。

 

「ルル、レン」

「ん・・・ララねえさん・・・」

「ララおねぇさまぁ〜〜〜!え〜〜んえ〜〜〜ん」

「・・・・・泣くのは仕方が無い事だわ、でも・・・ミル様は、涙を流しながらもあのお方を治療しているのよ?」

 

レンが私の胸に顔をうずめる・・・

あまりに残酷な結果ですものね、泣いて発散させないと可愛そうかも知れないわ、

でも、そうも言っていられない・・・私達には、やらなくてはいけない事が、本当に山程あるのですから。

 

「ルル、これから私とリリとで今回の謀反参加者を徹底的に洗い出さなくてはいけません、手伝ってくれますね?」

「ぐすっ・・・う、うんっ、もちろんするよ・・・」

「レン、あなたはハプニカ様の看護やミル様のバックアップを交代でやってもらわなくてはいけません・・・」

「え〜〜〜ん・・・え〜〜〜ん・・・え〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん・・・・・」

「・・・・・仕方がないわね・・・ルルはリリの所へ・・・私はレンが落ち着くまでこうしています」

「だって、ララ姉さんが指揮してくれないと・・・」

「・・・そうしたいのは山々だけど、あのお方やハプニカ様が大切ないように、レンも私の妹として大切な、かけがえのない・・・」

「えっくえっくえっく・・・・・ララおねえさまぁ・・・もう・・・いいのぉ〜・・・」

 

必死に涙を拭きながら、私の胸から離れるレン・・・

 

「ハプニカ様のぉ、お世話しますぅ〜・・・」

「レン・・・ありがとう、でもまずはミル様や僧侶の皆さんのバックアップをお願い」

「はいぃ、お食事はこんだりぃ、なんでもしますぅ」

「ありがとう、やっぱり私達の妹だわ・・ではルル、いきましょう」

「ん・・・うん・・・行こう」

 

ルルも涙を切りながら歩きはじめる・・・

本当なら4姉妹揃ってハプニカ様の所へ行きたいんでしょうけど、

今のレンに、今のハプニカ様を見せることはあまりにも残酷すぎてできない・・・

きっとハプニカ様と2人っきりになったら、自分の犯してしまった罪にさいなまれて、

押し潰れてしまうかも知れない、妹にそんな酷い事はできないわ・・・とはいえ私だって心が痛い・・・でも・・・

 

ガチャッ

 

「リリ、ハプニカ様の様子は?」

「はいー、少し良くなったような気がしますー」

「・・・そうですね、心なしか少しだけ落ち着いたように見えますわね」

「ひっ!・・・・ハプニカ様・・・そんな・・・」

「ルル、少しショックでしょうが、これが現実です」

 

魂の抜けたハプニカ様・・・

そのすっかり呆けた表情は、ルルにはさぞ衝撃的だったでしょう、

でも、ここからハプニカ様を元に戻さなくてはなりません、必ず・・・!!

 

「さて・・・まずは・・・」

「ララ姉さまー、さきほどミル様の弟子の方が現れてー、手が空いた信頼できる僧侶をこちらに送るとー」

「そうですか・・・ハプニカ様は心の病ですから、回復魔法でどうこうする事はできませんが、

それでも専門家に見ていただくのは大切な事ですものね、こういった場合の対処法を教えていただきましょう」

「そういえばー、闘技場はどうなっているのでしょうかー」

 

そういえば心配・・・

全てターレ公爵に押し付け・・任せてきてしまったから、

納得のいかない国民が暴動にでもなっていたら、どうしましょう。

 

「じゃあ私が見てくるよ」

「ええルル、お願いするわ。あとリリは・・・」

「お城の中を見てまいりましょうかー」

「そうね、衛兵もショックを受けているでしょうから・・・気をつけてね」

「はいー、ちゃんと剣は持っていきますー」

 

・・・・・1人残されたハプニカ様の部屋、

ターレ公爵が言っていたように、一晩寝て治ってくだすったら、

どれだけ良いか・・・しかし、それよりも深刻なのは、瀕死の・・危篤の、あのお方・・・

 

コンコン

 

「どうぞ」

 

ガチャッ

 

入ってきた僧侶、彼女は確か・・・

 

「失礼いたします」

「あなたはミル様の弟子の特級僧侶・ラーナン」

「先ほどは失礼致しました、ミル様に任されまして・・・」

「わかりました、ではハプニカ様の容態を診ていただけますか?」

「はい、では・・・ハプニカ様・・・ハプニカ様!ハプニカ様!!」

 

ぺしぺし・・・ぺしぺしぺし・・・

 

「・・・・・」

「・・・・・・・・」

 

ぺしーーーーん!!!

 

「!!!」

「失礼致しました、かなり重症のようですね」

「それで・・・治るのですか?」

 

張り詰めた空気が流れる・・・

 

「手短に申し上げますと・・・微妙、です」

「微妙・・・手短ではなく、詳細に話してくださいませんか?」

「はい、では・・・ハプニカ様の今の症状を詳しく説明させていただきます」

 

ハプニカ様の頬が赤く腫れ上がってしまっている・・・

 

「精神的ショックによる病状にはいくつか段階があります、軽いほうから説明させていただきますと、

気絶してしばらく後に気を取り戻す、これはごく軽い症状で普通にびっくりした場合でも気の弱い方ですと体験します、

これがさらにもう1段階進むと、記憶障害を起こします、早い話が記憶が無くなる、といった症状です、これは、

ショックを受けた瞬間の記憶を無くす軽度と、かなり大きく記憶を無くす重度があります、これがより酷い場合は、

成人してからの記憶を全て無くす・・・つまり、幼児退行してしまうという症状が現れます、また、それとは別に、

一番幸せだった頃の自分に戻るという、言うなれば現実逃避ですね、そういう症状もあります、ここまでが回復の見込みが

50%以上ある症状です、しかし、これより重い症状となると、人間としての機能自体に支障をきたしてきます、例えば・・・」

「・・・お待ちになってください、ちょっと詳細すぎて日が暮れてしまいます、結論のみを詳細に説明してください」

「はい・・・ハプニカ様の今の症状はショックのあまり精神的に死んでしまう寸前まできています、心の重体です、

本来、頬をはたかれれば本能的に抵抗なり顔をしかめるなりするものですが、それすらしない、できないとなりますと、

感情的機能そのものが低下、もしくは死んでしまっている状態だと思われます、心が死んでしまっては、回復は不可能です」

「・・・そこまで行ってしまっているのですか?」

「わかりません、本当に心が死んでいるようには見えないのです、なぜなら・・・こちらを」

 

ハプニカ様の腕をあげると、

ぎゅっと、こぶしを力強く握ったまま・・・

 

「これがハプニカ様が何とか意識を取り戻そうとしているのか、それとももうずっとこのままで固まっているのかはわかりません、

もし心が死んでしまっているなら・・・いくら体が生きていても、ハプニカ様の脳が、自分は死んでいる、と完全に認識しきって

機能を停止してしまっているならば、手のほどこしようがありません、しかし、何とかぎりぎりふんばっているのであれば・・・・・」

「望みはあるということですね?」

「はい・・・正直、ハプニカ様の頬を叩けば『何をする』と意識を取り戻してくださると思ったのですが・・・」

「頬を叩いたことの言い訳は必要ありません、病状確認のためですから立派な医療行為です、気になさらず」

「そう言っていただけると楽になります・・・」

 

深く頭を下げるラーナン。

 

「では、ララ様、ハプニカ様と2人きりにしていただけませんでしょうか?」

「・・・回復魔法ですか?」

「いえ、その・・・おしめを用意いたしましたので・・・」

「そ、そうですわね・・・そちらもお願いしてよろしいですか?」

「そちらの世話もミル様にお願いされておりますので」

 

・・・・・そうね、では外で待ちましょう。

 

「よろしくお願いします」

「はい、すぐに終わりますから・・・」

 

ラーナンに任せてハプニカ様の部屋を出る、

ふぅ、と大きなため息が・・・でもこれからなすべき事は山ほどあるわ。

 

「ハプニカ!我が妻・ハプニカはどこだー!」

「ターレ公爵!!」

 

廊下をつかつかと・・・

 

「おおララであったな、ハプニカはここか!」

「何の御用でしょうか?衛兵はこの階へ誰も上がってこれないはずですが」

 

まだ、誰が敵で味方か判別しきってないですもの、

たとえ顔見知りの衛兵といえど、ここへ入れる訳にはいかないのに・・・

 

「私は次期国王であるぞ!?ハプニカの夫である!妻の身を案じるのは当然であろう!」

「いえ!たとえ誰であろうとハプニカ様が確実に安心できる人でなければここへは・・・あ!!」

 

まさか!?

 

ガチャッ

 

「ラーナンさん!!」

 

部屋に戻って見たそこには、

ハプニカ様の首を絞めるラーナンの姿が!!

 

「あなた!!」

「いえ、こ、これは・・・ハプニカ様が命の危険を感じて目を覚ますかどうか・・・」

「・・・言い訳はききません、あなたの目が嘘をついています」

 

ちっ、と舌打ちしたのち、

窓を開け、身を乗り出してこちらを向いた!

 

「・・・・・ハプニカを殴れたから、まあいいわ・・・ジャヴァー様!貴方の元へまいります!!」

 

・・・飛び降りた!!

 

「おい、ララ!止めなくていいのか!」

「・・・もう飛び降りてしまったのですから、止めようがありませんわ、それより・・・」

 

ハプニカ様・・・大丈夫、まだ息をしている、

首に少し紅い痕がついているけど、ハプニカ様なら大丈夫でしょう。

 

「・・・ララ、止めてくれたみたいだぞ」

「え?・・・・あっ!!」

 

外を見ると、白竜が・・・

両足にはさっき飛び降りたラーナンがしっかり掴まれている、

きっとハプニカ様の身の危険を感じて、窓の外から覗いていたのでしょう、さすがハプニカ様の白竜・・・!!

 

「きーーっ!離しなさい!ジャヴァー様の子供と一緒にあの世へ行くのよっ!!」

 

暴れてる・・・

でも白竜の両足から逃れる事は不可能でしょうね。

 

「ターレ公爵、白竜はおそらく屋上へ行くでしょう、ラーナンを取り押さえて牢に放り込んでいただけますか?」

「なぜ私が!次期国王の私に?そなたが行けば良いであろう!私はハプニカを看病せねばならぬのだ!!」

「・・・お言葉ですが、ハプニカ様の命を狙った輩をターレ公爵がひっとらえたとなれば、ハプニカ様の心証も良くなるのではないかと」

「むむ・・・おお、そうであるな!ハプニカにここでさらに恩を売るのも悪くない!よし、では妻を頼んだぞ!」

「よろしくお願い申し上げます、ハプニカ様もきっとお喜びなられるでしょう、こちらは私がターレ公爵の命でしっかりやっておきます」

 

喜び勇んで出て行くターレ公爵・・・

ほんっとうに、単純なお方・・・でも・・・

ターレ公爵が来てくれなければ、あやうくラーナンに騙される所だった・・・!!

 

「あれはあれで、ターレ公爵の才能なのかも知れませんわね・・・」

 

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