こうして楽園での時間は過ぎていった、
毎日ハプニカ様やミルちゃん手製の食事を食べ、
ミルちゃんと一緒に白竜の子供と遊んだり木の上を探検したり、
ハプニカ様とたくさん話をして、また俺の話もたくさん聞いてもらって・・・
昼は3人で大きいハンモックで昼寝、夜は部屋いっぱいのベットで愛にまみれたり・・・
そして約束の1週間はすぐにやってきてしまった。
「ハプニカ様、おはようございます・・」
「ああ、おはよう・・どれ、すっかり濡れてしまったシーツを洗うとするか」
「その・・あの・・・」
「何だ?まだ腰が痛むか?ゆうべは激しかったからな」
「いえ・・・えっと・・・・・」
どうしよう・・・
このまま、約束は無かった事にして、
ずっとここに住んでしまうのがいいかもしれない・・・
でも・・・
で、でも・・・・・
「・・・・・まだ眠いのならば上のハンモックまで行くか?私が抱いて運ぼうぞ」
「そうじゃなくて・・・」
「おうそうか、おなかが空いておるのだな、食卓の朝食を運んでまいろうか」
「・・・やっぱり・・・地上へ・・・戻ります・・・」
「地上・・・戻る・・・のか?」
・・・ハプニカ様の顔が見れない。
「その・・・最初の約束通り・・地上に・・帰りたいと思います・・・」
「・・・・・訳を・・聞かせてもらえぬか・・・」
「はい・・・うまく言えませんが・・これ以上、ハプニカ様に甘えると・・自分が駄目になってしまうような気が・・」
「・・・・・駄目になるというのは・・どういうことだ・・・」
「その・・・えっと・・俺・・あれ?何だか・・よく・・わからない・・でも・・・」
心の整理がつかず混乱してる・・・
でも、俺の最初の信念が本能のようになって、
今のこの状態を拒んでいるんだと思う・・うまく伝えられないけど。
「とにかく・・約束は・・約束ですから・・・」
「そんなに急ぐ事なのか?」
「・・多分、急いだ方が・・いい気がします・・・」
直感的にそんな気がする・・・
どうもこのスバランの木から出る空気が、
俺を、何というか、不自然に癒しすぎているような気が・・・
「・・・・・そなたがそう言うのなら仕方あるまい・・外へ出よう」
「はい・・・」
ハプニカ様は素直に外へ出る・・・
いいのか?これで・・本当にいいのだろうか?
まだ、まだ俺は迷ってる・・何かを・・でも、出ていきたがってる・・よな、俺・・・
「・・・・・困った」
「どうしたん・・ですか?」
「白竜がおらぬ」
「え!?」
「私の白竜の姿が・・見当たらぬのだ」
白竜が、いない!?
「そ、そんな・・?でも白竜は、ここにいっぱい・・・」
「ちゃんと調教した私の白竜でなければ、言う事はきいてくれぬのだ」
「そんな・・・」
「おそらく夕方には戻ってくるであろう、それまでしばらく待ってはもらえぬか」
「わ、わかりました・・・・・」
何か、少しほっとしたような、それでいて軽い胸騒ぎがするような・・・!?
「おにぃちゃん、白竜と遊ぼうよー」
「う、うん・・」
白竜の子供とじゃれあうミルちゃん、
俺もあやして遊ぶ・・・楽しいんだけれども・・・
うーん、やはりおかしい、俺の意志が・・定まらないというか揺れ動きすぎているというか・・・
不自然なようで、それでいて・・・混乱している・・・頭が・・・その、なんというか、
うう、ハプニカ様を疑おうとしても、その、思考回路がなぜか回らない・・・!?
「おにぃちゃん、どうしたの?具合悪いのぉ?」
「い、いや、大丈夫だよ、ちょっと休めば・・・」
「じゃあ、おうちに入ろぉ♪」
中の巨大ベットで横になる俺、
もちろん胸の中にはミルちゃんが甘えている・・・
窓の外を見ると・・ハプニカ様が剣の・・いや、木の棒を素振りしている・・・
一生懸命に・・本気の素振りだ・・汗を撒き散らしながら・・・
・・・なぜ?ここにはもう敵はいないはずなのに・・あんなに必死に・・・?
「お姉様、がんばってるぅ」
「その、ミルちゃん・・ハプニカ様、どうして・・・」
「うふふ、お姉様ねぇ、おにぃちゃんのために頑張ってるんだよぉ」
「え?その・・・俺を、守るため?」
「守るってぇ、ここ、絶対安全だよぉ」
「じゃ、じゃあ、どうして・・?」
「ふふふ・・・教えてあげるぅ、お姉様ねぇ・・・」
「うん?」
「ダイエットしてるのぉ」
ダイエット!?
「ここの食事、おいしいでしょ?だからつい食べ過ぎちゃうからぁ・・」
「そ、そうなんだ・・」
「おにぃちゃん、お姉様を抱いてる時に、重い、って言わなかったぁ?」
「う・・・言ったかも?」
「・・・お姉様には内緒だよぉ、聞いちゃだめだよぉ、ダイエットのこともぉ」
「わ、わかったよ・・確かに聞けないな・・・」
「ミルも痩せた方がいーい?」
「そんなことないよ、ミルちゃんはじゅうぶん可愛いから」
「うれしぃ・・・」
1時間ほどしてハプニカ様は館に戻ってきた、
汗をぬぐい、髪を整えながら俺の元へ・・
「ハプニカ様、おかえりなさい・・その、お疲れでしょう・・」
「ん?見ておったのか?」
「はい、素敵でした・・・」
「白竜には1週間も乗らなかったからの、再び乗るには体の感覚を研ぎ澄まさなければならぬ」
「そうですか、俺のために・・・」
「ふ、風呂にでも入ってくる・・もしよければ、そなたも一緒にどうだ?」
「は、はい・・・じゃあ俺も汗を流した方がいいですね、運動しないと・・俺も素振りを」
「いや、そなたはもうじゅうぶん、毎晩運動をしておるではないか・・それにこれからも・・ふふ」
「は、ははははは・・・」
ハプニカ様、もうすぐお別れなのに笑顔を絶やさない・・・
今のこの瞬間を心から楽しんでいるのか、それとも必死で我慢しているのか・・・
今になって、あれだけ疑っていたハプニカ様の気持ちが、素直に信じられずにはいられない、
俺は・・・俺はハプニカ様のために・・ここに・・・残る・・べきか?
でも、でも最後に1つ何かひっかかっている・・何か・・でもそれが、わからない・・・!!
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めくる |