ビュン!!

 

銅鑼の音とともに放った一撃はかわされる!

 

ビュン!ビュン!ビュン!

 

しかし続いて細かく放つ突きはさすがに避けきれぬようだ!

 

バキィ!!

ガキィ!!

ボガッ!!

 

次々と鎧に穴が開き始める・・・

ん?あの動き・・・あの避け方、あの足の使い方、

あの身のこなし・・・大きな鎧を身にまとっているとはいえ、ま・・まさか!?

 

「おい!あの動きは!」

「やはり気付かれましたか、ウッホン」

「どういう事だ!今すぐ・・・」

「落ち着きなされ、あれは魔物の能力でございます」

「・・・なんだと!?」

 

スロトにいさめられる・・・

 

「説明せよ」

「あの魔物、敵の能力を学習し模写する能力がありまして・・・」

「それであのお方の動きをか」

「さようで・・・あのお方も実は奇襲をかけたのでありますが」

「そうか・・・あのお方がトドメをささぬという事は、レンに任せたという事か」

 

だから下で食事をしながら高みの見物・・・

あのお方はそのような事をするお方であったか?

1度剣を交えた以上は、責任を持って倒す・・・はず・・・だが・・・

 

目の前では魔物がレンの長槍を捕まえたようだ、

あのレンの素早い長槍を捕まえたとなると、凄い能力・・・

脇に挟み込んだまま、こう着状態が続く・・・持久戦だとレンに分が悪いか・・・?

 

いや、すでにあのお方がかなり魔物を弱らせているはずだ、

そういえば大戦中も、あのお方が魔王の体力を9割以上削ってから、

最後の最後で一番良い所をセルフがかっさらって行った・・・

今にして思えば、それはわざとなのかも知れぬ、最後はやはりリーダーのセルフが仕留めるべきだと。

ならば、こうして魔物をレンに任せたのも合点が行く、普通の雑魚敵ではない、この国にとって最後の大ボスなのだからな。

 

「ハプニカ!ハプニカーー!!」

「なんだ騒々しい、神聖なる決勝の真っ最中だぞ!」

 

警備の人垣を掻き分けてやってきたのは・・・

 

「なんだターレ公爵か、後にしろ」

「ウッホン!そうでありますぞ!ささ、お引取りを!」

 

衛兵に押し戻されるターレ公爵、

ここまで厳重な警備を突破してくるとは、

見上げた下心というか、もはや呆れ果てるわ。

 

「ぐっ・・・ハプニカーーーっっ!!」

 

強引に私の前へ倒れこむターレ公爵!

その右腕には清楚な僧侶服に身を包んだ少女が・・・

 

「む?そなたは確か・・・」

「はっ、はいっ!ゲングラード教会の1級僧侶、シャクナと申します!」

「シャクナ・・・そなたは確か・・・」

 

スロトが慌てて割って入る。

 

「やや、なりませぬぞ!ハプニカ様と会話を許されるのは特級と上級僧侶のみ!話は私めが・・」

「ハプニカ様!お話が!スロトは!トレオ様が!」

 

衛兵に飲み込まれそうなシャクナをぐいっ、と引くターレ公爵!

 

「ハプニカよ!このシャクナという僧侶が、スロトがハプニカの命を狙っていると申しておるぞ!!」

「なにぃ!?それは真か!?」

「はいっ!!トレオ様がそう申しておりました!」

「馬鹿な!トレオは魔物、魔物のはずであるぞ!」

「いえ、違います!あのお方は人間でお城の兵士・・・そのお方です!!」

 

シャクナがまっすぐ指をさした、その先は・・・私のペンダント!!

 

「まさか・・・ま・・さ・・か・・おい、スロト!!」

「ムッホンムッホンムッホン!騙されてはなりませぬぞ!!」

「・・・・・私が騙されぬわ!おい!スロトを捕らえよ!」

「ムホッ?こんな小娘の戯言なぞ信じると言うのか!このスロトめより!」

「やっとわかった・・・シャクナの目を見ればわかるわ!皆よ、捕らえよ!!」

 

衛兵がスロトに飛び掛る!

しかし何人かの衛兵はスロトを守ろうとする!

それをここぞとばかりに蹴散らすターレ公爵!!

 

カキィ

カキィン!!

ガッキィン!!!

 

「スロトを捕らえたぞハプニカ!我が妻よ!」

「・・・・・と、いうことは、今レンと闘っておるのは・・・!!」

「トレオ様!!」

 

シャクナが慌てて天覧席から跳び降りる!!

ステージの上ではトレオが・・・長槍を蹴り一気に大きく舞い、

レンに跳びかかるも反対側を向いた長槍の柄に兜がひっかかりクルッと回転する!

それをしめたと一気に長槍を反転し、前の見えぬトレオの鎧中央めがけ、一気に・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・突き刺した!!!

 

グサッッッ!!!

 

そのまま槍ごと場外に投げ出され、

丁度、私の真下の芝生に落ちる!!

 

「そこまで!優勝者・レン!!」

 

歓喜の渦に包まれる会場・・・

トレオの兜がゴトリと落ち、その中には、

紛れもなく、間違いなく、血にまみれたあのお方の顔が・・・!!

 

「・・・・・なんということだ・・・」

 

足を引きずりながらシャクナが駆け寄る。

 

「トレオさん!!」

 

シャクナの表情が真っ青になっていく・・・

そのシャクナに応えるトレオ、いや、愛しい人・・・

 

「ごめん、負けちゃった・・・」

「トレオさん!トレオさん!トレオさん!」 

 

バニーガールが様子を見るが・・・

 

「うっ・・・」

 

あまりの怪我の酷さに気絶してしまった・・・

さらにレンもようやく気付き、駆け寄ってきた・・・

 

「・・・え?嘘・・・ええ?え、えええぇぇ???」

「いやぁレンちゃん、ゆ、優勝・・・お、めで・・とう・・・強かった・よ・・・」

「ぇぇぇ・・・そんな・・・そ・・・そんな・・・ぇぇぇ・・・!?」 

 

血まみれの顔が私に気付き、見上げて語りかけてくる・・・

 

「ハプニカ様・・・ぶざまな姿をお見せした事をおわび申し上げます・・・

優勝したらプロポーズしようと思いましたが・・・ご覧のとおりです・・・ 

・・・私は・・・・・去ります・・・・・」 

 

カクン、と首が落ちる・・・

鎧の下、芝生はおびただしい血で染まっている・・・

そのまま真横に倒れ、白目をむき・・・私の愛する人は・・・・・・死んだ。

 

「・・・アハ、アハ、ハーッハッハッハッハッハ!アハハハハハ・・・」

「ハプニカ?ハプニカ?おお、我が妻よ!どうしたというのだ!?」

「アハハハハハ!見ろ!見ろあれを!アーッハッハッハッハッハ!!!」

「ガッハッハ!憎きハプニカよ!我が主君・ジャイラフ様の仇、しかと討ったぞ!ムッホン!!」

「アハハハハハハハハハ!!なんとおかしい事か!私が愛したこのお方が!死んでしまったではないか!ハーハハハハハハ!!!」

 

これほどおかしい事は無いではないか!!

魔物だと思いなぶり殺した相手が、私のこの世で一番愛する人だったとは!!

何も知らず、スロトにまんまと騙され、手を下してしまったではないか!ハハハ!!

 

「ハハハハハハハ!!私は馬鹿だ!愚か者だ!愛する人にまるで気付かぬとは!アハハハハハ!!!」

「落ち着くんだハプニカ!お前にはこの婚約者たる私がいるではないか!」

「アハハハハ!ヒャーッハッハッハッハ!ヒャハハハハハハハ!アヒャーーーハッハハハハハハハハハハハ!!!!!」

 

ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!

もうお終いだ!何もかも!私の恋も!この国の未来も!何もかも!

この世の終わりだ!私の終わりだ!もう生きてゆけぬ!アハハハハハハハハハハハハ!!!!!

 

「ハハハハハ!ハーハハハ!!ハハハハハハハハハ!!!!!ハハハ!!ハハハハハ!ハッハハハハハ!!!

ハッハッハッハッハッハッハ!!ヒャヒャヒャハハハハハハ!!!ハーーーーッハッハーーーーッ!ハハハハハ!!

アハッ!!アハアハアハハハハ!!!ハハハハハーーーッ!!ハハハヒャハハハヒャハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

ハハ・・・ハハハ・・・・・ハハハハハ・・・・・・・・・ハ・・ハハ・・・ハハハハハ・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハハ・・・・・ハ・・・ハ・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

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