「薩川君、紹介しよう、我が男子水泳部の新入部員だ」

誇らしげに僕を紹介するキャプテン、まじまじと僕の全身を見る薩川さん、僕は綺麗だなーと思いながら自然と少し緊張気味になり挨拶をする。

「はじめまして・・・」

その後どう続けていいか言葉につまった、彼女の抜群な容姿に見とれて金縛りのように口が動かない。

「ふぅん、珍しいですわね、この時期に新入部員なんて、あなた実績はあるのかしら?」「いえ、ほとんど・・・ないです・・・」

よく見ると薩川さんの大きなバストの先端に水着ごしで2つのポッチが見える、それが1度気になってしまうと、恥ずかしくてまともに薩川さんの方を見られず、 薩川さんの質問にも目を逸らしながら口少なく答えた。

「薩川君、聞いて驚かないでくれよ、100mのタイムが53秒出たんだ!すごいだろう、彼、いきなりなんと53秒で泳いだんだ!まだ1年生なのに!」

興奮を押さえ切れない様子のキャプテンと対照的に、落ち着いた様子で淡々と話す薩川さん。

「それはまた随分と早く時計を止めたことですわね、わざとタイムを速く伝えてメンタル的に上達させる方法かもしれませんが、それを私たちに自慢するのはどうかと・・・」

僕の後ろから他の男子水泳部員が怒鳴る。

「嘘じゃないさ!タイムは正確に押した、早く押したりなんかしてない!」「信じたくないのはわかるけど、あきらめな!」

すると女子水泳部員らも応戦する。

「何よ!今まで全然まともなタイム出せなかったくせに」「急にそんなタイム言われても信じられる訳ないわよねー」

僕は控えめぎみにキャプテンに言う。

「あのー、もう一度、泳ぎましょうか?」「その必要はありませんことよ」

薩川さんのその声に静まるプール。余裕の表情で話を続ける薩川さん・・・

「どっちにしろ、明日の対抗戦で全てはっきりしますわ、そこで本当に正確なタイムで勝負しましょう」「・・・え!?対抗戦って、明日なんですか?」

キャプテンの方を見ると、嬉しそうな表情で僕に語り掛ける。

「ああ、今回も僕が出る予定だったが、全て君に任せた!なあに、さっきの調子で泳いでくれれば楽勝さ」「まあ、せいぜい明日までに猛特訓することですわね、おほほほほ・・・」

そう言い残すと薩川さんは踵を返し、女子部員を引き連れて自分たちのプールサイドへと帰っていった。

「なあに、余裕だよ、君のあの泳ぎは本物さ」

そんなキャプテンの声よりも、僕は薩川さんの後ろ姿に見とれていた、美人だ・・・かわいい・・・惚れてしまいそうだ・・・ いや、あんな女性が恋人になってくれたら、どれだけ幸せだろうか・・・しかし、彼女とは明日、真剣勝負をするんだ、そんな事を考えてる場合じゃない!

「キャプテン、もう少し泳がせてください!」「よし、じゃあ1つのコースを君専用にあげるから頑張ってくれたまえ!」「はい!!」

僕は一生懸命泳いだ、はじめて僕が必要とされている、水泳で日本一になって陸上部員たちを見返してやりたいんだ、 そしてあの女子水泳部キャプテン、薩川かつみ・・・この試合で勝てば、彼女も僕のことを認めてくれるだろう、そしてひょっとしたら、僕の恋人に・・・!

などと考えながら練習をしているうちに、男子部員に割り当てられていた1時間が終了した、プールから上がるよう、女子部員にせかされる。結局、僕のタイムは何度計測しても53秒前後だった、 これでも明日のためにセーブしていたつもりなんだけど・・・

「お疲れ!明日は頼むよ」

更衣室でキャプテンが僕の背をポンとたたく、気が付くとみんなもう帰った様子で僕とキャプテンしかいない。

「さてと、片づけをするか・・・」「キャプテンが片づけるんですか?」「ああ、部員が少ないから、みんな順番で片づけ当番をするんだ」 「そんな・・・僕がやります!」「え?い、いいのかい?」「はい、当然ですよ・・・僕が一番新人なんですし」

ますます陸上部とは大違いだ、運動部は縦社会が厳しいはずなのに・・・僕はなおさらこの水泳部のために頑張ろうと誓う。

「じゃあ・・・悪いけどお願いできるかな?実は今日、これからデートで・・・」「そうなんですか?羨ましいなぁ」「いやあ、我侭で困っちゃうんだよ、はっはっは」 「後は任せておいてください!」「ああ頼むよ、鍵はこれだから、持ってていいよ、合鍵持ってるし・・・じゃあ」

そう言い残してキャプテンはいそいそと帰っていった。僕は黙々と男子更衣室の掃除と片づけをする・・・

・・・そろそろこんなものでいいかな?そう思った背後に人の気配がした。

「ちょっと失礼、そこの新入部員さん」

更衣室の入口に立っていたのは、女子水泳部キャプテン・薩川かつみだった。

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