95年10月の様子 

 「銀に なびく尾花や 一人道」

 主人がお世話になった先生からのお手紙の中に、日本の秋を詠んだ句がありました。パナマでも、ススキらしき植物が一面に広がる景色を見ることができる季節です。八百屋さんにもさつまいもや、枝豆が並びました。(あじは かなしいくらい にほんのとはちがうけどね)

 10月は毎日がバタバタと過ぎて、ススキも秋の味覚も楽しむ余裕が無かったのですが‥‥。  

 その1  大けがでたいへんだー!!!

 10月9日(月)侑理の左目に5年生のけったボールが当たり、眼球内出血で入院しました。目の中に溜まった血のせいで、ほとんど物が見えなくなり、一時は手術かと緊張の一夜を過ごしましたが、自然に血が吸収されるのを待つだけで、13日(金)に退院することができました。10月の末には、運動も水泳もOKになりましたが、なかなか視力が元に戻らず心配です。

 入院した所は、パイティージャ病院という、パナマでは最高級の施設の病院です。患者さんはみんなお金持ちに見えます。キリストの祭壇があって、毎日祈っている人もいます。侑理の入院した部屋は、個室で冷蔵庫、シャワー、トイレ、テレビ、電話つきですが、409 号室という日本では考えられないような縁起の悪い番号です。

 完全看護なのですが、言葉の分からない侑理一人を置いておくわけにも行かず、昼間は私が付きそい、夜は主人が付きそいました。主人は、学校から病院に帰ってくると、病院で夕食を食べ、シャワーを浴び、仕事をして眠り、朝食を食べ、学校に行きます。何日かすると、まるで病院が我が家のような気になって夜中にパンツ一丁でワープロを打っていたら、見回りに来た看護婦さんがびっくりして逃げていったそうです。(しゅじんは、よなかまではたらいていたから ビックリ したんだろう といってますが) 

 食事は、前日にメニューの中から好きなものを選ぶことができるのですが、初めはそんな事を知らず ゙何で毎日煮込んだチキンとフライドポテトなんだろう?とふしぎでした。選べることがわかってからは、レストラン感覚であれこれ注文し、パナマの味を病院食で満喫しました。でも、付きそいまで3食あれこれと注文しているのは私たちだけらしく、日本人は変わっていると思われたようです。 

 おもしろいのは、診察するところと入院するところは全く別で、看護付きホテルに泊まっている患者のところにお医者さんが出張してくるというシステムになっていることです。自分の家でなおしたいという患者には、家まで回診に来てくれます。

 ここで、クイズです。


5日間入院した侑理の医療費はいくらかかったでしょう?

・アルフレッド先生に払う仲介料‥‥‥‥‥‥$40 

・チャニス先生に払う診察料。‥‥‥‥‥‥‥$80 

・入院費‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥$1274 

・薬代‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥$ 5

─────────────────────────

 合計‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥$1399   

 

 日本円で約14万円もかかったのにはびっくりしましたが、学校の保険がきいて$150くらいで済みそうです。

 しかし、$150 だけでもメイドの1か月分の給料より高い金額です。他の安い病院に行くとしても、パナマの人は医者に診てもらうのは大変だと思います。

 アンヘラのお母さんが心臓発作で倒れたときも、入院したのはたったの2日。あとは家で寝たきりです。パナマではけがや病気をしたら大変なのです。(パナマだけじゃないとおもうけど) さて、けがをした本人の侑理ですが、左目がよく見えない以外は元気いっぱいなのに絶対安静なのでテレビも本もだめ。おとなしく寝ていることが一番大変だったようです。 

 その2  趣味をもつのはたいへんだー!!  

 パナマには、ほとんど産業がなく、おみやげといっても「モラ」という刺繍か、メンデスさんの描いた油絵か、手作りの「セラミカ」くらいのものです。(あとは、コーヒーまめと Tシャツ か?) そこで取りあえず、趣味とおみやげをかねて「セラミカ」を始めることにしました。「セラミカ」とは陶器のことで、日本の観光地に行くとお皿や湯呑みに絵をつけて焼いてくれるお店がありますが、それをヨーロッパ風にした感じです。お皿やカップもありますが、ほとんどが装飾用の人形や置物です。パナマには今でもスペインの影響があちらこちらに残っていて「セラミカ」もその1つと言えるでしょう。10月はクリスマス・ツリーやサンタ・クロースの置物を焼く人でにぎわっています。私が挑戦しているのは、「ポジェーラ」というパナマの民俗衣装を着た人形なのですが、ドレスの模様を描くのに手間取り、なんと夏休み前から始めて10月末になってやっとできたのでした。

 主人も挑戦したのですが、粘土の人形の形を彫りあげたところで首がもげてしまい、がっくりしてリタイアしました。心理と侑理はお皿に挑戦。かわいいカレー皿ができました。 

 私特製の「ポジェーラ」をおみやげにほしい人は御一報ください。

ただし、3年間でいくつできるかは??です。応募者多数の場合は抽選にさせていただきます。 

 その3  本を買うのはたいへんだー! 

 日本の物で、欲しくても手に入れるのが大変な物‥‥‥‥‥

  それは本です。こんな本が欲しいな、と思っても書店で見ることはできませんし、OCSという専門の企業に取り寄せてもらうと値段が5〜7倍になってしまいます。「女性セブン」という雑誌を買っている方から「280 円の本が$18もするんだよ。」と聞いてびっくり。心理と侑理は、日本のおじいちゃん、おばあちゃんに毎月「小学1年生」という本を送ってもらっているのですが、本が500 円で送料が1250円です。マンガ本も送ってもらうことにしましたが、「コロコロコミック」「コミックボンボン」「日経クリック」の3冊とお菓子で4240円送料がかかりました。でも、本と一緒に日本のお菓子も送られてくるので(ふろくのように たいらにして ほんにはさんである)とても楽しみにしています。

 以前、航空便で日本食を送ってもらったときは、20,000円くらいの品物で25,000円くらいの送料がかかり「なるべく船便を使うように。」と言われました。船便だと送料が半分以下で済むそうです。(3かげつ かかるけどね)

 たくさんお金がかかってもやっぱりうれしい小包みですが、受け取るときに、またお金を取られます。中の品物の種類や金額によって$5〜$60の税金を払わなければなりません。スルメが送られてきたときには、税関と検疫とで調べられ、$50も取られました。ビデオテープは送ってくれた方が「価格=¥100 」と書いてくださったため、$2ですみました。品物の値段は、安く書くのがコツです。(10ぶんの1のねだんをかいたって パナマじんには わからないもんね 。) 

 たぶん、『NO VALUE』と書けばタダになるのではないでしょうか。(ぜひためしてみてね)

 税関の人が小包の中身をチェックして、あやしい物が入っていないか調べるそうで、(なんせ となりは コロンビアですから) 時々、品物が抜き取られると言われていますが、今のところは無事です。 

 その4  家をもつのはたいへんだー 

 毎週日曜日にぶ厚〜い新聞を買うと、たくさんの住宅の売出し広告が印刷されています。(パナマには にほんのような はさみこんである こうこくはないのだ)

 日本人が住んでいる住宅は、治安を考え高層アパートが全てで、独立家屋は大使公邸だけ。場所もパナマ市の1番中心街の高級住宅地が多く、もちろん24時間ガルディア(警備員)が付いています。

 1か月に$1625も家賃を払っている私たちは、パナマのマンションっていくらなんだろう?と興味津々で広告を見てみると‥‥

 主要道路に面した1等地で新築の場合、

   2寝室で約854 万円

   3寝室で約1051万円

 お金持ちは床にじゅうたんを敷きつめたり、テラスをガラス張りにしたりしています。

 中心街は、高層ビルばかりなので、一軒家の場合はちょっと郊外になります。土地の広さを気にしないのか、坪数はあまり書いてありませんが、だいたい200 坪くらいだそうです。

 3寝室で約335 万円

 コンクリート造りの平屋がほとんどです。マンションに比べて一軒家は3分の1以下という安さです。                          

 「お、300 万円で一軒家が買えるなんて、別荘にしようか。」などと考えてしまった人はいませんか? 300万円で別荘を買っても地球の裏側のパナマに来るには旅費が1人25万円くらいかかるし、飛行機に14時間も乗るのでは余程のお金と時間と体力のある人でなければ大変です。それでもパナマに来てみたいと言う方は、わが家に滞在してみては?3か月までなら観光ビザでパナマの生活を楽しめます。 

 パナマの人たちにとっても、「マイ・ホーム」は夢ですが、夫がいない、職がない、貯金もないという人が多い国ですから、家を持つのは大変です。 

 NOTICIAS     

10月1日(日)

 家族でアマドール(アメリカ領にある海岸,観光地のようになっていてまるでウエストコースト)に行って貸し自転車を借りました。子供用自転車は1台$1.5 、夫婦とあてなで乗れる3輪の自転車は$4.5 です。心理と侑理は半年以上も自転車に乗っていなかったので、ふらふらして海に落ちそうになったり、走ってくる車に向かっていったりとひやひやでした。やっと上手に乗れるようになった、と思ったとたん心理が金網に顔から激突。涙が5つぶこぼれました。 

10月3日(火)

 私1人パナマ見学会に参加して来ました。参加者は、日本大使夫人、校長夫人、日本の企業の社長夫人を始めとして50人くらい。20代前半の方もたくさんいました。

 パナマ運河を造るときの様子を描いた絵を見たり、昔は黄金の町として栄えた遺跡を見たりしてきました。 

10月8日(日)

 主人がゴルフ大会の3J会に参加。グロス100 、ネット69で  初優勝 しました。(しゅじんが どうしてもかけというのです。) 賞品はパナマで発掘された遺跡をまねた金の飾り物でした。  

10月9日(月)

 侑理が入院しました。(まえのひの ゆうしょうがわるかったかな?) 

10月13日(金)

 侑理が退院しました。(よかった よかった)

 学校職員が放課後ソフトボールの練習を始めると、隣のビルの窓からグラウンドめがけていろんなものを投げこまれたそうです。主人の周りには、乾電池、じゃがいも、生たまごが降ってきました。もし、当たっていたら、きっと409 号室に入院です。 

10月14日(土)

 職員研修で主人がパナマの見学会に行きました。セントロという危ない地域なので学校からたったの2kmぐらいしか離れていないのに、ツアーガイドを頼んで行きました。

古い教会(カテドラル =大聖堂)や大統領官邸には一般の人は近づけませんが、中に入ることが出来たと喜んでいました。

10月19日(木)

 夜8時すぎ、Y先生の住むアパートの駐車場で、強盗殺人がありました。殺されたのは、カナダ人で大金持ちの会社社長でした。Y先生が学校から帰ったとき、車のなかで死んでいる姿を見たそうです。150 万円のローレックスの時計が盗まれたと新聞に書いてありました。犯人はまだつかまっていません。(たぶんつかまらないでしょう) 

10月21日(土)

 青木建設VS日本人学校のソフトボールの試合がありました。青木建設は日本人2人で、あとはボディービルダーのような体格のパナマ人です。1回の表に日本人学校はいきなり連打で7点を取り、企業相手に初めて勝つのではないかと期待されましたが、体力の限界は4回まで。16対17のサヨナラ負けで終わりました。(しょうじきにいいましょう。 あしをひっぱったのは しゅじんです。) 

10月28日(土)

 後期水泳大会がありました。14mを泳げるか心配していた心理でしたが、けっこうすいすい泳いで1等になってしまいました。(1ばんおそいグループのなかでだけどね)

 翌週の水泳検定では、心理も侑理も25mをらくらく泳ぎ、家族みんなでびっくりしてしまいました。 

10月31日(火)

 ハロウィーンでした。小さな子供たちが魔女やテレビのキャラクターに変身して、家のドアを叩いて回り、お菓子をもらいます。あてなはカボチャのおばけに、心理はピーターパンに、侑理はフック船長になりました。わが家では50人分のお菓子を用意し、くじ引きも作りました。その晩、メイドに連れられた子供たちがどっと押し寄せたときは、

日本人以外の子供が来るとは思っていなかったのでびっくりしました。今年の流行はパワーレンジャー(ゴレンジャーのアメリカ版)の衣装だったようで、男の子はみんな赤レンジャーになっていました。