空手四方山 第九回「0.01秒の世界」



NHKでは大河ドラマで「宮本武蔵」をやってますが、色々あって視聴率としては苦戦しているとか。
武蔵という事で思い出したことがありますのでちょっと紹介を兼ねて。
剣豪や剣聖といわれる人たちのことをうたった書物は沢山あるようです。
いくつか読んでみると、やはり強いのは
上泉伊勢守(カミイズミイセノカミ)、塚原ト伝(ツカハラボクデン)、伊藤一刀斎(イトウイットウサイ) の3人プラス宮本武蔵のようです。
(何人かは「バカボンド」という漫画に登場しているようですから 今は知っている人も多いかと思います。ちなみにプラス武蔵と いうのは武蔵の強さ、実績に関してはいろんな意見があるため)
この4人に極めて近い達人として男谷精一郎という江戸時代幕末の 剣豪を挙げる人もいるようです。
最もそれぞれが生きた時代は少しずつづれているため単純な比較はできません のでおそらく感覚的なものになってしまうでしょう。
(年齢順だとト伝、伊勢守、一刀斎、武蔵とか。大体20歳づつくらいはずれている ようです。☆一刀斎は、伊勢守より若く武蔵より年長という程度の位置付けらしい)

故極真会館総裁大山倍達先生は、その著書の中で確か上記4名を指 して以下のような説明をされています。
随分昔の話なので、数値などを始め曖昧な点がありますがご了承ください。
「彼らは0.01秒である。通常の強いといわれる者で0.1秒と思われる。
一刀斎の弟子の御子神典膳(ミコガミテンゼン)あたりで0.03くらいか。
だから全てが見えてしまうのである。
問題にならないのである。
無論0.01などというのは感覚的なものを指すのだが。」
要するに住んでいる世界が、次元が違うという事です。
史上剣豪、剣聖と呼ばれる人は何人かいますが、やはりこの4名は 傑出しているというのがどうも大方の見方のようです。
(またその中でも伊勢守ナンバー1説が多い)
その差を感覚的ではあるが具体的な数値として表現した場合に 大山先生のようになるという事でしょう。
単純に剣のスピードとかだけでなく、何か全体として違う。 野球で調子がいいとピッチャーの投げたボールが止まってみえた などという逸話が残ってますが、そのような境地かもしれません。
あるいは読みの世界なのかもしれません。
よく分かりませんが、大山先生のご説明はまさに そのポイントを一言でついているような気がします。
「そりゃ勝てませんわ!!」と一発で思ってしまいます。
どのような修練、場を得てそのような境地に達する事が可能なのか。
そしてその境地はどんなに歳を取っても枯れる事のないものなのか。
興味はつきません。

自分の事で自慢めいてしまって恐縮ですが、 2度ほどおもしろい経験があります。
どちらも試合の中です。
一度は、戦っているうちに相手の顔が何か大きく見えました。 1秒程度のものです。そこで後ろ回しを出したところきれいに決まりました。
もう一度は、私より20kg以上大きな人との試合です。
今度はほんの一瞬ですが相手の左足が光って見えたような気がしました。
そこで何気なく少し踏み込んで自分の右足をローキック的に振ってみたところ、 相手がちょうど蹴りを出した瞬間で一本足になっていたため、 きれいに足払いの形になり背中からひっくりかえりました。
何の重みも感じませんでした。
このときは相手が何を出すとか先読みしたのではありません。
何か足が蹴ってくれと言っているようなので技を出してみたら 勝手にひっくり返ってくれた。という感じです。
20年以上空手をやっていてそのような経験はわずか2回だけです。

おそらく上記4人や、達人と呼ばれる人は 常にそのようなものが見える世界にいるのではないでしょうか。
これはもう「ゴメンナサイ」しかありません。
ある達人はピストルで狙われたときその弾道が先に見えたので 避けたら助かったとおっしゃってたそうです。
また、物陰から刀で襲われたのだが、先に光るものが目の前を 通ったのでよけたらやはり助かったという方の話もあります。
逸話の域を出ませんので信憑性は??というものもあります。
しかしやはりそのような世界、0.01秒の世界があるのかもしれないです。

話は変わりますが「上記4人が史上最も優れているようである」と いうのは、大山先生を別にすると どちらかというと物書きの方々の見方。
実際に剣道をなさっている方々のご意見も一度聞いて見たいものです。

強いという事以外で4人に共通するのは 結局は権力とか地位とかを捨て、人里はなれ静かに剣の道に生きた事という点です。
また勝つ事のみを究極の目的では無いと 修羅場の結果到達したであろうと言う点です。(多くの人を倒した結果だから重たい)
(これは先の男谷精一郎も同様のようです)
本当に強い人たちは、生き方においても魅力があります。

伊勢守、ト伝、武蔵は、正確さは別としてその出生から死までが比較的明らかに されているのに対し、一刀斎は、出生、経歴、行方も不明との事で、 ある一時期の記録しか残ってないようです。
一説では鐘巻自斎(かねまきじさい)という人の弟子であったそうですが、 弟弟子にあたるのが武蔵と戦い敗れた佐々木小次郎との事。
小次郎もその出生、経歴(死に関してまで)、など謎の部分が多く、 自斎の名だたる弟子は揃って強いが、経歴不肖という事になります。
(漫画のバカボンドでは一刀斎と小次郎が共に旅しているようですが 史実としては残ってないようです。
しかし在り得ない話ではない。もし本当であればこれは恐るべきコンビ。 大山先生とキックや格闘術で有名な黒崎先生(キックの小比類巻の先生)、 あるいはK1ならばホーストとバンナやアーツ、 空手ならフィリオ選手と数見選手が一緒に原宿や新宿に買い物に ゆくようなもので、こりゃ怖いものなしです。)

どちらかと言うと伊勢守、ト伝は陽の当たる場所を歩み、 一刀斎と武蔵は陰を歩んだような印象があります。
それは弟子の数でも同様のようです。一刀斎も武蔵も少ない。 (但しト伝の弟子は悲運の者が多い)
しかし逆にその謎や孤高ゆえ、一刀斎という剣士がより一層魅力的に見えてきます。




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