放課後。
僕が帰宅の用意を終えたころ、
ルリーも丁度良いタイミングで僕を迎えに来る。
「おにいちゃん、帰ろう♪」
「ああ、帰りにどこか寄ってく?」
「おにいちゃんに行きたい所があったらだけど・・・」
ふと視界に真雪が入る、
ちらちらとこちらを伺っているようだ。
「そうだわ、おにいちゃん、たいやき買って帰ろうよー」
「たいやき?じゃあ、駅前の方だね」
「うん!いきましょ、いきましょ♪」
「何?たいやき買いに行くの?」
犬山が僕とルリーに割って入る。
「水くさいなぁ、たいやきぐらいだったら俺がおごってやるよ」
「おい、犬山、本当か?」
「ただし!瑠璃ちゃんだけな、猫ちゃんは自分で買いなよ」
「おいおい、そりゃないだろう」
「わーい、犬山先輩ごちそうさまなのですぅ」
「犬山、ひどい奴だなぁ、あれだけ親友とか言っておいて・・・」
ぐちる僕に耳打ちする犬山。
「どうせ瑠璃ちゃんにおごるつもりだったんだろ?
その分、出してやるんだから文句言うなって」
とかなんとか言って、
自分がルリーと一緒に帰りたいだけのくせに・・・
と心で思っていると、真雪がカバンを持って帰ろうとしていた。
「真雪!・・・あの、その・・・」
「!?・・・・・猫ちゃん・・・」
思わず声をかけてしまった、
どうしよう?僕も真雪も固まってしまった、
何か言わなきゃ・・・
「真雪せ〜んぱい♪」
口火を切ったのは、
やはりルリーだった。
「これから犬山先輩のおごりで、
一緒にたいやき食べに行きませんかぁ?」
「な!?瑠璃ちゃん・・・」
ちょっと驚いた犬山、
固まって動けない僕、
罪のない笑顔のルリーに目をあわせることなく、
無言のまま早足で教室を出ていった真雪。
「・・・・・逃げられちゃったですぅ」
「真雪・・・」
すこしおかしな空気が僕たちの間に流れる。
まさかルリー、またこうなるのをわかって・・・???
そんな空気を察知してか、犬山が空元気で盛り上げる。
「さ、行こう、はやくしないとたいやきが売り切れちゃうよ!」
「そうね、お兄ちゃん、はやく行こう♪」
「うん・・・」
真雪・・・
僕は、真雪とちゃんと仲直りできるのだろうか?
今日のような事を繰り返していては・・・
でも、真雪と仲直りできたら、その後はどうなるのだろうか?
そもそも、僕はどうしたいのだろうか??
僕にはルリーがいて、でも真雪を許してあげなきゃ気がすまない僕がいて・・・
許してほしいのは僕?真雪に?
わからない・・・・・
まだ自分の中で整理がつかないや。
たいやき屋への道、僕はずっとそんな事を考えていた、
目の前にはルリーが犬山と楽しそうに雑談している。
「犬山先輩、そんなことしたんですかぁ」
「なーに、ちょっと地軸が傾いただけだよ」
「もう、先輩って本当、やんちゃなんだから」
「ははは、大丈夫、両生類が半分死滅した程度の話なんだから」
・・・・・何の話だったんだ!?
・・・いや、それよりも僕の問題だ、
今、僕はルリーが好きだ、らぶらぶだ、それは確かだろう、
でも、そのずっと前は真雪が好きだった・・・それも確かだろう。
しかし、この2つの「好き」って、どういう「好き」なんだろう?
・・・・・・・好き・・・らぶらぶ・・・うーん・・・
こうして悩んでいる僕と同じように、
別の道を、悩みながら帰宅する少女がいた、
もちろん、真雪である。
「猫ちゃん・・・・・」
とぼとぼと寂しく一人、歩く。
「瑠璃ちゃん・・・あの妹さん・・・猫ちゃんの・・・
ううん、私ったら、何、妹さんに・・・
それより、昼間のあの魔法少女、何者なのかしら?
猫ちゃんと何か関係が?一体誰なのかしら・・・」
やはり昼間、中庭をずっと覗いていたようである、
ルリーの出現もしっかりと見ていたようだが、
正体についてはまだばれていないようだ。
「猫ちゃん・・・やっぱり私、瑠璃ちゃんと、
仲良くしないと・・・でも、どうしてかしら・・・
なんだか瑠璃ちゃん、わざと・・・ううん、気のせいよね、
・・・でも私、どうしても・・・はぁ、猫ちゃん・・・・・」
僕と真雪の仲は、
一歩一歩ではあるが、回復していっているように思える。
きちんと昔のように仲直りできるのは、そう遠い話ではないのかもしれない。
そうなった時、僕の気持ちははっきりしているんだろうか?
はっきり言えるのだろうか、そして、真雪の気持ちは・・・・・!?
「おにいちゃーーん、はやくー!」
つづく
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