「うう・・・シャクナさん・・・」 「・・・・・・・・・・」 口をきいてくれない・・・ 怒っているかのように無言のまま、 前よりさらにひどくなった傷口を応急処置する、 ・・・きっと何を言っていいのかわからないのだろう、 もしくは何を言ってもきかないからなのか・・・どっちにしても、 ボロボロの俺の唯一の身方である事には変わらない、とてもありがたい・・・ シャクナさんがそっと俺の兜を脱がせようとした時、 またあの不愉快にさせる顔がやってきた・・・スロトだ。 「ムッホン、おぬし、その体で見上げたものだな」 傷だらけ痣だらけの俺のからだを見下ろしながら、 スロトはまるで見下すように喋り続ける。 「さきほどの対戦相手・・・ジェフェニを取り調べたが、 何も疑わしい事はなかったぞ?まあ、あやつが暗殺など考えるはずはないが・・・」 当たり前だ、あんな弱い奴・・・ 「もうベスト8だ、残った7名は全て疑わしい者などいない、 それでも心配なら・・・・・優勝する事だな」 またそうやってたきつける・・・ 「ハプニカ様には一応、報告はしておいた、 我々は全力で守る、あとはおぬし、自分の身を心配するのだな」 自分の身・・・ 確かにこのまま棄権してしまえば、 もう苦しまなくてすむ・・・しかし、 残り7人・・・ヴェルヴィでさえ裏切ったんだ、 まさかとは思うが残り7人全員暗殺部隊とは限らない!! 「・・・・・」 無言のシャクナが目で「やめて」と訴えている、 でも俺には前に進むしか・・・優勝してハプニカ様を守ってこそ、 ついに、俺は・・・憧れのハプニカ様と結婚する事ができるのだ!! 「行こう」 準々決勝の舞台・東闘技場へ向けて立ち上がる! 「ぐあ・・・ががが・・・ぐぐぐ・・・」 もう「痛い」とか「苦しい」とか言えない、 歯を食いしばってうなるしか・・・でも行かなくては! 「うっ・・・」 くらっ、とよろめく俺を、 ちいさなシャクナさんが必死に支えてくれる、 ありがたい・・・本当に心から感謝する・・・ 「・・・・・ありがとう」 ボコボコになった頑丈な鎧を再度つけ、 走り出したいところだが早足がせいいっぱいだ、 それでも着実に闘技場に向かう・・・はぁ、はぁ・・・ 

人影少ない路地に出た、 ここを抜ければもうすぐだ・・・ とシャクナさんが急に立ち止まった、どうしたんだろう? 「きゃ、きゃあああ〜〜〜!!!」 う・・・い、いつのまにか・・・ まわりを黒づくめの男が取り囲んでいる! ひい、ふう・・・は、8人も・・・ 「だ、誰だ!!」 俺が問い掛けた瞬間、 8方向からいっせいにそいつらは飛び掛かってきた! 「シャクナ、あぶない!!」 ガキィーーーン!!! 「ぐはぁ!!」 血を吐く俺・・・ シャクナをかばい・・・ 背中に3本の剣が鎧を貫いて刺さった・・・ 「トレオさん!!」 「ふんぬ!!!」 俺は振り返ると同時に敵に斬りかかる!! 「どりゃ!おりゃ!そりゃあああああ!!!」 ・・・ 「はぁ・・・はぁ・・・勝った・・・」 「トレオさんっ!!」 膝から崩れ落ちる・・・ 剣を抜いて背中に治癒魔法をかけてもらう・・・ 傷は・・・浅かったようだが・・・さすがにこのダメージはきつい・・・ 「動かないで・・・んっ・・・」 さっきの8人・・・逃げていったが・・・ 一体・・・何者・・・・・はっ! 急がなくっちゃ 「動かないでと言ってるでしょう!」 かまわず歩く・・・ 歩くしかない・・・ 俺に出来るせいいっぱいのハプニカ様への求愛・・・ それは・・・ハプニカ様を生涯、守れる事を証明する・・・ 今はまさにそれにうってつけの舞台だ・・・あと3回勝てば・・・・・ シャクナさんも歩きながら魔法をかけてくれる・・・ やがて、東闘技場にようやくついた・・・・・ 「トレオさん、お久しぶりで・・・きゃあ!どうなされたんですか!!」 「あ、バニーさん・・・久しぶり・・・少し休ませて・・・」 「・・・・・」  ドサッ、とシャクナが突然倒れた。 「シャクナ?シャクナ?」 「きゃあ!きゃあ!どうしましょう」 「バニーさん、シャクナさんを・・・休ませてあげてください!」 医務室の方へ連れて行かれるシャクナ・・・ そういえばずっと強い回復魔法をかけ続けてもらっていた、 そのうえさっきの事件だ、疲れ果てて気絶するのも無理あるまい・・・

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