「ララ!ジュビライを取り調べて参れ!」

「はい、はいっ!今すぐに」

「ルル!スロトを今すぐ連れて参れ!どうなっておるのだと!」

「わかりました、縄でくくってでも連れてきます」

「さてリリ・・・リリの感覚としては、この事態をどう思う」

「はいー、ええっとー・・・まだちょっと混乱してますー」

「そうか、困ったな・・・もうこれから決勝だ、何か手を打たねば・・・」

「あの・・・」

「どうしたベネルク!スロトからの伝言か?」

「いえその・・・予定ですとこれから夕食の準備を」

「いらぬ!食事なら後でじっくりあのお方といただく!」

 

あのお方もきっと、私のために力を尽くしてくれているに違いない!!

 

「あのー・・・」

「リリ、考えがまとまったか?」

「いえー、お食事を取られた方がー」

「なぜだ?」

「なんとなくー、物凄く食べたほうが良い予感がするのでー・・・」

 

・・・リリがここまで言うからには、

従った方が良いであろう、不本意ではあるが・・・

 

「よし、ベネルク、すぐに食べられる物を頼む、時間は無いぞ」

「かしこまりました、いますぐにお持ちいたしますわ」

「ではリリ、決勝戦だが、もしトレオが勝ち上がってきたならば・・・」

「ハプニカ様!スロト殿が・・・」

「スロトどうした!怪我をしているではないか!!」

 

ルルの肩を借りてスロトがやってきた、

わき腹に血をにじませている、どうしたというのだ・・・?

 

「ハプニカ様!トレオめが・・・フレシュを・・うぐっ!!」

「スロト!やられたのか!やはり・・・トレオか!」

「さようでございま・・・フレシュでは相手になりませぬで・・ぐっ・・・」

「もう良い!どこへも行くな!後はここで見ておれ!」

「ウッホン!ありがたき、お言葉!!」

 

うぐぐぐぐぐぐぐ・・・やはり決勝は、レンとトレオか!!

こうなったらレンに任せるしかない!

 

「スロトよ!おそらく・・・ジュビライが裏切った」

「な、なんですとーーー!?」

「驚くのも無理はない・・・我が父のコレクションの1つ、剣斬りの剣を持っておった」

「あの行方知れずになっておりました剣が!では、黒幕はジュビライで!?」

「いや・・・魔物を操れるならば、闇魔法の使い手でなければならぬ」

 

不信な魔道士を洗い出すしか無いか・・・

 

「ムッホンウッホン!その事でしたら、すでにあのお方が解決済みですぞ」

「なに!?本当か!申せ!!」

「ハハッ・・・トレオのあの鎧、あれは大戦で暗黒魔道士コーグが持ち込んだ、魔の鎧でございます」

「なに?それは初耳であるぞ」

「グホングホン・・・地下に封印しておいたのでありますが、いつのまにかなくなっておりまして・・・」

「・・・・・それを持ち出したのがジュビライという訳か」

「おそらく・・・それより問題なのが、あの鎧の中に封印されております魔物でありまして・・つつつ・・・」

 

苦しそうなスロト、

血の広がりは無さそうだが辛かろう。

 

「しかしながら封印されし魔物、その封印を開けてしまえば・・・ウッホン」

「それは鎧を脱がせるという事か?」

「ムホン、それよりもっと手っ取り早い手が・・・首をはねてしまえば・・・」

「ふむ、封印されておるということは、魔力が供給されていないという事だからな、蓋を開ければこぼれるのみ」

「さようでございます、後は胸を貫けば一撃・・・太陽がすでに沈みますゆえ、一撃でトドメをささねばなりませぬ」

 

よし、謎は全て解けた!!

 

「では後はどのようにトレオを料理するかだな」

「それには良い考えが・・・まずルールとしてトレオの武器を取り上げるのです、ウホン」

「・・・みすみす武器を渡すか?」

「それは・・・すでにトレオは危険な闘い方を繰り返しましたゆえ、無理矢理にでも」

「よし、任せる・・・しかしレンはどうする?ルールでは殺してはいけないはずだが」

「それは・・・もちろん、レン様に限り、相手を殺しても良いと・・・魔物退治ですゆえ」

「・・・・・確かにそうせねば、危険な相手であるな」

「国民もトレオの今までの卑劣な戦いぶりから、納得すると思われますぞ」

 

・・・リリがスロトを見て、怯えている・・・?

 

「リリ、どうした」

「いえー・・・ちょっと寒気がー」

「おおリリ殿、ムッホン、それではレン殿とミル様に伝えてきてはくれぬか」

「は、はいー・・・」

「ウッホン、ルル殿も・・・あのお方が、心配なのでララ殿リリ殿ルル殿でレン殿のそばについて欲しいと」

「本当に?・・・じゃあ行くけど、あのお方はどこにいるんだろう」

「それは・・・あのお方には、わたくしめがこれを・・・ムッホン」

 

何かを取り出すスロト、

1枚の紙・・・いや、チケットだ。

 

「スロト、それは何だ」

「ハハッ、あのお方とシャクナ様は、もうレン殿に任せれば安心なゆえ、じっくり決勝を見たいと」

「・・・・・招待券か、しかも食事つきのVIP席であるな」

 

招待券☆

 

「しかし油断はなりませぬぞ!万が一、レン殿が負けてしまった場合は・・・」

「その時は・・・その時にララたちか」

「ムッホン、違いますぞ、その時は優勝賞品を受け取りに来たトレオを、ハプニカ様の剣でスパッ!と」

「・・・・・私の手でか」

「民衆も憤りが溜まっておりますゆえ、そうせぬ事には解決はありませぬぞ!ムッホン!!」

 

リリとルルが出て行き、私とスロトだけになった。

 

「スロトよ・・・ではあのお方に伝えてくれぬか、何があっても私はそなたを愛している、と」

「ムホン!しっかりとお伝えしますゆえ・・・ハプニカ様、決勝は念のため、警備を一段と厳重にしておきますぞ」

「ああ、頼んだ・・・スロト、よくやってくれている、感謝するぞ」

「いえいえ・・・これも全て・・・ハプニカ様のために!では!すぐに戻りますゆえ!!」

「任せたぞ!!」

 

・・・さて、1人になった、

決勝を控え、もう下手に動かぬ方が良いであろう、

誰が敵で誰が味方かさえ判別しにくくなってきている以上は、

本当に信頼できる者以外は誰であってもここへ近づけてはならぬであろう、

スロトもそれを見越して警備を厳重にしに行ったはず・・・静かに時を待とう。

 

「・・・ララ、リリ、ルル・・・ミルよ・・・レンを頼んだぞ・・・」

 

レンの一世一代の大勝負だ、

これに勝ってこそ、真の4姉妹となるであろう、

これに勝ってこそ、あのお方も心を決めてくださるであろう、

これに勝ってこそ、我が国の未来が・・・輝かしくも新しい歴史が開けるのだ!

もし負けてしまっても、その時は私の剣で全て、けじめをつけてみせよう・・・それで、終わる。

 

「平和への最後の関門だ・・・必ず魔物を・・・退治してくれよう」

 

 

 

 

 

星空がきらめく下、

中央闘技場すべてのたいまつに火が灯った。

超満員の観衆は異様な雰囲気と興奮に包まれている。

 

「スロトよ・・・あのお方はどこの席だ?」

「はっ、ここの下の階になりますゆえ、見えないかと・・・ムホン」

「そうか、ならば仕方がないが・・・くつろいでおられるのであろうか」

「それはもう、シャクナと共に夕食をいただいている頃かと」

「・・・それにしても、あまりにも厳重だな、私のまわりは・・・」

 

衛兵がギッシリと取り囲み、暑苦しいくらいだ。

 

「ムッホン!ここまですれば、おかしなやからがここへ来る事はありませぬゆえ」

「・・・・・入ってきたな、まずはレンか」

「ララ殿たちも一緒ですな、心強いセコンドでありましょうぞ」

 

遅れてヨタヨタとトレオが・・・

あまりにも不気味な漆黒の大鎧、

そして剣・・・は普通だ、しかしそれが逆に不気味だ。

 

「いよいよであるな・・む?トレオが私を睨んで・・いる?」

「オッホン!心配ならさずとも、すでに手はずは整っておりますぞ」

 

審判がステージの中央に立った。

 

「えー皆さん静粛に!これより特別ルールを申し上げます!」

 

一気に静まる会場。

 

「準決勝・フレシュ対トレオ戦において、トレオ選手は、 

最終警告をしたにもかかわらず、度を越した闘いにより、 

フレシュ選手に重傷を負わせました!それに対し協議した結果、 

失格までは行かないものの、この戦いについてハンディを加すこととなりました!」

 

トレオの後ろから衛兵が近づく。

 

「まず武器の没収」

 

ひょい、とトレオの剣を奪う、

衛兵は慌てて逃げるがトレオは佇んだまま・・・

 

「そしてトレオ選手にかぎり『相手を殺してはならない』というルールの対象から外し、

トレオ選手の生死を問わない事といたします!これはトレオ選手の生死のみであって、 

レン様、いや、レン選手に対してトレオ選手が殺そうとする事は決して許されません!!」

 

大歓声に囲まれる闘技場、

私も思わず拍手をしてしまう。

トレオは自分の立場をわかっているのか・・・?

 

「・・・レンが来たか」

 

新しい長槍を持ってきた、

あれはまさに大戦中使っていた、

どんな物をも突き通す「つらぬきの槍」・・・

あれを使えばどのような敵も、ゴーレムや白竜さえも貫くという・・・

いくら魔の鎧といえど、レンの力であの槍を貫かれれば、魔物も息絶えるであろう。

 

ステージに上がったレンをミル、そしてララたちが激励する。

 

「レンちゃーん!勝ったらお姉様からご褒美があるよー!

「レン!この国のためにも、絶対勝たないといけませんわよー!」

「レンー!油断しちゃ駄目よー!じっくりやるのよー!」

「レン!殺していいんだからな!殺さないと勝てない相手だからな!」

「はーーーーーーーーーーい!!!!!」

 

自信に溢れたレンが明るい声で応えた、

公開処刑となると暗くなりがちだが相手が魔物なら別だ、

観客も喜んでおるし、皆の前でその力を見せる最高の舞台が整った訳だ。

 

「・・・・レン、あまりはしゃぐでないぞ・・・」

 

武器を取り上げたとはいえ、なめてかかっては痛い目にあう・・・

私は剣をぎゅっと握りつつも、ステージをじっと見つめ続ける。

しばらくしたのち、審判が時計を気にする、さあ、いよいよ・・・・・はじまりだ。

 

「あのお方と一緒に、見届けるとしよう・・・」

 

私は懐からペンダントを出し首にかける、

胸にはあのお方の顔・・・戦争中、絵の得意なミルに頼んで描かせた、

それをはめこんだ・・・このペンダントは我が母の形見、中には元は我が父の写真がはめてあった。

 

「さあ、共に闘おう・・・」

 

場内が緊張に包まれる中、

闘技場の大時計がついに、丁度7時をさした!

 

「第79回国王杯全ダルトギア闘技選手権決勝戦、レン対トレオ、はじめ!!」

 

ゴ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!!!!

 

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