(ううっ、どうしよう?)真奈美は2丁のショットガンを抱えて森の中を駆け抜けながら、先ほど千恵を誤射してしまったことを今更ながらに後悔していた。
(そうよね、何もわざわざ撃たなくたって良かったのに。)
反省反省。しかしどうして自分はいつも何か大事なことを失ってから気がつくのだろう?
あの人のこともそうだったし、そして今回の件だって、別に他のみんなに恨みがある訳ではないのだ。ただ、自分は真実を確かめようとして・・・。(・・・あら?)
その時、真奈美の胸中に閃く何かがあった。そしてその閃いた何かは、急速に確信に近くなってゆくのだった。
(えっ? じゃあひょっとして・・・。)
ザッ、とその場で急停止し、真奈美は自分のその思考に愕然とした。その思考は、しかし今実施されているこのゲーム自体の意義すら無意味なものへと変えてしまうものであったため、おいそれとは口にできない。
それになによりも、「あの人」がせっかく提供してくれた、これは自分の力量をも図るための格好の戦場だ。自分の「あの人」への想いがいかほどのものか・・・。試して、みたかった。それに、
(サバイバルゲームって、結構楽しいかも。)
・・・性格変わったね、真奈美・・・。
"Who done it ?!" 〜あるいは「モテモテ主人公君争奪 大サバイバルゲーム大会実施の顛末」〜
(ACT-10)その頃。
「あっ、ちょ、ちょっとヤダっ。やめなさいってば綾崎さんっ。」
「いいじゃありませんか、別に減るものじゃあありませんし。」
「精神的に減りそうな気がするんですっ。」すると若菜はピタッと動きを止めると、途端に夜叉のような形相で美由紀に向き直ってこう言った。
「だ・れ・の・せ・い・だ・と、思ってらっしゃいますのっ?!」
すると、その声を聞きつけてまたもや優の機銃掃射が開始された。
ボボボボボボボボボッ!
「わわわわわわっ?!」
「まったくっ! だから早くと言っているのでしょうに!」
「ううっ、でも、それは・・・。」
「いい加減に観念なさいっ!」とりゃあーっ! ←(若菜が気合いを入れる音)<<(?)
すぽぽぽーい! ←(美由紀のB.D.U.が次々と脱がされてゆく音)「わっ、きゃ、きゃあーっ!」
すると若菜は、先程手近にあった材料でこしらえておいた案山子に脱がせたB.D.U.を纏わせてゆく。どうやらこれを囮に使い、優の注意を逸らせようという魂胆らしい。
そして美由紀はと言えば、知的な外見とは裏腹な、白いキメの細やかな肌を露出させられてしまい、その豊(注:本来ならここより以降に約30行程おやぢ臭い表現が続くのですが、作者の中に僅かながらに残されている羞恥心と、これまた奇跡的に発見された良心回路の作動によりボツとさせて頂きます。予め、ご了承下さい)た。
「ふぅ。手こずりましたわね。」
「ううっ。」今や美由紀は半裸の状態だ。上はOD色のノースリーブ。下は、万一のことを想定して持参していたこれまたOD色の短パンだ。
この状態でちゃんと足下には編み上げのコンバットブーツを履いているのだから、そのスジの人たちにとって、これはこれで結構堪らないものがあるであろうと思われるが、今は本編とはなんら関係無さそうなので細かな描写は敢え無くカット。「七瀬さんの件に関してはあなたが全面的に悪いのですから、今更文句を言わないっ!」
「は、はいっ!」確かに。
今は若菜の方が優位だ。何より優の件でゲーム終了後にツッコミを入れられたりしたら、美由紀の立場はちょっと危ういからである。「それではよろしいてですか? あなたはこの案山子を木の陰から見え隠れさせて、七瀬さんの残弾数を限りなくゼロに近づけて下さいな。いいですね?」
「・・・それって、わざわざ脱がなくても良かったんじゃ・・・。」「い・い・で・す・ねっ?!」
「はいーっ!」
と。
「・・・・・・あら?」
今の今まで続いていた優からの掃射が、いつの間にか止んでいた。
不思議に思った二人が隠れていた木の陰からそーっと顔を覗かせると、ちょうど優が木の下から走り去ってゆく姿が目に入った。「「はっ?」」
先に我に返ったのは若菜だった。
「追いかけますわよ、早くっ!」
「え、ちょ、服くらい着させてくれたって・・・。」
「いーから早くなさいっ!」
「はっ、はいっ!」仕方なく、美由紀は案山子をその場に残して優の追撃にかかった。
そしてしばらく猛ダッシュをする二人。しかし・・・。「妙ですわね。」
「何が?」若菜は美由紀に顔を向けず、真っ直ぐ優をその視線の先に捉えながら続ける。
「こうして私たちの姿もすっかり見えていると言うのに、何故七瀬さんは撃ってこないのでしょう?」
そこで若菜が、モノは試しとばかりに優に向かって走りながら"MP5-K"を乱射する。もちろん、走りながらではあるし距離が有りすぎるので威嚇程度にしかならないが。
ヒュタタタタタタンッ。しかし、優はこちらをチラと振り返っただけで一向に向き合う気配が無い。若菜は美由紀に振り返って訊ねる。
「誘っているのか、或いは弾切れ、でしょうか。」
「多分、後者の方でしょうね。あれだけの量を一度に撃っていたんだもの。」
「だとして、七瀬さんは一体どこに向かって走っているのでしょうか?」
「・・・・・・死体置き場・・・・・・。」
「えっ?」意外なことのように驚く若菜を横目に、美由紀は優のパーソナルデータを思い出して一つの結論に達したのである。
「死体置き場に行って、既に戦死した人たちから弾を巻き上げる気なんだわ。」
「それって規約違反じゃありませんの?!」
「あの七瀬さんだけはそうは思っていないんでしょうね。」
そして美由紀は続ける。「でも実際、自転車はちょくちょく借用してはいたらしいですよ? 勿論、無断でね。」
そこで若菜は走りながら器用に深いため息をついた。
「でも何故そんな『盗んだバ○クで走り出す♪』ような人と関係を持ったのかしら、あの人は・・・。」
美由紀の言葉に眉間を押さえる若菜。
そして二人は顔を見合わせると、「やっつけてしまいましょう。ちゃんと。」
「ええ、賛成だわ。」美由紀の返事に若菜が続ける。
「あの方を邪な道へと歩ませる訳には参りません。」
成り行きとは言え、今この瞬間だけは固い絆で結ばれた二人であった。
To Be Continued...
(おまけ)
★モルグ(死体置き場)にて
「・・・なんかヤバそうな気配が近づいてくるりゅん。」
「一体どんな気配なのよっ?!」
「うーんとおー・・・。」晶のツッコミに、頭を振り振り何かを聞いている風のえみるが答える。
「多分、ぐちゃぐちゃ。」
「もっと分かりやすく言ってよお〜。」これは夏穂だ。
「テーマソングは『シ○アが来る!!』みたいだりゅん。」
「わかるかあー!!」千恵、取りあえず落ち着きなさいっ。