門への長い廊下を歩く・・・ 夜明け直前ということもあり、静かだ・・・ コツ、コツと俺が歩く足音が響く・・・あれ? コツコツコツコツコツ・・・ 後ろからいくつもの軽い足音が近づいてくる・・・ 振り向くと、そこには・・・4人の人影が、彼女たちだ・・・! 「お待ちください、私も、お供させていただきます」 「私も行きますー、一緒に行きますー、絶対行きますー」 「嫌だって言っても無理矢理ついていくからな、もう決めたんだ」 「お守りしますぅ、街は危険でいっぱいですぅ、任せてくださぁい」 4人ともえらく地味な服装だ。 「ちょっと、君たちはハプニカ様を守る仕事があるじゃないか!」 「確かに私たちの家系はずっとこの国に仕える血を保ってまいりましたが・・・」 「これからはー、貴方様を守る家系になりますー」 「身の回りの事は全部任せてくれよな、仕事も私たちでするからね」 「どこへ行きますぅ?アバンスですかぁ?どこでもいいですぅ」 うーん、どうしよう・・・ 「じゃあハプニカ様は誰が守るんだ?」 「ハプニカ様には国民がついてますわ、私ども姉妹の役割は終わりにしてまいりました」 「ちゃんとミル様にお伝えしてきましたー、ハプニカ様にもお手紙をー」 「私たちの人生は私たちできめるよ、それに、じゃあ貴方は誰が守るんだ?」 「ハプニカ様よりもぉ、守らなきゃいけない人ができたですぅ」 ・・・困ったなぁ。 「君たち、まだ俺の言った事がわからないの?」 「わかっております、これは私1個人としての判断であり、素直な今の気持ちです」 「ここであらためて言いますー、好きですー、愛していますー」 「もうハプニカ様とは関係ないよ、単なる女だから、好きになった男を追いかけるだけだから」 「お姉様たちには負けないのぉ、いっちばん好きになってもらうんだからぁ」 なんというか、思いつめたような表情で言い寄ってくる、 しかし目は輝いているような、顔をほんのり染めているような・・・ 剣を装備しているものの、単なる街娘にしか見えない格好だ、荷物もそんな感じ。 ・・・確かにこの4人と一緒に旅立てば心強い、どこへ行っても安全だろうし、 また、身の回りの世話から何から全て面倒観てくれるだろう、でも・・・でも・・・!! 「お断りするよ、俺は1人で旅立つ、君たちはここに残ってほしい、 やっぱり俺に同情してるとしか思えない、俺がここを出て行く理由の1つに、 みんなを苦しめたくないんだ、俺がいると国民は、あの事件を思い出してしまう・・・ 俺がどう思っていたとしても、俺がいる限り、ずっと罪の意識にさいまなれるだろう、 あの大きい像だってそうだよ・・・あれがある限り、みんな苦しい思いをするんじゃないかな・・・ だから、1日でも早く忘れてもらうために、俺はこの国を出るんだ、それが、 この事が起こってしまった原因である俺の出来る事なんだ、俺自身も忘れたいから・・・ それはこの城にも言える事なんだ、もちろん君たちにも・・・君たちを、もうこれ以上苦しめたくない、 俺がいれば、または、俺の側にいれば、君たちをずっと苦しめる事になるし、俺も心苦しい、だから・・・」 「それは大変良くわかります」 ララさんが言葉をさえぎる。 「別に私たち4人が代表して償おうというのではありません、もっと単純な事ですわ、 貴方様を、心の中から本当に、深く深く愛しているのです、この気持ちに偽りはありません、 そして、その愛さえあれば、お互いに愛し合えば、苦しみなどすぐに忘れてしまいますでしょう」 続いて残りの3人も順番に口を開く。 「もう何を言っても信じていただけないならー、あとはついていくしかー・・・ いつかわかっていただけたらー、必ず幸せになれますー、私もー、貴方もー」 「辛いことに目を背けてばかりいたら、また同じ事の繰り返しになっちゃうよ、 辛いんだったら癒させてよ、癒してみせるからさ、それで私たちも幸せになるんだから」 「私はぁ、貴方のことぉ考えるとぉ、胸がきゅんきゅんきゅんってなっちゃうんですぅ、 でも一緒に寝るとぉ、とっても胸が気持ち良くなるのぉ、これって愛ですぅ、絶対ぃ・・・」 もう夜が明けはじめた、行こう。 「やっぱり俺は、君たちを愛していないから・・・さよなら」 「それは承知しておりますわ、ですから好きになっていただくだけです」 「私たちでー、いえー、私がー、お守りしますからー、ずっとー・・・」 「1度や2度ふられたからって、あきらめる女じゃないから、私は」 「さよならしませぇん、ぜったいにぃ、さよならじゃないですぅ」 朝日が差し込む門に向かい歩く、 4姉妹を振り切って、まっすぐと・・・ ミルちゃんやシャクナさんにもお別れの挨拶をすればよかったかな・・・ いや、別れがつらくなるだけだ、伝言なんかも残さない方がいいだろう、 さらばガルデス城、さようなら、ハプニカ様、さようなら、みんな・・・ありがとう・・・・・

「さ、寒い・・・」 城から出て一応、フードを被る、 この国を出るまではちゃんと顔を隠しておいた方が良いだろう・・・ 冬が目前に迫った朝の道を歩く・・・街の中に俺の像がそびえ立っている、闘技場前だ・・ 懐かしい、バニーさんは元気だろうか、いろいろと思い出してしまう、マリーに調教された事まで・・ うっ、思い出すと軽く勃起してしまいそうだ、さっさと行こう・・・バニーさん、さようなら・・・・・

町外れに出た、ここからふもとへ通じる道を下れば国を出られる・・・ 最後にもう一度、お城をよく見ておこう、と振り返る、おおきな城だ・・・ ・・・って、あれ?俺から少し離れて4人の人影が・・・距離を置いて歩いてきてる!? 目が合った!気まずそうな4人・・・やっぱりついてきちゃってたんだ、あの4姉妹・・・ 俺はつかつかと近寄り、目をそらす4人に言い放つ。 「ついてこないでもらいたいんですけど」 「あら、何の事でしょうか?」 「たまたまですー、行く方向が同じなだけですー」 「私たち、もう帰る所がないからさ、どうしようかなーって歩いてただけだよ」 「んっとぉ、またお会いできて嬉しいですぅ、偶然ですねぇ」 あきれた。 「俺を自由にしてくれよ」 「あら、どうぞ自由になさってください、どうぞどうぞ」 「私たちもー、自由にしてますからー、どうぞー」 「そうだよ、やりたいようにやってるだけだからさ、もちろん私たちがどうするのも自由なんだし」 「もしよかったらぁ、一緒にお茶でも飲みませんかぁ?」 む、無視するしかないか・・・ チャンスを見て巻こう、そうするしかない・・・ しつかい彼女たちから逃げるように俺は道を下った・・・ 上空を飛び交う天馬・・・ 美しくも力強い天馬だ・・・ ドラゴンも混じっている、圧倒的な力でねじ伏せる、 力強い飛竜・・・今の俺には近づいてきただけで恐いや・・・ 俺にはイルカや鯱と触れ合う方が、やっぱりいい・・・そうだな、海へ行こう。

太陽が沈みかけている、 まだふもとの街まで半分もあるのに・・・ 上りは元気なときに歩いて2日かかったが、 下りもこの体のせいで歩いて2日かかるって事か、 どうしよう・・・そうだ、確かもう少し歩いた所に・・・あった、宿だ! 上りのときも利用させてもらった山腹の宿だ、 下りも利用する事になるとは思ってもみなかった、 ここに泊まろう・・・今後のことも、もっとよく考えなくちゃ。

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