「もし私どもに依頼なされたとしても、
調べるのに最上級検索士50人で20年はかかりますし、
料金も多分、この世の中にあるお金の半分以上を集めていただかないと・・・」
「うわー、そんなにかかるんですか」
「こちらも命懸けですから、先日も最強無敵の力を手に入れる本を探していて、
間違った記述の本を出してしまい仔猫に変身してしまった方とか・・・」
なるほど、願う本がなんでもあるからといって、
そう簡単に願いは叶うわけではない、
やはりそれ相応の労力が必要となるのだ。
「どうなされます?不老不死を得る勉強の入門書でもお読みになりますか?」
「いえ、そこから勉強して25000年も探してはいられないので」
「ちょっと読むだけでも楽しいですよ」「それはわかってますが・・・うーん・・・」
「はい?どうなさいますか?調べないのでしたら、この図書館の歴史資料館でも廻ってみますか?」
どうしよう、
あまりにも何でも本がありすぎて、
どこからどう手をつけていいやら・・・
ふと横を見ると、ジーマさんと同じ腕章をした女性が、
同じように新しく来た人に説明をしている、
あの女性も綺麗だなあ、うーん、案内員かあ、
ここで働くのも悪くない気がするなあ。
「あのう、ジーマさんはこの図書館で働いてるんですか?」
「はあ、そうですが・・・それがどうかいたしましたか」
「その、僕も働いてみたい、って言ったら働けるんでしょうか?」
「まあ嬉しい!就労希望なんですね?この図書館は万年労働者不足なんですよ」
「えっ、そうなんですか?」
「これだけ大きいと利用者に対して図書館の係員が追いつかなくて・・・
では、ご案内しますのでついてきてくださいね」
ジーマさんは楽しそうに僕を連れて行く、
確かにこれだけ巨大な図書館、働く人数も超巨大なはずだ、
せっかく辿り着いた最終目的地、ここで働けるにこしたことはない。
「こちらで〜す、さ、お入りください」
妙に高いテンションでジーマさんが案内してくれたのが、
「館内就職案内所」と看板が掲げられた立派な部屋だ、
中には受け付けカウンターが十数席・・・すでに何人かの人が話し合っている。
「すいません、こちらの方、就労希望者です」
「あらまあ、ありがと、あなたは?」
「はい、2級総合中央案内士、587601番、ローラ・ジーマです」
「えっと、5・・・8・・・7・・・」
ジーマさんは僕の前で就職案内所の年配女性と話してる間も、
とても嬉しそうにしている・・・そんなに僕がここで働くことが嬉しいのかな・・・
僕もなんだか嬉しくなってくるよ・・・
「はいジーマさんご苦労様、就職誘致料の1000ゴールドよ」
「ありがとうございます!」
な、なるほどね・・・そりゃあ嬉しいはずだ、
でも、それだけ労働者不足なんだなあ。
「はい、半分あげるわ、だって私、何にも勧誘してないから」
「いいんですか?」
「もちろんよ、逆に500ゴールドも貰っちゃって悪いぐらい」
「ど、どうも・・・」
「で、就職はどうするの?最後まで案内してあげるわ」
僕はジーマさんに促されて席についた、
カウンターごしにさっきの年配の女性が座る。
「はい、ではどういった仕事をしたいのでしょうか?」
「あのー、できれば楽な仕事が・・・」
「楽な仕事もいろいろありますが」
「・・・うーん」
「お給料もボランティア的なものから本格的なのまで・・・
もちろん労力と給料は比例することをお忘れなく」
そう言いながら分厚い就労先リストを渡された、
ぱらぱらとめくるとさまざまな仕事がある、
本を調べる仕事から翻訳係、本運搬の肉体労働、閲覧室の清掃、
食堂のコック、お土産売り場の店員、ドラゴンの世話、闘技場の審判・・・そんなのまであるのか・・・
宿屋・・・理髪店・・・私設警察官・・・本当に何でもあるんだな・・・もう立派な1つの国だ。
あとは・・・呪術士・・ってなんだ?考え込んでいる僕の後ろから、
ジーマさんが顔を覗かせる。
「それは、本に一番大敵な火事に備えて本が燃えない魔法をかけたり、
盗まれないように館内から持ち出せなくする魔法を本にかける仕事よ」
「じゃあ僕には無理だ」「ねえ、あなた得意な仕事とかないの?」
「得意っていっても・・珍しい本の売買で生計たててきたけど」
「古本屋?それもいっぱいあるけど・・・とりあえずは1日で終わる簡単なのからはどうかしら?」
ジーマさんは後ろから手を伸ばし、ぱらぱらとページをめくる。
「このへんが1日就労のページね」
「いっぱいある・・・うーん、僕の得意なこと・・・あとは小犬や仔猫を探すのがうまいけど・・・」
正面から声が掛かる。
「じゃあ、これはどうかしら?」
僕らと同じように就労資料をめくって探してくれていた
目の前の年配の係員が声をあげた。
「712ページの新規覧、人探し、難易度E、一番簡単なやつ」
僕もそのページをめくる、
確かに人探しだ、詳細を読むと・・・
「2週間前から地下倉庫で行方不明の当図書館館長の捜索、
発見した者は100万ゴールド、捜索に参加すれば5000ゴールド」
人探し・・・館長って?
後ろからジーマがつぶやくように話す。
「地下倉庫ねえ、あそこ広いのよねえ・・・でも参加するだけで5000っていいわね」
「館長失踪って・・・大変なことじゃあ」
目の前の係員があきれたように話す。
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