「・・・・・ねぇ」 「何かな?」 「王様になってくれますよねえ?」 俺は返事に困った、 レンちゃんに負けた以上、 この国を去らなければならない・・・ それは俺の中での鉄壁の法律であって崩す気はない、 でもそれをそのまま伝えたらレンちゃん傷つくかも・・・ 「なってくれますよねぇ?」 「・・・・・・・・・・」 「だって、優勝したらハプニカ様と結婚するってぇ・・・」 「・・・・・え?優勝してないよ」 「優勝ですぅ、ほらぁ」 レンちゃんの視線を見ると、 部屋の隅に豪華なカップが飾ってある、 よく見ると・・・「優勝」の文字の下に俺の名前が・・・!? 「待って!俺、レンちゃんに負けたよね?」 「ううん、私の負けですう」 「どうして?」 「殺そうとしたからぁ・・・」 「でも特別ルールでそれは許されたはずだよ?」 「だって、でも、でもぉ・・・とにかく私の負けですう」 「・・・じゃあ、あの戦いは何だったんだよ!?」 俺はなんだか腹が立ってきた。 「だってだってぇ、ハプニカ様のぉ、みんなのためにぃ、トレオって名前でぇ・・・」 「それと試合、勝敗は関係ないだろ!?」 「この国をぉ、命懸けで助けたんですものぉ、優勝は当然ですぅ」 「だから!そんなの意味ないじゃないか!!」 「こ、恐いぃ・・・」 いけない、レンちゃんがまた泣きそうだ。 「ご、ごめん・・・でもレンちゃんが勝ったんだからさ、 強かったよレンちゃん、とっても、あれならハプニカ様も安心だよ、 だからこれからもその力でハプニカ様を守ってあげてくれよな」 「・・・・・負けだもん、私の・・・負けだもん」 「これだけは譲れないんだ・・・そこの優勝カップはレンちゃんのものだからね」 「いやぁ・・・いやぁ・・・いやあああああああーーーーー!!!」 「レ、レンちゃん!?」 泣きながら部屋から出ていくレンちゃん・・・ でも、でもこれだけは曲げちゃいけないんだ、 俺は負けた、だから・・・だから俺はこの国を去る!!

「な、何があったのー?」 今度はミルちゃんが入ってきた。 「ごめん、レンちゃんを泣かせちゃった・・・」 「仕方ないなぁ、レンちゃんはぁ」 「どうしよう・・・」 「放っておいていいです、あとでお姉様に叱ってもらうから」 「叱るだなんて・・・」 「だって、おにいちゃんを放って逃げたんだもの、せっかくおにいちゃんをもう絶対、1人にさせないって決めたのにぃ」 「1人にさせない、って・・・?」 「おにいちゃん1人で戦うしかなかったから、あんなことになっちゃったでしょ?だからぁ」 「でも、俺1人だったからスロトの正体を暴けたのかも」 「そんなー、とにかくもう、おにいちゃんは絶対1人っきりになっちゃ駄目なの!」 俺のベットに寄り添うミルちゃん。 「おにいちゃん・・・おにいちゃんから何て呼ぼうかなー・・・ 旦那様?国王様?・・・お兄様って呼びたいなあ・・・でも王妃になるんだしー・・・ ねー、おにいちゃんは私が第二王妃になったら何て呼んで欲しい?」 「・・・その話、聞いたけど・・・俺に拒否権はないの?」 「ええ!?」 とまどうミルちゃん。 「・・・・・俺の意志はまだ何も決めてないよ、 ハプニカ様との、ここへ来て最初のときも言ったよね?」 「だってー、だってぇー・・・」 「・・・同情や貸し借りだけで結婚するのはまっぴらだよ」 重くなる空気・・・ 間を置いて、あわてて立ち上がるミルちゃん。 「そうだ!おにいちゃんに治癒魔法かけにきたの、するね」 ポワッと光が俺を包む・・・ 少し楽になった気がしたが、 俺のからだはあいかわらず動かせられないままだ。 「・・・私はおにいちゃんと結婚したい・・・」 「突然そんな事言われても信じられないよ」 「お姉様の妹だよー、好みだって同じでもおかしくないでしょー?」 「なおさら信じられないよ、ハプニカ様だって」 「・・・・・本当なのにぃ・・・」

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