「奴隷!?」 「そうよ、この国唯一の奴隷・・この国で一番地位の低い人間よ」 「そんな!奴隷だなんて・・・」 「それぐらいになんないとみんな納得しないわ、ワタシは女王の座に目が眩んで、 この国を破滅に追いやろうとしてしまった・・その責任を取るには相応しすぎる身分ね、気に入ってるわ」   誇らしげなマリー、そんな胸を張らなくても・・・ バニーさんがスックと立ち上がって語る。   「でも、マリーさんの様々な助言がなければこの国をここまで立て直す事は不可能でした、 さすが、この国に唯一残された国族の方らしく・・的確なアドバイスをくだすって・・」 「ワタシは奴隷らしく、この国に仕えてるだけよ?国民全てがご主人様だから、そのためにやってるだけ」 「はは・・・マリーさんらしいや」   思わず笑ってしまった・・ 誇り貴き奴隷、か・・マリーさんにぴったりな償い方かも。   「私は形ばかりの国王ですが、マリーさんは形ばかりの奴隷・・ 実際はマリーさんが国政を動かしています、このように皆が納得する形で」 「すごい・・マリーさん、すごいよ」 「ま、当然のことね、でも形ばかりじゃなくて本当のの奴隷のつもりよ、ワタシは。 一番偉いご主人様から助言を求められたから応えただけ、奴隷としてね」   奴隷・・それで首輪をしているのか・・・ バニーさんが腕で合図をするとマリーさんが玉座の後ろに身を引いた。   「さあトレオ様ー、お話はこれぐらいにしてー、今日はゆっくり休んでいってくださいー」 「あ、はい・・バニーさん・・いや、その、シグリーヌ国王・・様・・」 「バニーさんでいいですってばー」   口調が昔に戻ってる・・・   「私がご案内します・・」 「あ、はい・・・では・・」   しずしずと誘導するシャクナさん、王間を出るときに一礼して・・・ それにしてもすごいことになってるな・・バニーさんの国王にマリーさんが奴隷、でも実はフィクサー・・・   「その、トレオ様・・」 「はい?シャクナさん、どうされました?」 「あの・・・ハプニカ様は・・どう・・なされたのでしょうか・・」 「う、うん、その・・・そうだ、シャクナさん、結局お城に戻ったんだ!」 「はい、こういう緊急事態ですし、シグリーヌ様がぜひ、と・・大臣の方々も、 トレオ様を守ったのはシグリーヌ様と私の2人だけだったから、国民を納得させるためにと・・お飾りかもしれませんが・・」 「そんなことないと思うよ、シャクナさんならきっと」 「いえ・・私だって途中でトレオ様を疑ってしまって・・・酷い事を・・あの時・あの時・・・」   やばい、辛気臭くなってきた・・まだ引きずっているんだろうか? いや、思い出させてしまっただけかも・・でもシャクナさんてもうちょっときつい性格だったような・・ 国政に携わるようになって、いろいろ多忙で精神的に弱くなっているのかもしれないな・・うーん。   「シャクナさん、もう終わった事だから、忘れよう」 「・・・・・こちらの部屋になります・・・」   案内された部屋は・・俺がずっと使ってた部屋だ、 はじめて来た時の、そして倒れた後、ずっとリハビリしてた、あの・・ 懐かしい反面、あの時のみんなの看病や温もりを思い出す・・胸がきゅんとなる。   「ここ・・・ですか」 「トレオ様・・ハプニカ様は、どうなされたのでしょうか」 「どうって・・・スバランの木の上に・・」 「・・・トレオ様は先程、終わった事だから忘れよう、とおっしゃいましたよね?」 「う、うん・・・」   ガチャ、と扉を閉める・・・   「終わったからこそ忘れてはいけない事があるのです・・・ この国がしてしまったトレオ様への仕打ちは絶対に忘れてはならないのです、 その苦しみは消える事はありませんが、癒す事はできます、それはトレオ様に償う事です、 トレオ様を癒す事のみで、私達はほんの少し、癒される事ができるのです・・ この国に戻ってきていただいて感謝しています、どうか、どうか私たちに、トレオ様を癒させてください、 愛するトレオ様に・・国民皆が敵だった過去を忘れさせて、国民皆が味方だという事をわからせていただきたいのです」   ・・・・・またこういう説得か。   「もう俺なんかいなくても、この国は立派にやっていけてるじゃないか」 「・・・・・そうですね、そうでした、ごめんなさい」   あ、あれ!?やけにあっさり引き下がったぞ・・・?

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