結局、その日は白竜は戻ってこなかった、 次の日も、その次の日も・・ハプニカ様も心配そうだ、 俺はというと白竜が来ない事をまんざらでもないと思ってしまっている、 あれだけここにいてはいけないと思っていたのが嘘のように・・このままいつまでも、 白竜が来なくて、ハプニカ様とミルちゃんと、3人で暮らすのもいいんじゃないかと・・・ 「あれからもう1ヶ月ですね」 「そうだな、白竜・・とても心配だ」 「その・・白竜以外にここから去る方法はないのでしょうか?」 「ないな・・ここは天然の城壁だからな、木から外へは空からしか出れぬ」 「そうですか・・でも、調教してない白竜にうまく乗って、パラシュートか何か作って淵から飛び降りれば・・」 「そうはいかぬ、普通、白竜は人間が大好きだからな、もし木から飛び降りればすぐさま飛んで拾ってここまで戻してくれる」 「賢いですね」 「ああ、だから、もし間違って木から落ちても安全だ、24時間いつ落ちても察知してくれるぞ」 遠くではミルちゃんがあいかわらず白竜の子供と遊んでいる・・・ 「ミルちゃんも俺以外に良い遊び相手がいますね」 「・・実は遊んでいると同時に調教もしておるのだ」 「調教・・ですか」 「ああ、ああやって遊んで・・あと1年もすればミルもあの白竜に乗ってこの木の上ぐらいなら自由に飛べるようになるだろう」 「ハプニカ様、あの・・」 「私も新しい白竜を調教しはじめた方が良いかもしれぬな、そなたのために」 ビュウッ、と風が吹いた、 ここに来てはじめての突風・・ 何か懐かしい空気を切る音が聞こえてくる、これは・・・ 「こ、これは、ハプニカ様、これは・・」 「む・・白竜が帰ってきたようだな・・」 ああ、帰ってくる・・ 帰ってきてしまう、白竜が・・・ やがて姿が見えて来た・・でも何かおかしいぞ? よろよろしてる・・背中に誰か・・・乗っている? しかも、1人じゃない・・2人、3人・・よ、4人も!? 「旦那様〜!」 「ご主人様〜!」 「アナタ〜〜!」 「ダーリ〜〜ン!」 あの声は・・・4姉妹!! ふらふらしながらも近づいてくる・・・ よ、4人がかりで操縦している!なんて器用な・・・ 白竜も迷惑そうだ・・でもなんとかこっちへやってきて・・・ ・・・・・降りてきて・・着地した・・・4人飛び降りで俺の方へ走ってきて・・・うわっ!! 「やっとお会いできましたわっ、旦那様っ!!」 「夢にまで見たお姿ですー、感激ですー、ご主人様ー!!」 「はぁ、はぁ、大変だったけど、諦めなかったからね、アナタ!!」 「わぁい、嬉しいよぉ、ダーリンですぅー!!」 ガバッ、ガバッ、ガバッ、ガバッ、と俺に抱き着く4姉妹、 勢いあまって後ろに倒れてしまうが、それでも覆い被さってくる・・・ ちゃんと倒れる時に彼女たちの腕が俺の後頭部や背中に回されて守ってくれている、嬉しい・・・ 「そなたたち、何をしておるのだ!」 ハプニカ様もあわててやってきた、 再会を喜ぶ4姉妹とは対照的に、怒ってるみたいだ・・・ 「そなたたちが白竜を捕まえておったのだな?」 「いえ、白竜の方から私達のところへいらっしゃったのです」 「そうですー、それでー、スバランの木へ登ろうとー」 「別に白竜に傷つけたり、怒らせるようなことはしてないけど・・」 「1ヶ月かけてよぉやくなんとか操れるようになりましたぁ」 バサバサバサ、と白竜が自分の巣へ戻っていく・・家族も嬉しそうだ。 「そなたたち、こんな所までつきまとって、迷惑を考えぬのか?」 「あら?迷惑なのはハプニカ様ではありませんこと?」 「ご主人様ー、私達、迷惑なのでしょうかー?」 「えっと、ハプニカ様とはもう師従関係にはないから遠慮しなくていいんだよね?」 「一生お世話させていただくお約束をしましたー、ね、ダーリン♪」 う・・そうだ、俺は1ヶ月前、4姉妹の手に落ちたんだった・・・ そしてもう溺れきってしまった次の朝、ハプニカ様にここへ・・・ 「・・・そなた、本当であるか?」 悲しそうに俺に問い掛けるハプニカ様、 俺を守るように前に出て言い返す4姉妹。 「もう私達は旦那様と愛し合っているのですわ」 「そうですー、ご主人様もー、嬉しそうでしたー」 「惚れた男がいなくなったから見つけて取り戻すだけの話だよ」 「ハプニカ様も一緒にダーリンを愛してもいいですよぉ」 そ、そうだ、とりあえず落ち着こう・・・俺は口を挟む。 「とにかく、せっかくまた会えたんだから、ひとまず落ち着きましょう!ハプニカ様も!」 うう・・・焦ってしまう俺・・・ 4姉妹VSハプニカ様の三角関係とでもいおうか・・・ とにかく落ち着いて考えをまとめる時間が欲しい・・・ 「そなたがそう言うのならば・・仕方あるまい」 「さ、旦那様、別荘へ入りましょう・・ここ来るの、3度目ですわ」 「そうですー、ハプニカ様に連れてきてもらった事があったのでー、なんとか来れましたー」 「ちょっと最近体が硬くなったんじゃないか?マッサージマッサージ!」 「あ!ミル様だぁ!わぁい、お久しぶりですぅ!!」 「レンちゃん!上がってきたのぉ?嬉しいなぁ♪」 ミルちゃんとレンちゃんも再会を喜んでいる、 この2人、大の仲良しだったもんな・・でも・・・ 俺のせいで、この2人も俺の奪い合いをするのかな・・それは嫌だな・・・

7人での豪勢な食事を終え、 4姉妹は揃ってお風呂に行った・・・ 後片付けをするミルちゃんを除き、 俺はハプニカ様と2人っきりだ・・・ なぜか沈黙・・・しかし先に口を開いたのはハプニカ様だった。 「明日・・白竜も戻ってきた事もあるし、朝1番に下へ降りようか」 「下に、ですか・・・」 「ああ、約束が1ヶ月もオーバーしてしまったが、こういう事情だったので仕方あるまい・・・」 「そうですか・・・明日・・ですか・・・」 「嫌ならばいいのだぞ?出発を遅らせても、また、ここに住みたいというのならば・・・」 俺の中でまた、正体不明の危険信号が鳴り響いた。 「いえ、明日の朝、ここを去ります!」 「そうか・・・わかった」 言い終えた後、何ともいえない後味が残ったが、これでいい、と自分をなだめた。

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