シャクナさんも真剣なまなざしで言う。
「私はその頃、丁度教会で荷造りをしていました、国を出るために・・・
するとお城から、夕方に重大発表があるとおふれが・・ハプニカ様退位の演説があると・・
それを聞いた私ははじめ喜びました、ああ、やっとトレオ様がわかってくださった、
ハプニカ様にかわって国王に・・てっきりその結婚報告だとばかり・・・」
バニーさんが玉座から立ち上がる。
「内情を知らなかった私も、これは結婚発表だとばかり・・
国民みんながそう思っていたはずです、実際、お城に集まった皆は歓喜の表情に溢れていました、
そこへハプニカ様が表れたのです、隣にはトレオ様ではなく、ミル様を連れて・・・」
窓際に立つバニーさん。
「皆よ、よく聞いてほしい!!」
低い声で、まるでハプニカ様そのもののような口調で外へ語り出す・・
「世界を救い、この国を救ったあのお方はもう、ここにはいない!!
身も心も傷つき疲れ、愛想を尽かして出ていかれてしまったのだ・・これは私の責任だ!
よって、私は愛するあの方を追ってミルとともにこの国を去る!そしてできれば、あのお方を守り続けるつもりだ!
あのお方を1人にはできぬ、すでに私の親衛隊も、私に愛想を尽かしてあの方を追って飛び出して行った・・皆も私に愛想をつかして欲しい!
私がいればまた、いつ争いがおきるかもしれぬ、だからこそ、争いの種となる私はこの国を去る!
私がいる限り、自由になったあのお方も狙われる可能性がある・・私が王でいる限り・・・
これも私が、そして父がこの国を闘いの国にしてしまった責任だ・・だからこそ、去ってきれいにしたい・・・
あとは皆で・・・決して争いの無い国を、知恵を出し合って作って欲しい・・・
それが、あのお方にこの国を許してもらう唯一の方法だと思うからだ・・・」
つーーーっと涙を流すバニーさん・・・
「ミルも・・私と同じくあのお方を愛している・・・
私達2人は・・あのお方を追いかけて・・もしできれば・・
償わせてもらい・・そして、私の愛をぶつけるつもりだ・・
一生かかっても・・いや、一生、どんな事があろうと、あのお方を愛し続ける・・
そのために・・この国を去らせてもらう・・我が侭と言われてもかまわぬ!
もう、何にも邪魔されたくない!何も恐くはない!あのお方のためならば!!」
震えるバニーさん、感極まっている・・・
涙を腕でぬぐいながらこちらを振り返る・・・
「だいたいこのような演説でした、演説というほどのものではないですが・・
こう言い残すとハプニカ様はミル様と白竜に乗り、スバラン山脈の雲の上へと消えていきました、
残された私達国民はあまりの事にパニックになってしまいました、
英雄も、さらにはこの国唯一の支柱だったハプニカ様とその妹のミル様まで去ってしまった!
・・・ようやくここで気づいたのです、国民みんなが、何をどうするべきなのか・・・!!」
シャクナさんがハンカチをバニーさんに渡すと俺の方を向く。
「国民のほとんどが目を覚まして冷静になりました、まあ、中には、
ハプニカ様は責任逃れを言って逃げた、とか、本当はトレオは死んでたんじゃないか、とか・・
しかしハプニカ様を慕っていた国民はハプニカ様の涙ながらの演説を信じて、新しい国を作ろうと、
代表者を出し合って・・これもハプニカ様の残していかれた人徳というものだと思います、
あのトーナメントの事件から日がたっていたのも皆が冷静になれた1つでしょう。そして・・・」
再び玉座に座るバニーさん。
「残った大臣と国民の代表者で話し合った結果、決して争いの起きない国造りが始まったのです、
闘いが全てと言っても過言ではない国を全て変えるにはどうすればいいか・・・それがこの現状です、
私が国王に選ばれたのも、ハニーガールが国王になれば、嫌でも国は変わるでしょう」
シャクナさんがバニーさんのとなりに立つ。
「新しい国王になる人もただ国を変えるだけじゃなく、国王に相応しいそれなりの理由が必要でした、
そこであのトーナメントを思い出した時・・どう見ても悪役としか思えなかったトレオ様を、
1度も疑うことなく最初から最後まで助けた人物がいる事に気が付きました・・それがシグリーヌ・シルヴィア様、
トーナメントについていたバニーさんです。国民も納得してくれて、英雄を救ったバニーということで、
なんだか変に盛り上がってしまって・・ハプニカ様を無くした悲しみを打ち消すためだったのでしょうか・・」
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