結局、白竜は戻ってはきたものの、 もうハプニカ様の言う事は聞いてくれなかった、 そして予想通り、4姉妹の言う事も聞かなかった・・・ 毎日ハプニカ様は唇が切れるほど指笛で呼んだり、無理矢理乗ろうとしたり、 4姉妹も気遣って何度もトライしたがやはり駄目で・・・ ミルちゃんが1から調教している小白竜が調教しきるのを待った方が早いかもしれない、 と思ったが大人の白竜になって地上まで降りられるほど成長するのはあと10年かかるとか・・・   とにかく、4姉妹が加わっての楽園の日々はまだ続く事になった。     「旦那様、もう少しじっとしていてくださいね」 「うん、ララさんありがとう・・・」 「・・・・・袖の長さはこれぐらいですわね」   ララさんは俺の朝の髭剃り係になったようだ、 さらに今日は俺の服を新しく作りたいと、採寸してくれている・・・   「私が服を編んでいるのを見たら、ハプニカ様もきっと必死になって編むでしょね」 「そ、そうかな・・・あまり想像できないけど」 「ふふ、ハプニカ様はこういうの不得意ですけどね、私が来れてよかったですわ」 「でも・・・その、ハプニカ様よりもどちらが上手か、とかは考えたくないな・・・」 「わかりますわ、私だってハプニカ様のそばにずっと御仕えしておりましたから・・・」   足の方も計ってくれる・・・   「さあ終わりましたわ、では髭を剃らせていただきます、横に・・はい、私の膝枕に頭を・・・」 「うん・・・ぶわっ!」 「熱いですか?蒸しタオル・・・大丈夫のようですわね・・ ・・・少し聞いてくださいませ、私、旦那様に言い尽くせないほどの感謝をしています、 その無数の感謝の中の1つに・・・私に旦那様を愛するチャンスを与えてくだすった事があります、 それもハプニカ様と対等に・・・私は物心ついた頃からダルトギア皇族に尽くすよう教えられ、 9歳でハプニカ様の元へ付くようになりました、ハプニカ様にはその時から可愛がっていただいて、 まるで妹のように・・・本当の妹であるミル様とは歳が10も離れておりますから、実際はミル様よりも、 私の方がハプニカ様の妹のようなものでした、そうしてずっとハプニカ様を尊敬し、お守りし、追いかけ・・・ ハプニカ様のために一生捧げる事を私は誇りに思い、それは当然だと思っていました、そして戦争が始まり、 私は妹たちとハプニカ様の側へ・・・私はハプニカ様の護衛とともに、もう1つの大きな役割を背負いました、 ハプニカ様を命懸けで守り続けるのは当然ながら、それでもハプニカ様が倒れてしまう事もありえます、 その時こそ、ハプニカ様のそばに一番長くいて、ハプニカ様の遺志・武術を一番受け継いでいる私が、 ハプニカ様の変わりになって闘いを続ける・・・ミル様は魔道師ですからハプニカ様の変わりはできません、 ですから私は第2のハプニカ様となる運命、そういう人生・・でもこれはハプニカ様に近づけても、決して 超える事はできないのです、ハプニカ様に学び、ハプニカ様が完璧であり、ハプニカ様に仕えているから・・・ しかしそんな私にも、ついにハプニカ様と対等に闘える時が来ました、それが旦那様、貴方なのです、 貴方の心を巡っての恋の闘い・・・ハプニカ様と私、どちらが旦那様を手に入れる事ができるのか、 どちらがより愛していただけるのか・・・対等とはいっても、ハプニカ様の方が99%有利でしょう、 私がハプニカ様に勝てる確率は1%ぐらい・・でもハプニカ様と争そっているんですもの、それだけで、 私は嬉しいのです、それと同時に今までのどんな戦争より、一番真剣に、必死に闘えますわ、不思議です、 あれだけ死の恐怖と闘った戦争よりの、旦那様を奪われる方が恐いんですもの、この恋の闘いの方が、 戦争での生死を懸けた闘いより、もっと生死を懸けられる・・・それが嬉しいのです、ハプニカ様も、 当然、命を懸けて旦那様の心を狙っています、今までも隙あらばずっと狙っていたはずですわ、 そして私も・・・ハプニカ様は恋愛が苦手と申しましてもあの頭脳と学習能力、順応性、美貌、心、 全てを兼ねそろえております、時間があればあるほど恋愛にも強く、やがてすぐに無敵の強さを、 手に入れるでしょう、だからこそ私も負けないよいうに・・・こうしで旦那様を愛していると、 ハプニカ様への嫉妬心は沸いて、それが私を、ハプニカ様と闘っている実感として感じさせてくれます、 あのハプニカ様、一生追いつけないと思っていたハプニカ様と今、正しく対等に闘っている・・・ そのチャンスをくださって旦那様に、心から感謝し、必ず旦那様に愛していただくつもりです、 ハプニカ様よりも・・・ですから私の残りの人生は、旦那様に一生捧げるつもりでいます、一生・・・ どうか、どうか私の愛を受け取ってください、そしてできれば、ハプニカ様とずっと、競い合っていきたい・・ 旦那様の元で・・・ハプニカ様と一緒に・・・・・永遠に・・・・・・・」   蒸しタオルをめくり俺を抱き起こし唇を重ねる・・・ やさしい、ゆっくりとした舌の動き・・・ 心が癒されるような、そんな、ほわほわするキス・・・   「・・・さ、髭を剃りますわね」

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