「ジャカッ、バシュッ」
「ヴドドドドドドッ!」
「ヒュパパパパパパパッ!!」

 閑静な山あいにエアガン、ガスガン、そして電動ガンの場違いな音がこだまする。そして、

「えいっ、えいっ。」
「うらあーっ!!」
「こんちくしょーっ!!」
「ヲホホホホホホホホッ!!」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・コワイよおぅ(T^T)。






"Who done it ?!"

〜あるいは「モテモテ主人公君争奪 大サバイバルゲーム大会実施の顛末」〜
(ACT-2)








 ここはC県にある、とある山の中。
少々変わり者のこの土地のオーナーのおかげで、この山は「バイオBB弾」を使用するという条件さえクリアすれば、いつでも貸してもらうことのできる絶好のバトルフィールドなのだ。
 その証拠に、歴戦の勇士達の残弾がこれでもかと言うぐらいに地面にめり込んでいる。
 初夏を思わせる風の中に草いきれが混じり始めたこの季節に、ここには僕と、僕を巡って争うことになる"DoLLs"のメンバー12名とが集結した。
 全員が真新しいB.D.Uに身を包み、思い思いの銃器で武装している。・・・僕は自分の新たな属性を発見したような気持ちでいっぱいだった(謎)。



 さて、今回適用するルールを簡単に書いておきましょう。




「そして、状況を開始する前に二つだけ注意があります。」僕は説明を続けた。
「一つは、この山はいわゆる『禁猟区』(by:ヒロミ・ゴウ)ではないため、もし本物の銃を持ち歩いている人を見つけたら、このゲーム自体を即時中止とすること。そしてもう一つは、心ないハイカーのせいで勝手に掘り返されてしまった自然薯の穴に注意することです。」

 前者の件は当然のことだが、後者の場合は始末が悪い。うっかり走っている最中に片足でも突っ込んだら、最悪骨折などの大ケガを被ることになるからだ。
・・・もっとも、その方が好都合なのだと考えるフシもあり得るのだが・・・。みんな、無事にゲームを終えて帰ってこようねっ。

「以上です。なにか他に質問はあるかな?」

「はい。」ほのかが挙手をする。
「本物の『銃剣』を持って来ちゃったんだけど、・・・使えないよ、ね?」
 てへへと可愛く笑うほのかにうっかり「いいよっ。」と返事をしかけて、僕は思考が一瞬ホワイトアウトした自分を殴る。
「・・・不可です。他には?」

「ほーい。」千恵か。
「じゃあ、コレなら使っていいんだよな?」
 そ、それは昔懐かしい『カ○ザーナックル』じゃないのか? どっから持ってきたんだそんなもの・・・。
「・・・やはり不可です。他には。」

「はいっ!」妙子はなんだろう。
「これはいいのかなぁ?」
 ・・・おタマ?????? うーーーーーーーーーーーーーーーーーーん・・・。あ、でも待てよ?
「投石機の代用品にもなるので、やはり不可です。」

「ちょっとちょっとみんなー!!」いい加減キレかかった美由紀が割ってはいる。
「これはあくまでも『ゲーム』なんだから、殺し合いはダメよっ。分かってるの?!!」

 その通りです、美由紀・・・。

 そう思った瞬間に、誰からとも無く「ちぇー。せっかく持ってきたのに・・・。」とボヤキが入る。
そして出るは出るは、くない、まきびし、匕首、手裏剣、鎖帷子、スタンガン、etc.etc.....

既に目を覆ってしまった僕の代わりに、美由紀の絶叫が山あいに響き渡った・・・。

「没収ーっ!!」








 ・・・それからきっかり30分、僕は全員の持ち物をチェックし、危険物が無いかを確認した。文字通り「冷や汗だくだく」で。

「さて。」僕は全員を改めて見直し、こう言った。
「では試合を開始します。全員ケガの無いように。あくまでも『高尚なスポーツ』であるという認識の元、戦ってください。」

「「「「「「「「「「「「はいっ!」」」」」」」」」」」」

 ・・・返事はいいんだがなぁ。さっきの道具を見た後じゃあ不安で不安で、・・・って、あれ?
みんな、ニコニコしながら近づいて来るけど、なにかな?

「うわ!!」
 あっという間に僕は全員に囲まれ、そして取り押さえられた。

「なっ、何をするんだあああっ?!!」
 しかし、誰も僕の言うことになど耳を貸さず、・・・僕はやがてロープでぐるぐる巻きにされ、手近な木に縛り付けられた。

「あっ、あのねーっ?!!」
 
すっかり身動きのとれなくなった僕を彼女たちが見ている。ううっ、こんなむごい仕打ちを受けたのは生まれて初めてです(T_T)。

「ダーリン、ごめんねぇ?」えみる、そう思うなら。
「別に疑う訳じゃないんだケドさぁ。」夏穂が申し訳なさそうにしている。
「特定の誰かを応援しないとも限りませんし。」若菜もちょっとツラそうだ。
「公平を期すためには、こうするしか・・・。」・・・るりか、それももっともな意見だけど、しかし・・・。
「それに、やっぱり『争奪戦』なんだからそれなりの達成感と『賞品』が欲しいんだぁ!!」にこやかに言うかなっ、明日香っ!!

「美由紀、・・・弁解ぐらいは聞かせてくれるんだろうね?」僕はちょっとイジケてみながら美由紀を見た。

「うーん。まぁ、そういうコトだし・・・。私はモチロン反対だったんだけど・・・。」
「フッ。・・・まぁ見ているうちにキミが逃げださないようにって言うのが一番かな?」

 ・・・優、それって全っ然フォローになってないぞ・・・。

「フン、決着なんかあっという間よ。アナタはそこでおとなしく待っていることね。」
 晶にビシッとデコピンをされて、僕はがっくりうなだれた。

「と、とにかく死人は出ないようにね・・・。それじゃあ時間を合わせます。みんな、自分の時計の針を13:00ちょうどにしてください。」

 全員が腕時計を調節する。

「試合開始は13:10です。それまでに自分に有利だと思われる場所に散会するように。・・・美由紀。」

 僕は美由紀を呼ぶと、僕の懐中時計を目の前に下げてもらった。

「カウント開始します。・・・5,4,3,2,1,ゼロ。開始!!」

「わーっ!」と、みんな自分の銃を担いで、それぞれが自分の好みのポジションに移動を開始した。

「・・・やれやれ。ホントに大丈夫かなぁ?」
 僕はそうひとりごちて大きくため息をつくと、ひとしきり辺りを見回した。・・・あれ? 真奈美??

 一人ぽつんと残っている真奈美が僕をじっと見つめている。

「ど、どうしたの?」

「あの・・・。」ちょっとおどおどしているのはいつもと変わらないのだが、少々様子がヘンだ。

「真奈美?」

「私、・・・まさかこんなコトになるなんて思わなくて・・・。ただ真実が知りたかっただけなのに・・・。」
 それは僕も同じだよ、と言いかけた僕の目の前で、真奈美は両手にしたレミントンとモスバーグをワンハンドで「ジャカッ!」と装填してみせた。
 
いずれも名だたるショットガンだ。重量も割とあるはずなのだが、・・・真奈美??

「こうなった以上、あなたは私がいただきます。」

 瞳に宿る危うい光。
そして次の瞬間、普段の仕草からは想像もつかないような俊敏さで、真奈美は僕の眼前でダッシュした。
普段から野山(と言っても彼女の場合、自分の家の敷地内なのだが)をよく歩いているからなのだろうか。鬱蒼と生い茂る藪の中を、まるで一本決められた道でもあるかのようにどんどん走ってゆく彼女を見ながら、僕は今更ながらにとんでもない方法を提案したものだと後悔し始めた。



「神よ、願わくば彼女たち"DoLLs"に少々の慈悲と、そして多大なるご加護を・・・。」




 そして冒頭のような状況が生まれたのである。
僕は次回あの状況を克明に、しかも正直にお話ししなくてはならない。
しかし、彼女たちの名誉のためにも、僕の身の安全のためにも、ここから先はどうか理解して欲しい。
「サバゲー」とは、危機的状況に陥った時にこそ、その個人の本性が露わにされる性質のゲームであるということを・・・。


To Be Continued...




(おまけ)

「あっ、いけないっ!!」

 僕はあることに気がついて、縛られた体勢のまま大きな声で全員に呼びかけた。

「みんなー、必ずゴーグルはつけるんだぞー!!」

「「「「「「「「「「「「はーい!!」」」」」」」」」」」」

「って、こらあーっ!!」・・・あの声は千恵だな。なんだ??

「今ので全員の位置がバレちまったじゃねーかっ!!」

・・・ううっ、スミマセン(T^T)。