びっくりして思わず声を漏らした、
引き抜いた本から本が崩れて、
びっちり詰まった本の中へ入っていく空洞が現われたのだ、
内部はまるで洞窟の通路のようだ・・・これは・・・
僕は覚悟を決めて中に入る、念のため中から本を積み直して入口を隠して。
中は真っ暗だ、ライトに明かりを灯す、
まさに洞窟探検といった感じだ・・・全て本でできている洞窟・・・
僕はその迷路をさ迷いながら、どんどん突き進む、
さらに下の階へ降りる階段まで本でうまっている・・・
でもちゃんと人が通れる穴が掘ってあるということは、きっとこの先に・・・
最初は立って進めるぐらいだった穴も、
どんどん進むうちに小さくなって、這って通り抜けるようになる、
本当にこの先に館長とやらがいるのだろうか?
でも道がある以上、進むしかない・・・と思っていると、
広い空洞に行き着いた、ライトを回すも誰もいない、行き止まりのようだ。
「うーん、何もない・・・」
そこは高さ2mぐらい、広さもそれほどない空洞、
人がいた形跡もない、まさにただの空洞だ。
「・・・引き返そう」
そう思って振り向いたとき、本に足を取られた。
「うおっと!本がすべる・・・気を付けないと」
入ってきた横穴に戻ろうとするが、
足場の本が横滑りしてなかなか進めない。
「あれ?え?これは・・・」
僕はようやく気付いた、
この空洞はすり鉢場になっていて、
ゆっくりと、しかしどんどん中央にすべり降りている。
「こ、これは・・・本の蟻地獄!」
しかし気付いた時にはすでに遅く、
僕はどんどん本の渦の中央に吸い込まれていく、
もがけばもがくほど、本の蟻地獄の中へ・・・
「た、た、たすけ・・・うわっ・・・」
両足がずぶずぶと本の沼につかり、
やがて腰、腹と吸い込まれていく、
そして顔だけの状態になり、ついに・・・
「わ、わ、わあああああああああああああああ!!!!!!!!」
ズボッと本の底無し沼に吸い込まれてしまったのだった・・・
・・・・・・・・・・・・・
どんどんどんどん落ちていく・・・
ああ、僕はここで死ぬんだ・・・と観念しかけたとき、
スボッと本の底無し沼から抜けた!
ズドーン!
「あいたたたたた・・・」
腰から着地した僕、
ずっと夢中で握り締めていたライトをかざすと、
また空洞に辿り着いたようだ、落ちてきた真上は本で塞がっている。
「痛っ・・・ここは・・・」
ライトをさらにかざす、空洞の出口は・・・・・・・あった!
でも体がぎりぎり入るかどうか・・・しかも穴は下に向っている・・・
だが道は他には見当たらない、行くしかない・・・
僕はモグラのように地中を、いや本中を進む、
本の角が体に当たって痛いが・・・行くしかない。
うーん・・・僕は何をしているんだろう?
そもそも戻れるのか?よくよく考えてきたら、
こんな所に館長がいるのか・・・いても戻れなければ意味はない・・・
僕はうんざりするほどの時間、穴を進んだ。
穴が行き止まりにつけばまだ引き返せるのだが、穴はどんどんつながる、
そうして突き進んで進んで進んで進んだ先に・・・・・・・・・・
「あ、明かりだ!」
僕はその明かりに向ってラストスパートをかける、
あそこへ行けばなんとかなる、あそこへ・・・
スボッ!
どさどさどさ・・・
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
またまた空洞に出た、
出てきた穴から本が崩れる、
中は明かりが灯されて、様子がわかる。
今度は空洞といっても膝で立てば頭がついてしまうような高さだし、
横幅も両手を延ばせばついてしまうぐらいだ・・・
ぱらっ、ぱらっ・・・
奥の方から本をめくる音がする、
灯かりのある方だ・・・僕はそーっと近づいてみる、そこには・・・・・
ぱらっ、ぱらっ、ぱらっ・・・ランプに照らされた埃まみれの少女が一人・・・
一心不乱に本を読みふけっている、くせっ毛の、丸メガネをかけた小さく可愛らしい少女・・・
「だ、誰?」
その姿相応の高く可愛い声が響く、
びっくりした様子で僕の方を見る少女・・・
10歳ぐらいだろうか?顔も埃にまみれているが、可愛い。
「あ、ごめん、別に驚かせるつもりはなかったんだ、
その、館長を探していて・・・そしたらここについちゃって・・・」
少女はちらりとランプのそばの懐中時計に目をやった。
「あれ?えっと・・・あ、この時計、止まってるのね・・・」
「その・・・館長さんって、見なかった?知ってる?館長さんって」
「知ってるもなにも・・・私よ、シューム・エリス、このバンデルン図書館の館長だけど」
え、えーーーーーっ?
という驚きを内心に押し込めた、が・・・
「信じてないでしょう、ま、いいけどね、こう見えても私、15歳のはずよ」
15歳・・・見た目は10歳・・・声は8歳・・・
やっぱり信じられない・・・でも信じられないからといって、どうしよう。
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