「はぁ、はぁ、はぁ・・・」 

「部長、こっちです!」

「文子ちゃん・・・道、わかるの?」 

 

生い茂る森の中を進む・・・ 

すっかり僕のからだがなまってしまっていたのか、 

いつのまにか文子ちゃんが僕の前に立って進む・・・

僕は裸足・・・文子ちゃんはスニーカー・・・ちゃんと用意していたのだろうか・・・ 

とにかく僕は文子ちゃんの先導にしたがって進む・・・進む・・・進んでいくと・・・・・ 

 

「あ、あれは確か・・・」 

「部長、あそこです、あそこに隠れましょう!」 

 

それは古い小さなお寺・・・ 

今ではすっかり使われなくなった荒れ寺だ、 

中に入ると・・・障子も倒れ、壁に穴も空いて、とても住める場所では・・・ 

 

「部長、こっちに・・・」 

 

文子ちゃんの方を見ると、 

重ねてある畳の下になにかある・・・ 

それをずらすと・・・地下への階段が・・・・・ 

 

「この下が安全です」 

「文子ちゃん、知ってたの?なぜ・・・」 

「早く!先輩たちが来ちゃいます!」 

 

僕は素直にその地下へと入る、 

文子ちゃんも後からその畳で蓋をして・・・ 

ここのお寺、去年の合宿で肝試しに使った場所だ、 

まさか地下があったなんて・・・でも1年の文子ちゃんがなぜ知ってるんだろ? 

と考えているうちに地下の部屋についた・・・地上への天窓もちゃんとある涼しい部屋・・・

 

「部長、ここなら大丈夫です」 

「本当だ、ペットボトルに水も入ってる・・・文子ちゃんが準備してくれたの?」 

「はい、近くの湧き水から・・・食べ物もこの中に」 

「その黒い大きなトランクは、文子ちゃんの・・・ここまで持ってくるの大変だっただろ?」 

「下ろすだけだったので簡単でした、でも上に持っていくのが大変ですけど・・・」 

 

文子ちゃん、ここまでして僕を・・・ 

 

「・・・ありがとう、あのまま2年のおもちゃになる所だったよ」 

「・・・・・部長、疲れたでしょ?休んでください」 

「うん・・・あっ、足が・・・」 

「大丈夫ですか?・・・切れてる・・・裸足だったから・・・消毒しますね」 

「うん・・・さすが文子ちゃんだよ・・・将来は看護婦さん?女医かなあ」 

 

ずれたメガネを直しながらトランクを開ける・・・ 

たくさんの医療器具や薬品が入ってる・・・ 

その中に食べ物もまじってるけど・・・・・ 

 

「部長、横になってください」 

「あ、うん・・・はい」 

「ちょっとしみますよ・・・」 

「いたた・・・ふぅ・・・でも・・・」 

「・・・?」 

「ありがとう・・・すごい久しぶりに・・・くすぐられてないから、すがすがしいよ」 

「部長、それが正常なんですよ」 

「うん・・・安心しちゃったら・・・喉がかわいちゃった」 

「はい、お水です」 

「んぐ・・・んぐ・・・ぷはぁ、くすぐられずに飲めるって、こんなに楽なんだ!」 

 

天窓の明かりで光る、微笑む文子ちゃんの顔・・・ 

でも、こんな事をして文子ちゃんは大丈夫なのだろうか・・・ 

他の部員たちに・・・ひどい目にあわされないといいけど・・・ 

 

「どうしたんですか部長?」 

「いや、文子ちゃんってこんなに話せる人だったんだなあって、いつもあまり会話できなかったから」 

「・・・私、友達いないから・・・でも、本読むのは好きだから、入部したんです・・・」 

 

少し暗い表情になる文子ちゃん、 

よけいなこと言っちゃったかな・・・ 

 

「ふわぁ、落ち着いたら眠くなってきちゃった・・・」

「あ、毛布あります」 

「そんな用意まで・・・本当にありがとう、感謝の言葉しか出ないよ」 

「いえ・・・」 

「くすぐられずに寝るなんて本当に久しぶりだ・・・今日はぐっすり眠れるぞ!・・・ふわぁ」 

「おやすみなさい・・・部長・・・」 

「おやすみぃ・・・・くぅ・・・・・」 

 

この時、僕は「助け出された」と思っていた、 

しかし実際は「より深い悪夢」に引きずり込まれたことを、 

すぐに知らされることになったのだった・・・・・ 

 

 

 

夢を見た。 

そこは地獄・・・ 

たくさんの少女がよってたかって僕をくすぐる地獄・・・ 

しかし天から1本の糸が降りてきた、それにつかまる僕・・・ 

登った先にいたのは・・・文子ちゃんだった・・・安心した・・・所で目が覚めた。 

 

暗い地下室・・・ 

天窓からは薄い光が射している・・・ 

感覚からして朝だろう・・・ぐっすり眠った・・・ 

起きよう・・・とした瞬間、両手両足が動かない!? 

よーく目をこらして見ると、僕は大の字で地下室の4隅の柱に両手両足首をロープで結ばれている! 

部屋の真ん中で身動き取れない僕・・・一体どうなっているんだ? 

そうだ、文子ちゃんは・・・一体文子ちゃんはどこに? 

 

「部長・・・起きましたか?」 

「文子ちゃん?」 

 

僕の頭の上から声がする・・・ 

暗闇に目が慣れると、文子ちゃんが立っているのがわかる・・・ 

 

「これは一体、何をするんだ?」 

「部長のためです・・・こうしないと・・・」 

「え?」 

 

文子ちゃんはしゃがんで僕の顔に近づく。 

 

「部長・・・今、どんな感じですか?」 

「どんなって・・・その、身動きとれなくって・・・」 

「そうじゃなくって・・・よく自分の体を落ち着いて感じてみてください」 

 

? 

落ち着いてって・・・ 

僕は無言で深呼吸した・・・ 

・・・・・なんだか、体がムズムズする・・・ 

何だろう・・・この感覚・・こ・これは・・・・・?? 

 

「部長・・・もうすぐはっきりわかると思いますけど・・・」 

「??」 

「そろそろ禁断症状が現われます」 

「ええ?」 

「くすぐりの快感を受け続けた禁断症状で・・・部長、狂っちゃいます」 

 

そ、そんな、禁断症状って・・・ 

麻薬?麻薬みたいなものだったのか?くすぐりって・・・ 

 

「部長はくすぐられすぎました、普通の人の一生分・・・それ以上・・・ 

もう部長の体はくすぐられすぎた事によって、快感のバランスが目茶苦茶になってるんです、 

ずっとくすぐられて、くすぐりが快感と認識し、それで脳内麻薬が出っ放しになってしまって・・・ 

だから、すっかりくすぐられるのが日常になった後に、突然くすぐられなくなったら・・・ 

ものすごい禁断症状が出るんです、本当の麻薬ぐらいの・・・・・」 

 

僕はごくりと唾を飲んだ。 

 

「でも、それを乗り切れば普通のからだに戻れます、 

幸い、先輩はまだ取り返しのつくぎりぎりの期間だから、 

後遺症も残らないでしょうし・・・苦しいでしょうけど我慢してくださいね」 

 

そういう事か・・・ 

まさに僕は「くすぐり」という麻薬の薬漬けにされていたのか、 

じゃあ、あのままあと1週間くすぐられ続けたら・・・・・!? 

 

「先輩、喉かわいてませんか?」 

「え?あ・・・うん、もらうよ」 

「はい、ゆっくりそそぎますね・・・」 

 

ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・・・うっ・・・ 

そ、そそぎすぎ・・・だ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・んぷっ・・・・・ 

 

「あ!ごめんなさい」 

「はぁ、はぁ・・・い、いいよ・・・拭いて」 

「はい・・・部長・・・その・・・頑張って耐えてくださいね」 

「大丈夫だよ、文子ちゃんがいてくれるから」 

「・・・・・部長」 

 

顔を赤くする文子ちゃん、 

可愛い・・・メガネのレンズが光った・・・ 

文子ちゃんって、こんなにいい子だったんだ・・・・・ 

 

「部長、これから部長には、どんなに小さい快感でも一切、与えられませんから、つらくても辛抱してください」 

「・・・わかったよ、うん」 

「もし、快感を感じると・・・また脳内麻薬が刺激されて、辛くなりますから・・・」 

「文子ちゃんは・・・大丈夫な・の・・・ふわぁ・・・もうちょっと寝よう・・・」 

「私は、平気です・・・部長、おやすみなさい・・・」 

「・・・・・ZZZZZ・・・」

「部長・・・部長、大好きです・・・・・」 

 

僕は再び、眠りに落ちた・・・・・ 

 

 

 

夢の続きを見た。 

糸を登り切って文子ちゃんの所へ来た僕・・・ 

文子ちゃんの胸に抱かれて安心しきった僕・・・ 

しかし突然、文子ちゃんの背中から4本の手が現われ、 

合計6本の腕で僕を死ぬほどくすぐりだす! 

気がつくとそこは巨大な蜘蛛の巣・・・そこに捕らえられた僕! 

身動き取れないまま死ぬほどくすぐられ続ける・・・という所で目が覚めた。 

 

暗い地下室・・・四股を縛られたままの僕・・・ 

背中は毛布がひいてあるので痛くはないが・・・く、く、 

苦しい!全身を見えない蜘蛛が這い回っているように苦しい! 

 

「うっ・・・うーー、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 

「部長!しっかりしてください!部長!」 

「ああっ!うあああああっ!ぁぁぁぁぁっっっ!!」 

 

僕は今まで経験したことのない全身の苦しみに叫び声をあげる! 

首を激しく左右に振り乱す僕・・・苦しい!体中が、皮膚が・・・苦しい! 

なんと言えばいいのだろうか、この感覚・・・皮膚が痛いというよりも、かゆさともくすぐったさとも違う・・・

これは・・・これは・・・体が・・・くすぐったさを求めている!? 

特にくすぐりに敏感だった脇の下や背筋、足の裏が非常に苦しい・・・きっとそうだ!これが、禁断症状・・・!! 

 

「うあっ、うぁぁぁぁぁーーーーー!!!」 

「部長、我慢してください!これを・・・」 

 

タオルで僕の口を猿轡する文子ちゃん・・・ 

 

「!!んーーー!んーーーーー!んーーーーー!!」 

「今は歯を食いしばって耐えてください、しばらくしたらおさまります」 

「んっ!んーーー!!んーーーーーーーーーー!!!」 

 

縛られた両手両足のロープをギシギシと軋ませながら苦悶する僕、 

それをじっと見下ろす文子ちゃん・・・表情はよくわからないが、きっと心配してくれているのだろう、 

耐えなければ・・・これを耐え切れなければ、僕はもう普通のからだに戻れないんだ!!! 

 

「んーーー!んーーーーー!!」 

 

 

 

・・・・・ 

苦しみだしてから何十分、 

いや、何時間たったのだろうか・・・ 

ようやく僕のからだを落ち着きを取り戻し、 

禁断症状の苦痛から解放されたのだった・・・・・ 

 

「ふーーー、ふーーー、ふーーーーー・・・」 

「部長、口のタオル、取りますね」 

「・・・・・はぁっ・・・ありがとう・・・文子ちゃん・・・」 

「恐かったです、部長・・・それに・・・見てられなかった」 

「うん・・・でもタオルを食いしばったおかげでなんとかなったよ・・・本当にありがとう」 

 

深呼吸する・・・自分の今の状態がよくわかる・・・ 

両手足、両足首が痛い・・・暴れたせいでロープが食い込んだんだろう・・・ 

それに、ひどくおなかがすいた・・・そういえばここに逃げ込んでから食べ物をとってない・・・ 

 

「部長、おにぎりとお水です、口を開けてください」 

「丁度ぺこぺこだったんだよ、いただくよ・・・」 

「お疲れでしょうから・・・はい、おにぎりから・・・」 

「んぐっ・・・おいしい・・・もぐもぐっ・・・文子ちゃんが作ったの?」 

「はい、嬉しいです、おいしく食べていただいて・・・」 

 

文子ちゃん・・・ 

僕はあまりにも親切すぎる文子ちゃんに、 

心を奪われそうになる・・・こんなにいいこだったなんて・・・・・ 

 

「お水です、落ち着いて飲んでくださいね」 

「むぐ・・・ごく・・・ごく・・・ごく・・・ごく・・・ごく・・・・・」 

「お水は無限にありますから・・・水分いっぱい取って、次の禁断症状に備えてください」 

「んっ・・・ごく・・・ごく・・・ごぷっ・・・ぶはぁ!」 

「あ、またごめんなさい!飲ませすぎちゃった・・・」 

 

さっき僕を猿轡していたタオルで、 

僕の首筋にこぼれた水を拭き取る・・・ 

 

「はぁっ、はあっ・・・文子ちゃん・・・次の禁断症状って?」 

「はい、あと3・4回ぐらい、大きな波がやってくるはずです、禁断症状の・・・」 

「そんなにっ!?」 

「しかも、どんどんその波は大きく苦しくなっていきます・・・部長、本当に頑張ってください」 

「・・・・・わかった、文子ちゃんの好意に応えるためにも、頑張るよ」 

 

禁断症状も落ち着き、 

おなかがいっぱいになると、 

疲れが出たせいか、また眠くなってきた・・・ 

 

「なんか・・・また目の前が・・うぅ・・・お、おやすみぃ・・・」 

「部長・・・おやすみなさい・・・・・」 

 

もどる めくる