「よくあることなのよ、うちの館長ったら、 地下にこもると1ヶ月は出てこなくって・・・ 別に本当は行方不明ってほどのことじゃないんだけど、 上の方、ちょっと急用ができたらしくって、館長を呼んできてほしいんですって、 こんなの自分たちの部隊ですればいいのにねえ・・・まあ人海戦術なんでしょうけど」

なるほど、館長探し・・・ しかも地下倉庫っていうのがなんだかそそる・・・ きっとそれはそれは珍しい本がいっぱい・・・

「じゃあ、とりあえずこれをやってみます!」「はい、これでいいんだね」

僕は紹介状をもらい、署名にサインをした。

「集合場所は地下10階A−937だね、ジーマさん、案内してあげてくれる?」 「はい!まあ、もうこんな時間!もうすぐ集合時間だわ、急ぎましょう」

ジーマさんにせかされながら、僕は就職案内所を後にした。

「間に合ったみたいね」

地下10階の大広場にたくさんの人が集合している、 さまざまな人たちが・・・だいたい2千人ぐらいだろうか? もういちいち建物の大きさに驚いていられない、もはやここは1つの国なんだから。

「じゃあ私はここまで、頑張ってね」 「はい、何から何まですみません」 「慣れたら本格的に就職先を探してね、ではまたね」

ジーマさんはウインクをすると去っていた、 近いうちにまた会えるといいな、これだけ広い館内だけど・・・ そうこうしているうちに、 広場中央の台にちょび髭の偉そうなおやじが立った、 丁度集合時間がきたようだ。

「ウオッホン、私は当図書館の上級警備員、グガナンであーる、 本日集まっていただいたのは他でもない、我が図書館の館長の捜索であーる」

・・・変なおやじだ。

「今から2週間前、我が図書館の名誉ある館長さまがであーる、 地下へ調べ物へ行くと言って出掛けてしまってからであーる、 まったく連絡がないのであーる、そこでであーる、 ここに来てもらった者共にであーる、地下倉庫の中に入ってであーる・・・」

うーん、ますます変なおやじだし、話しが長い、であーる。

「地下倉庫は地下50階からであーるが、迷子になりやすいであーる、 困ったらとにかく上へ上へ登るようにすればなんとかなるであーる、 構造上そうなっているはずであーる、館長発見者先着1名には100万ゴールドであーる、 それではこれから館長の写真を配るであーる、前から順番に受け取るであーる・・・」

先着1名に100万ゴールド・・・狙ってみる価値はあるな、 こうしちゃいられない!早い者勝ちと聞いたら即行動だ、 館長の写真をもらいに並ぶ時間すらもったいない、早速地下50階へ行こう! 僕はさっさと広場を後にして下りのエレベーターに乗った、 なんだか楽しくなってきた、宝捜しみたいだ。

地下50階に到着、頑丈な門に大きく赤く「書籍倉庫・立入禁止」と書かれている、 まるで地獄の門とでもいおうか、ずいぶん物々しい。 僕は門の前にいる警備員に名前を告げ、確認してもらい入れてもらった、 中はとにかく広い、「わっ」と声をあげるとこだまする・・・ 倉庫というわりには結構きれいに整備されており、ちゃんと照明もついている、 なんだ、それほど大したことじゃない・・・と思って歩きながら見渡す、 本棚がずらーーーっと並んでいる、本だってちゃんとジャンル別、あいうえお順になっている、 なんだ、倉庫といってもこんなものか・・・さて、館長を探そう。

しかし注意して見ても誰もいない、 この階にはいないのか、と思って地下への大きい階段を下ろうとしたときは、 他のみんなもすでにやってきて、迷わず地下へ降りていった、 そういえばそうだ、こんな階で見つかるようならこんなに人を雇う訳がない、 僕も人波にのって地下へと降りていくことにした。

地下60階ぐらいから倉庫内も整理がおおざっぱになってきている、 本棚もちゃんと並んではいなくなってきた、順番もばらばら。

地下80階ぐらいだと本棚なんてなく、 ただ広いフロアに本がいくつも山積みになっている。

地下100階を超えるとその本の数も膨大になり、照明も暗く、 本でできた巨大迷路のようになっていて、探しがいもでてきた。

うーん、こりゃあ人海戦術が必要なはずだ、 1つのフロアがこの図書館の敷地面積分の広さがあるうえに、 これだけ本の山が溢れかえっていては・・・

地下120階でフロア全体は本によって足の踏み場はなくなり、 地下140階でフロア全体は本のゲレンデのようになり、 地下160階でフロア全体は本のプールのようになっている、 地下へ行けば行くほど本の数は増えていき、 地下180階では本と天井の隙間を這うのがせいいっぱいで、 地下200階にしてついに・・・フロア全体が本で埋まった。

こうなると本を掘り進むしかないが、 さすがにこれより先に館長はいまい、とみんな引き返し、 50階〜200階までのフロアを探している。 それにしても、このへんの本ってどんな本なんだろう? と手にすると・・・読めない・・・当たり前か。 僕は200階への入口のびっちり詰まった本をさらにいくつか引き抜く、 ぱらぱらとめくりながらさらに本を引き抜くと・・・

どさっ、どさどさどさ・・・

「えっ?」

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