空手四方山 第7回「鉄兵ちゃん」



前回コラムは「新春1**」と銘打ちました。当然2や3があるはずです。
しかしながら1月も終わり。とりあえず「1」で新春は打ち止めとなりました。すみません。

本題です。 先日本屋で「おれは鉄兵」という漫画を見つけました。
「あしたのジョー」で有名なちばてつや氏の作品です。
かなり昔の漫画ですが、なつかしく久しぶりによんでみました。
主人公が「上杉鉄兵」といいます。
ちばてつや氏がよく描く、俗に言う破天荒な主人公です。
この鉄兵ちゃんは剣道をやります。
この剣道の戦いぶりがおもいしろいのです。
確か設定だと鉄兵ちゃんは中学生です。高校生相手に 戦います。
自力では高校生が上なのですが、鉄兵ちゃんは相手のクセ(長所、短所)を 見抜く目がずば抜けています。 しかも運動能力は抜群。
ひとくせもふたくせもある強豪を次々と下してゆきます。
運動能力と目のよさ頭のよさでガンガン攻めるのですが、 おかしな手もよくつかいます。
相手の目を回す。
試合中にベロを出し、白目をむいてびっくりさせる。
袴(はかま)の下でパンツを脱いでそれをちらつかせて相手の注意をそらす
など
正攻法的に相手の弱点をつくということもありますが、 基本は「どんな手を使っても勝つ」です。
試合中もよくしゃべります。
相手選手にその場でアドバイスすることもあります。
年上にむかって 「あんたね。それ悪いクセ」とか
そういう鉄兵ちゃんに対して複数の大物選手は
「剣道とは勝つこと以外にももっと大切なことがあるんじゃないか?」 とか
「しょせん奇襲戦法とはその場しのぎで正攻法の上級者には通じない」 などとアドバイスします。
しかし鉄兵ちゃん、意に介する事無く とにかく勝つ為にひたむきに戦います。
無論そのための稽古は裏でしっかりやってます。
試合を見学している剣道関係以外の学生はいつのまにか鉄兵ちゃんの ファンとなり「わっしょい、わっしょい」などといって応援します。
(ちばてつや氏の漫画には良く出てくるような気がする。)
確かに勝つための手段として卑怯ぎりぎりのものも多いのですが、 そこに不快感を与えません。
ぎりぎり卑怯でなく、むしろひっかかる相手(大物に限る)が悪い という印象を与えます。
そこには小が大にかみつくという構図があるからかもしれません。
おそらく同レベルの者にそのような手を用いても共感は得られないでしょう。
正々堂々という言葉や武道における礼節にも疑問符を投げかけているようにも 見えます。
「正々堂々とは」
「武道の本質はまず勝つために努力することではないか」
もう一歩踏み込むと 「武道は礼が大切というがそれのみを前面に押し出していいのか」
とも取れます。
剣道でも空手でも柔道でも一般に武道といわれるものが勝つという 研究や努力を二次的なものとし正々堂々とか 礼節とかのみをセールストークのようにし子供を集める というような事へ疑問符とも取れない事もない。
礼は武道に限らず、野球でも、レスリングでも他のスポーツに共通のはずです。
その部分のみを強調して武道といっても、私には説得力に欠けます。
(誤解しないでいただきたいのは礼節や正々堂々が不要といっているのではないです。)
空手の大会でも、道場一体となって勝つために色々とやるのを見かけます。
イヤーマイク(?)をつけて次の相手選手の状況を知らせると言うのまで見た事が あります。
山のようにセコンドがついて、プレッシャをかけたり、審判にけちをつけたり
「勝つ為に必死」というのは同じですが何か違うように見えます。
無論、現実の世界と漫画の世界のギャップを差し引いての話です。
大きな違いは、鉄兵ちゃんはあくまで自分一人で倒す研究をする点です。
同時にあくまで自分より上の強豪に対してのみです。
(しかも研究した内容は、自分で抱え込まずに敵にも周りにどんどん教えてゆくのです。)
先に述べたように「小」が「大」にひたむきにかみつく。しかも個人で。
というのが基本です。
鉄兵ちゃんの戦いを果し合いとか試合とするならば、集団でのそれは戦(いくさ)、合戦(戦争) の違いと言えるかもしれません。

私自身、道場の組手、スパーリングで生徒がおかしな技で攻撃すると 何か姑息に感じて注意します。
しかしそれはあくまで感覚的に姑息だと感じるだけで、かっこたる理由はありません。
もしかしたらこれは間違っているかもしれません。

宮本武蔵が決闘の時刻に遅れるとか一般に卑怯ととられる作戦を用いたと される部分はテレビなどでご存知の方も多いと思います。
武蔵以前の剣聖「塚原朴伝」も、事前に敵の特徴をスパイさせたとか。

手放しで肯定するわけではないですが、 鉄兵ちゃんの戦いぶりには本質が隠れているようです。

こう書くといかにも難しい顔をして読んでいたように見えますが、 実際は鉄兵ちゃんを応援しながら楽しく読んでました。
読後爽快感は文句無し。






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