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仮面ライダーにおける誤用



 「仮面ライダー クウガ」を見ていたら、ある登場人物が「捜査本部がこちらに移られたと聞いたので」と言った。
 分解すれば、(目的語節の) 主語が「捜査本部」であって人間ではないから、「移られた」と待遇表現を用いるのは誤りだ。「捜査本部の皆さんが」であればよい。

 これをどのレベルでの間違いと見るか。
 勿論、脚本家自身が、この表現を正しいと思っているのであれば、その人の間違いである。
 が、実はこの種の表現は頻繁に聞く。にも取り上げたが、「この本が皆様の心に残っていただければ幸いです」というようなのはよく耳にする。
 ということを踏まえた上の脚本であれば、実に自然な言葉運びであり、この作家はかなり優れた言語感覚の持ち主だ、ということになる。
 俺には、それを確認する術は無いが。

 蛇足だが、組織を人間扱いする表現は既に定着したようである。典型例としては、「松下電器さん」のような「会社名+さん」の形がある。
 俺はかなり気持ち悪いので絶対に使わないのだが、敬意が不足している、と考える人は少なくないようである。


 この番組では、怪人のことを「未確認生命体」と呼んでいる。「警察発表によれば、未確認生命体 24 号が」というように使われるわけだ。
 で、一般市民をこれを省略して「未確認」と呼んでいる。「また未確認が暴れてるんだってよ」というような具合。
 この感覚は見事だ。確かにそうなるだろうと思う。企画全体の、日本語に対するセンスには好感が持てる。(000507 加筆)


 とは言うものの、昔の事件を振り返るときなど「44 号のとき」「20 号が」などと、徹底して番号で呼んでいるのはいくらなんでも不自然ではないか、という気もしてきた。
 なんか、パソコンオタク、車オタクを連想させるものがある。
 今後の仮面ライダーは数字に強くないとダメなんだろうか。(001203 加筆)




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