笑顔で微笑むララさん・・・でもその目は潤んでいる。   ジョリ、ジョリ、ジョリ・・・   髭を剃られる心地よさ・・・ ララさんの話を聞いて、胸が締め付けられた・・・ そんなに深く愛してくれるんだ、恐いぐらいに・・・ ララさんの言葉が本当なら、俺にふられる事は、まさに死を意味する・・・ はは、お、おおげさだなあ・・でも、ちっとも大袈裟に思えない・・・はは・・・       「ご主人様ー、楽器がありましたぁー」   ガタゴトゴト・・・   「うわ!おっきいハープ・・・でも埃まみれだ、リリさんも・・・」 「げほ、ごほ・・・何本か弦が切れてますので修理しますねー」 「大変だったでしょう、こんなに重い物を・・・それよりお風呂に入らないと」 「いえー、今すぐにー・・少しでも早くご主人様にこの音色をー」 「そこまでしなくても・・俺は逃げたりしないから」 「本当ですかー?本当に、本当に逃げませんかー?」 「う・・・とにかく汚れちゃってるから、リリさん・・・」 「私が一番得意なのは楽器ですー、ご主人様へ私の気持ちを伝える一番の方法なんですー、 少しでも早くご主人様へ私の気持ちを伝えたくてー・・ですからー、すぐに修理しますー」   弦を補修じはじめるリリさん、埃まみれのまま・・・あれ?手に包帯が?   「リリさん、手、どうしたの?ケガしてない?」 「これはー・・ゆうべ木を削って笛を作ってたのですがー、失敗してー・・・ でもまた作り直してますからー、笛の音色ももうすぐお聞かせできますー」   そんなにしてまで俺のために・・・   「無理しないでよリリさん、俺は急いでないからさ」 「私が急ぎたいのですー、ご主人様に1音でも多く私の奏でる音色をー・・・ これが私の武器ですからー、でもご主人様が聞きたくないというのでしたらー・・ でもそうなると私は何もできなくなってしまいますー、困ってしまいますー、くすん」 「そんな!絶対聞くよ!絶対聞くからさ、ララさんがお風呂入ったあとに・・」 「じゃぁー、一緒に入っていただけますかー?」 「え?」 「そうでなければ楽器の補修をー・・・」 「わ、わかったよ、その、一緒に入るからさ・・」 「まあ!嬉しいですー!では早速行きましょー!」 「う、うん・・・な、なんか強引・・・」 「お風呂出たら特製ハーブティー入れますねー」       「かっこよかったなー、ブルジュでの闘い、他の奴とは違うと思ったよ」 「そんなに誉めないでよルルちゃん、昔の話を・・・」 「ううん、まだまだ誉め足りないよ!そういえばセルフ様とアナタが2人で・・・」   窓辺でぼーっとしている俺にずっと過去の闘いを誉めるルルちゃん。   「それとライムランドへの救出隊の時もかっこよかったよね」 「え?その時、俺はピック達とグレイス半島の方へ・・」 「あ!ごめんごめん、そうそう、そうだった、大変だったでしょ?」   うーん、実はそんなに憶えてないな・・・   「ルルちゃん、誉めてくれるのは嬉しいんだけど・・あまり思い出したくないんだ」 「そう?でも自信持ってよ、あれだけの事を成し遂げたんだからさ、 力が無くなっちゃっても英雄の歴史は無くならないんだから、もっと誉められるべきだよ」   どうやらルルちゃんは俺に自信を取り戻させたいみたいだ。   「ねえアナタ、強くなくなったから強いって言われたくないって言ってたでしょ? でも、強くなくなっても強いよ、心は強さを取り戻せるからさ、そうすれば、 私たちの愛も、もっと素直に受けてもらえると思うんだ、だからアナタの心を癒し続けるよ、一生」 「・・・ありがとう」 「それにしてもまた言っちゃうけど、あのトーナメントは本当に強かったよ、 正体隠さずに闘ってたら、見てた女は全員惚れてたよ、でもそうなるとライバル増えちゃう」 「・・・決勝、勝ちたかった・・・」 「勝ちだよ!アナタの勝ち。あんなルールないよ!本当にひどい・・・ 私はアナタの優勝って決めたから、嫌だろうけど私の中では絶対優勝だから」 「トーナメントか・・・」 「・・決勝の後のこと深く思い出しちゃ駄目だよ、アナタが優勝して終わった、 引き替えに力を無くしちゃったけど・・でも英雄の中の英雄になったんだから、 何でも望みが叶うぐらいのさ。何か望みはない?地上には戻れるように頑張るけど」   望み・・・うーん・・・   「望みって言っても、トーナメントの時の望みは・・うーん」 「ハプニカ様ならもうアナタのものだよ、もちろん私も」 「なっ!・・・そ、そうそう、武闘トーナメント・・・見たかったなあ」 「顔赤くしてる!で、トーナメント見たかったの?」 「う、うん、ああいう華やかなトーナメント、じっくり1回戦からちゃんと観客として、 見れてたら本当に楽しかっただろうなーって・・暗殺部隊さえいなければ」 「トーナメントを見たい、ねぇ・・・」 「もちろんあの時は自分が参加したかったんだけど、今となっては見てみたい」 「・・・・・ちょっと待っててね、ここにいてね」   部屋から出て行くルルちゃん、 待っててって?どうするんだろう、 昔のトーナメントの伝記でも読んでくれるのだろうか?

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