耳の話もうちょっと。
先週、耳垢の東西差の話をしたが、それがちょっと舌足らずだったので補足。
Wikipedia によれば、遺伝子上は乾燥しているほうが劣性、湿っている方が優性。
だが、先週、紹介した
北陸放送の
記事によれば、乾燥している耳垢を表現する語にはバリエーションがほとんどないが、湿っている方には色々な俚言形がある。これは、湿っている耳垢のほうが珍しいからである。
なんでそうなるかと言うと、縄文人の耳垢は湿っているのだが、後に入ってきた弥生人は乾燥している。やがて弥生人が本州を支配するようになって、全体としては乾燥した耳垢の人が多く、北海道東北や九州沖縄に湿った耳垢の人が多い、ということになったわけである。
湿った人の割合は 16% と言うから約 1/6、マイノリティであることに変わりはない。優性遺伝子なのに。
理屈の上では、遠い未来には湿った耳垢の人のほうがマジョリティになるはずである。気長に待たれたい。
優性なので、縄文人と弥生人の間にできた子供の耳垢は湿ったものになる。したがって、耳垢が湿っているからと言って、自分が縄文直系だということにはならない。
耳について調べていて最初に出てきたのは「
ちくわ耳」。これも例によって、俗語臭があるからすなわち方言であろうか、という記事。
人の話を聞かない、という意味であろうことは用意に推測できるし、語の雰囲気から言っても方言ではないと思われる。
ちくわって元々はどっかの地域の食い物じゃないのだろうかと思ったのだが、調べきれず。
一方、ご当地ものはたくさんあるらしい。
Wikipedia でいくつか紹介されているが、愛媛の「皮ちくわ」が旨そうだ。
先週、山がついていて掻き出すのに便利そうな (だが、使い方を間違えば効率的に耳垢を押し込んでしまう) 綿棒について触れたが、耳掻きという道具もある。山形では、「
耳くずり」という地域があるらしい。
その行為は「耳かき」だと思っていたが、「
耳ほり」という人もいるようだ。なんか、「掘る」って言うとちょっと大掛かりなものを連想してしまうが。
「
耳をくじる」という人もいるようだが、これと「
耳くずり」はなんだか形が似ている。
「耳火事」という言葉も見つかった。耳が真っ赤になることらしいのだが、今ひとつどういうものか分からない。病気の症状なのか、赤面しているのかも判然としない。
くわしくググってみたたが、方言だと思っている人の記事もいくつかある。だが決定打がない。
どうもゲームの用語と衝突しているらしく、追っていくとそればっかりになってくる。つまり症状としての「耳火事」を扱っている記事は数十件しかないようだ。
病気といえば、「
ほーっぱれかぜ」もヒットしている。難しく言うと「耳下腺炎」、平たく言えば「おたふく風邪」で、おそらく「頬腫れ風邪」であろう。
神奈川、茨城、福島の記事があるので関東近辺と言うことになろうか。
北海道の「
耳かけ」は、ヘッドホン型の防寒具。他所では「耳あて」とか言うだろうと思う。どうやらこれも「気づかない方言」のようである。
肉体を離れると、パンの耳というのがある。
NHK の「気になることば」の
記事によれば、関西ではこれを「
へた」という地域があるとのこと。
最後、「
耳ふたぎ」。
文字通り、耳をふさぐのだが、昔の風習である。
内容は、人が亡くなったとき、もう悲しいことを聞かなくていいように耳をふさぐとか、同年齢の人が亡くなった
ときだとか、そういう人たちだけで集まって酒食をともにすることだとか、耳をふさぐための餅をつくことだとか、それが人の死とは関係なく
年末の行事であるとか、色々である。
あれ以来、ビクビクしながら耳かきをしている。