「どうか、このアバンスに残ってはもらえませんか?」 「私とともに・・・ガルデスの城で暮らそうぞ」 またそうやって結論を急がせる・・・ 「ちょっと待ってください、俺、そんなこと急に言われても・・・ とりあえずは荷物がガルデス城にあるのでとっちへ戻ります、 ・・・・・あとのことは・・・ゆっくり決めます」 その言葉に嬉しそうな顔のハプニカ様。 「それでは帰ろうか、ガルデスに」 「はい、セルフ様、それでは失礼します」 セルフ様は仕方ないな、という漢字で頬杖をつき、 去ろうとする俺に声をかける。 「いつでもあなたを迎え入れる準備はできてますから、 この国はあなたの第2の故郷だと思ってかまいませんよ」 「・・・ありがとうございます」 「それと、ひと月働いてくれたお礼を・・・」 「いえ、旅前にいただいたお金がたくさん残っていますので、それで結構です」 「そうですか?じゃあ、あとで改めてガルデス城に届させましょう」 そう話してる最中にもかかわらず、 ハプニカ様は強引に俺を連れ出すのだった。 「セルフ殿、ではな、近いうちにまた会おう」 「あ・・・セルフ様、それでは・・・わっ、わっ」 「さ、日が暮れぬうちに早く!」 あわただしく俺とハプニカは謁見室から出ていった、 セルフ様の王妃・リューム様がセルフに話し掛ける。 「ハプニカ様も必死ね、多分、もう彼はここには来れないわ」 「どうして?」 「次ぎに会う時は、2人の結婚式ね」 「えっ!?あの2人、そうだったの?」 「彼は別としてもハプニカ様はね・・・ふふふ」 「リューム、君、知っていたのか?」 「男の人は戦争中はそういうことに鈍感だから」 城の窓から外を見たセルフの目には、 逃げるように飛び去る、2人を乗せた白竜が見えた・・・・・

白竜がガルデス城を目指しびゅんびゅん飛ぶ、 太陽もそろそろ暮れようとしている・・・ いくら白竜が速いといっても往復で半日もかかってしまった、 ちょっと散歩に出るつもりだったのに、 セルフ様への報告という最後の仕事を済ませてしまい、俺は・・・フリーになった。 「今夜はそなたのために豪華なごちそうが用意されておる、 私の親衛隊、あの4姉妹が力を合わせて作るとっておきの料理だ、 おなかをすかしているであろう、すぐに戻るのでもう少し待ってくれ」 手綱で竜に気合いをつけると、 さらに白竜は加速し、日が山にかかる頃には、 ガルデスの城が見えてきた・・・夕日に照らされたガルデスシティ、綺麗だ。 ・・・あれ?あれは何だろう? ガルデス城のとなりにある、まるいの・・・あ、闘技場か。 よく見ると、少し離れた所にもいくつか・・・3、4、5、 5つの闘技場が十字に・・・いや、サイコロの「5の目」のように並んでいる、 あんなに闘技場があるのか・・・やはり竜に乗ったりして闘うのだろうか?

「ハプニカ様、闘技場が多いですね」 「ああ、城の庭に1つ闘技場がある、他にあと4つ、 東西南北に・・・その4つの闘技場では1個所につきに5つステージがある、 1度に5試合同時に戦闘が行える闘技場が4つ・・・我が国の自慢の1つだ」 「すごいですね、じゃあ4×5で20試合同時に行えますね」 「城の中央闘技場を合わせて21試合だ、それでも足りぬ時がある」 白竜が高度を下げだした、 闘技場がだんだんはっきりわかるようになる・・・ どこも何やら準備をしているようだ、あわただしく人の豆粒が動いている。 「実は我が国伝統の闘技トーナメントが復活することになってな・・・ 明日は予選、明後日はいよいよ本選が行われる、私も楽しみにしている」 「トーナメントですか、面白そうですね」 「ああ、予選は見るに足りんが本選は迫力がある、 私も明後日は中央闘技場で1日中観戦するつもりだ・・・ どうだ?よければもうしばらくここに滞在して見ていかぬか?」 「面白そうですね、やはり竜に乗っての戦闘ですか?」 「いや、純粋な剣の腕を見たくてな、竜から降りての闘いだが・・・」 闘技トーナメントか、 なんかわくわくしてきた。 「わかりました、トーナメントが終わるまでは、お邪魔させていただきます」 「そうか、嬉しいぞ・・・ではトーナメントが終わったら・・・」 「・・・終わったら?」 「その・・・できれば返事を聞かせてほしい・・・私の・・こととか・・・」 「・・・わかりました、それまでには何らかの答えを出せるように・・・考えます」

白竜はゆっくりと減速し、 ガルデス城に降り立った、 城の傭兵がずっと待っていたようだ。 「おかえりなさいませっ、女王様っ!」 「ご苦労」 「すでのご夕食の用意ができておりますっ!!」 「さ、行くぞ、今日はめでたい、宴のようなものだ」 白竜から降りると、 ハプニカ様は傭兵が手に持つ籠の中にある、 山盛りの林檎を3つばかりつかみ、白竜の頭めがけてぽいぽいと投げた。 しゅるっ、ぱくっ、ぱくっ、ぱくっ、 白竜は器用にそれを舌でキャッチすると、 おいしそうにそれを飲み込む・・・見ていてなんだか面白い。 「白竜よ、ご苦労であった・・・さ、我々も食事だ」

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