空手四方山 第八回「目に見えない変化」



もう春です。日が長くなってきました。
10年以上前の事です。仕事上の上司に
「いつも同じ時間に家を出るんですが、気がついたらいつの間にか 太陽の位置が随分変わっているんですよね。」
と話したところ
「それは、あんた、毎日ちょっとづつ変わっているんだけど 気がつかないだけだよ。」
と笑われました。

アメリカとかに住むようになると6ヶ月とかで、いきなりテレビで しゃべっている英語が理解できるようになるという話はよく聞きます。
しかし多分これもいきなりではないと思います。
ある境を越えると理解できるようになるのではないでしょうか。

空手でもそうゆう部分があるように思います。
昔流行った漫画では強さ(戦闘力)を数値で表していました。
仮に戦闘力50の人がいるとします。
週に何回かこの人と稽古をします。
一ヶ月、二ヶ月たってもこの人が強くなったように感じません。
三ヶ月、四ヶ月たっても同じです。
ところが、五、六ヶ月たったころ 「なんだ、いきなり強くなったな〜」と感じます。
戦闘力が60くらいにアップしたように感じます。
当然、一日にして10もアップしたわけではありません。
多分、数日でゼロポイントいくつかで強くなっているのだと思います。
そしてそのゼロポイントいくつとか、1とかいう数値の変化は目で捕らえることができません。
また戦闘力が59位までアップしていても、それを感知する事ができません。
それは道を歩いたり、階段を上るのと同じかもしれません。
一歩一歩は、その変化を感じる事ができないのですが、 気がつけば遠くにきている、高くまで上ってきている。

同じ量、質の稽古をやっていて、以前はすごく苦しかった稽古が 何時の間にか楽になっている。
毎日、少しづつ楽になると感じるのではありません。
ある日気がついたら楽になっているのです。
人間の感覚は、敏感のようで鈍感なのかもしれません。
小さな変化は捉えることができない。同時に ある一定のラインを越えないと変化の蓄積を知覚する事ができないのかもしれません。
しかしそれは間違いなく一歩一歩の積み上げや変化であるはずです。

もうひとつつっこんで考えてみます。
野球で昨年まで大リーグにいて今年阪神に戻って来た伊良部投手の話だったと思います。
伊良部投手は日本歴代最速158kmか159kmの速球を投げた投手です。
おおよそ以下の通りです。
「150kmがでれば154までは 比較的すぐにゆく。しかし155がなかなかでない。
155がでれば159まではゆくが160はでない」
またプロレスのアントニオ猪木は、自身とカールゴッチという「神様」と呼ばれたレスラーの差について次のように語っていたように思います。
(もしかしたら、他のレスラー同士の比較や一般論だったかも)
「その差は紙一重なんです。 もう少しで超えれるところなんですが、その紙一重をなかなか超える事ができない。 ものすごく厚い紙一重なんです。」

戦闘力59までは比較的すんなり伸びているのかもしれません。
そして50から59への変化は、その伸びを感知できるレベルではない。
59から60へのわずか1ポイントがなかなか超えられない。
ようやくその1ポイントを超えると違う次元に入り、 自分も周りもそれを感知できるのかもしれません。
次元と言うとちょっと大げさですが、まあ次のレベルと置き換えていただいて結構です。
一歩一歩次に進むのですが、最後の一歩がなかなか超える事ができない。次のレベルに入れない。
当然、止めてしまえば後退する。
この1ポイントという壁は、いったい何回やってくるのでしょうか。
終わりがないのか、年齢や肉体の限界によってストップがかかってしまうのか?
よくわかりません。
せいぜい毎日、楽しく稽古するしかないです。




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