さまよいの記 Vol.7 その2へ
99.9.1
今日より九月。僕にとってはあれこれ思い出深い月である。この月はなんとしても有意義に過ごしたい。今日は仕事が埒があかずに一日中担当者とやりとりしながら仕事をしてつかれてしまう。早く帰りたかったのだが、なんだかんだ九時過ぎまで仕事にいそしんでしまった。
疲れているのに、眠れない。
99.9.2
一向に進展しない仕事。イライラはつのるばかり。
最近は執筆の意欲がわかない。自分の小説のちっぽけさに改めてうちのめされている。原稿すら見れない。恥ずかしい。ハズカシイ・・・。
99.9.3
今日でようやく仕事の区切りがつけられた。一安心。今回ばかりは神経をすり減らしてしまった。もしかしたら僕はそちらにばかり想いが走っていたかもしれない。区切りがついたので久しぶりに原稿に向かうも、一行も書けず。
99.9.8
この日は僕にとって非常に思い出深い日だ。誰にも邪魔されず、想いに耽る。なんてことが出来るくらいならいいんだけどなあ(苦笑)。
久しぶりに本屋に顔を出す。さして面白いものなし。
99.9.9
9が5つ並ぶ日。だからどうした! ということを言われそうだが、まあなんとなくゾロ目はいいもんだな、と。帰宅後、HPを巡回していた時に、ふと昔読んで感激した小説が『青空文庫』にないか知りたくなり、検索しに行く。そこで長年の夢である、『セメント樽の中の手紙』をみつけた。もう興奮状態である。作者の名前を失念していたため、探すことが出来ないでいたけれど、ここにあるとは。早速ダウンロードして読もうとしたが、異常な睡魔に襲われ、あえなくダウン。
99.9.10
会社で非常に不愉快な事あり。無性にハラが立つ。久しぶりに残業をしていたら巨人撃沈。さらにハラが立つ。頭に来たので仕事を切り上げて帰宅。明日も出勤。憂鬱。
99.9.11
昼過ぎより出勤。黙って仕事に精を出す。夕方には一区切りつき、帰宅。夏風邪をひいたらしく、鼻水が止まらず、四六時中体が熱い。いやな汗をかいている為、自然動きが鈍くなる。それでも帰宅後、知人より頼まれた寸劇の脚本を執筆。しかし途中でどうにも具合が悪くなり、半分で中断。そのまま横になった。
99.9.12
朝方くしゃみが止まらずに一度起きる。頭が重い。また寝る。昼前に起き、昼食を取り、風邪薬を飲む。昼過ぎからY君と会う。二人でカー用品店に向かう。一向に快方に向かわず。夕方あまりに辛いので、申し訳ないがY君と別れ、自宅のソファで寝る。夕食を食べたあと用事があったので出掛けなくてはいけなかったのだが、出掛けるまで非常に悩んでしまった。結局風邪薬をまた飲んで出掛ける。帰宅後残りの脚本を仕上げ、メールにて送付。一安心。
99.9.13
昼過ぎからなんだか胃がチクチクと痛み始める。おかしいなあと思いつつも、そのままで仕事をしていたらチクチクがキリキリと変わり、腹を下した。変な汗を全身にかき始め、同僚と話していても上の空になる。胃薬を飲んだが効き目なし。そのうち下腹部も痛みが走り始め、ノックアウト。16時にフレックスを使い帰宅することにした。帰宅途中は胃から下腹部にかけての痛みで辛かった。帰宅して寝ていると胃の痛みはなくなったが、腹部の痛みが大きくなる。その時点でこれは食あたりか何かだろうと思う。胃薬が効かないのは当然。正露丸を探すもなし。仕方なく寝ていても一時間おきに腹痛に見舞われる。夜ゴハンを少し食べ、母から下痢止めを貰い、寝る。起きているのが非常につらかった。
99.9.14
朝目が覚めると腹痛はどこかにいっていた。まだ重い感じはしたがひどくもない。そう思った途端また鼻水。風邪がぶり返した様子。朝飯を食べて風邪薬を飲み、出勤。皆から心配される。
どう考えても昼に食べた弁当以外ない。エビのお頭が入ったみそ汁が原因か? やい、弁当屋! あんなもん喰わすな! おかげで一日うなされたぞ! と小心者の僕はここに書いておく。二度とあそこの弁当は食べないことを固く決意した。
帰宅後、止めていた連載小説の執筆を再開。全然進まず。執筆枚数二枚。
99.9.15
敬老の日。昼から会社に用事があり、顔を出す。二時ごろ外に出るとなんだか異常に渋滞している。なんだろうと思ってると道行く人の大半はリーゼントやらヤンキー風のアンちゃんが多く、車もアメリカンなものが多い。横浜国際競技場で矢沢永吉のコンサートがあることを思い出し、ウンザリ。別段ファンの人をどうこう言うつもりはない。けど、せめて車で来るならマナーは守ってほしいものだ。警察や運営側の人ももっと周囲に気をつかってほしい。仕事で来ている人だって多いんだから。
夕方から母の買い物に付き合うも、どうも調子が悪い。夕飯を食べてから少し横になる。その後Kさん宅へお邪魔。しばし雑談。
どうでもいいけど、いい加減な自分に嫌気さす。どうしてこんなにもだらしないのかなあ、オレというヤツは。一体全体どうしちまったんだよ、オレ。みっともなさすぎだ。
執筆枚数五枚。
99.9.16
本日は久しぶりの営業。スーツを着ていくと、女子社員から「今度からずっとスーツで来るといいんじゃないですか?」と言われる。そんなんイヤじゃ。スーツは楽といえば楽だけど、仕事するのにはうざったいんだぞ。やい、なんなら事務服着させるぞ。
昼より上司のSさんと厚木へ。今日は打ち合わせ一本のみ。しかも十分で終わる。異常に時間があまったので、帰りにカー用品店に遊びに行く(内緒、内緒)。帰社後、納品したデータの修正が入り、それをこなして帰宅。
書きかけの小説を修正するのみ。
99.9.18
今日は出勤日。空いた時間、女子社員のNさんと四方山話しているとき、相手の話をあんまり聞いてないと言うと「自分さえよければいいんです」と答えやがった。呆れつつ、会話はキャッチボールで、相手に常に気をつかいつつ話すのが本当の会話なのだと説明したけど、そんなことをいちいち説明しなくちゃいけないのかと阿呆らしくなる。自分さえ。そういう輩、多すぎる。僕はそんなヤツは嫌いである。場の雰囲気もわからず、自分だけ楽しければいいと迷惑をかける人間なんぞ、ロクなやつではない。
夜Kさんと落ち合い、Y君宅へ。ようやくの夏休みにサイパンに行ってきたとのこと。おみやげを頂く。感謝感謝。
99.9.19
町内会の集会があり、朝から出掛ける。頼まれた寸劇の脚本を確認したら人手が足りず、出演することになる。会場のセッティングも手伝うことになると、テーブルや椅子を運ぶハメになった。運んでいる途中、K君に会う。手伝ってくれる。持つべきものは荷物ではなく、友人である。感謝。
おばさんの日舞や唄、おじさんたちの合唱などを楽しむ。寸劇は受けが良かった。一安心。小説を書いてHPに発表するというのはより多くの人に読んでもらう為。それも大事だけど、こういう町内会での寸劇の脚本もまた僕には大事である。幅広い年齢層に楽しんで貰えるものを書かせて頂くことは非常に勉強になるのだ。それにおじさんおばさんの笑顔の素晴らしいこと。僕はこれを大事にしていきたいなあと再確認した。
帰宅後、寸劇を手伝ってくれたOさんよりメールを頂く。感謝。
今日は本当に素敵な休日だった。すべてに感謝である。
99.9.20
鼻水止まらず。やはりアレルギーらしい。会社を出るとピタリと止まる。多分埃とかなんだろう。空調のせいもあるかもしれん。仕事は順調。執筆は依然進まず。
99.9.21
朝から会社で力仕事。いい加減この年になるとキツイ。年齢の若い、新人社員がさぼってるのを見て烈火の如く怒鳴る。あまりの怒りに周囲が怯えていた。仕事してるのにまたもう一本仕事を入れられた。素直に従ったが、ハラワタ煮えくり返る。また休みが飛ぶやんけ。呆れたので定時で帰宅する。
99.9.22
朝から鼻水は垂れるわくしゃみは止まらないわでもうグロッキー寸前。静かな会社に響くは我がくしゃみばかりなり。
早めの帰宅を心に誓う。雨が降ってて辛かった。
巨人は阪神に勝った。いいねえ、清水。まさか二打席連続HRとはねえ。十人中十人打つとは思ってなかったろうなあ。中日も勝ったから差は埋められないけど、気分のいい試合だった。
ちょくちょくさる作家のファンサイトに顔を出すようになった。掲示板にはご本人も来ていらっしゃる。去年ネットを初めてからずっとそこには行っていた。今年になって本人が遊びにくるようになって掲示板も活気がある。僕は本人の書き込み読みたさに顔を出すけど、書き込みはしない。何を書いていいかわからんし、ファンの方の書き込みを見るたびに腰がひけるのだ。
そこでは確かに有意義な会話がなされているとは思う。けど、僕はなんだか気分が暗くなってしまうのだ。そして考え込んでしまう。ネットってなんだろう? 小説ってなんだろう? 人と人のぶつかりあいってなんだろう? みんな分かってるんだろうか。僕にはちっとも分からない。その掲示板に行くたびにそんなことを考えてしまう。
99.9.23
昼までぐったりとしてる。昼より会社に顔を出す。三時間ほど仕事をするが、体調すぐれず。仕事も緩慢。
今日も巨人は勝った。わき役といっては失礼だけど、後藤、二岡、岡島が頑張っていた。そうそうデセンスもね。松井や石井、桑田などの有名選手じゃない人間が頑張って、勝つというところに意味があるんだよなあ。
作品がつまらんと思うのは読者の責任だ。というニュアンスの発言をみつけた。確かに読み手にも責任はあるだろうと思う。書き手の人間としてはこの言葉は非常にありがたい掩護射撃である。でも僕は首をかしげる。もし僕が(まかり間違って)作家となり、酷評を受けたさい、ファンの援護射撃としても、この言葉を僕は素直に受け止められないだろうな。
台湾の大地震にはホント胸が痛む。その前のアメリカでのハリケーンもそうだ。天災というのはほんとどうしようもない。なにかの役に立てればと募金をする。一人でも多くの救出と一日でも早い復興を願ってやまない。
執筆枚数五枚。
99.9.28
今日より後輩のI君の仕事のフォローに入る。精神的にかなり参っている様子で、目が淀んでいる。
「オレが入るからもう安心だぜ」そう言って仕事の進行状況および今後の計画を二人で練る。確実に仕事は期日内に終わることが出来るということを一つ一つ丁寧に説明し、二人でやるんだから絶対に終わるということを強調した。
僕も二年程前までは彼のような状況があった。プレッシャーと皆目見当のつかない先行きに精神的に参っていた。僕にはそこでそれを軽減させてくれた人はいなかったが、せめて彼にはその重荷を軽減させ、仕事のリズムや進め方を理解してもらいたい。
誰だって辛いことなんて山ほど起きる。仕事でもプライベートでもそうだ。そんなときにほしいのは安心出来る一言と、最後まで励ましてくれる人なのだ。それをわからない輩が多すぎる。どんな状況でもガンバレという言葉しか出てこないヤツを僕は信用しない。
人一人を励ますにはそれは凄い生命力を必要とする。それを自分の為に使うのか、それとも他人に全てを注ぎ込むようにして使うか。
十二時に会社を出る。
99.9.29
I君と朝一発に今日の手順を細かく打ち合わせ。今日が正念場。焦ると余計時間を無駄にするだけだから慎重に、焦らずに仕事をすることを強調した。少し元気そう。僕の手伝う分の仕事は区切りがつき、データを渡した。そのあともI君の分まで手伝う。腹が減ったというので、「息抜きしてきなよ」とお金を渡してコンビニに買い物に行かせた。夜11時にようやく目処。安堵の表情のI君を見て僕もホッとする。明日の進行を打ち合わせ、会社を出る。十二時帰宅。
何もする気になれず、そのまま就寝。
99.9.30
I君の仕事は取り敢えず僕がそれほど入らなくても良くなった。I君もようやく笑みがこぼれるようになった。それでも心配なのでちょくちょく様子を見て、声をかけてやる。
夕方何かあったらすぐに連絡するようにと携帯番号を教えて帰宅。久しぶりにテレビを見るが、気がつけばもう巨人は優勝の芽がなくなっていた。
見ててもつまらないので車でドライブに行く。
帰宅後、サッカー選手の名波浩のノンフィクション『泥まみれのナンバー10』を読む。
本当の理由を知ることは、他人は一生出来ないであろう。感じることはあるかもしれない。しかし、その人の思いや覚悟まではわからない。そう、誰にも自身の覚悟や思いはわからない。僕は覚悟や命をかける、死んでもいいなんて言葉を書いたり言ったりする人とお付き合いをしたいとは思わない。
どうも自分さえよければいいという人が多すぎる。自分を棚に上げようとは思わないけれど、ここ数ヶ月で僕は身にしみてわかった。そして人が優しくならない限り、全ては変わらないということをいやというほど味わった。そんな九月であった。
つづく
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