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薬剤による爪の異常

昭和63年10月1日号 No.30

 

 多くの薬剤によって、爪の色調の変化や形態的な変化の生じることが報告されています。
その発症機序は薬剤の沈着や薬理学的な作用に基づくものが大部分ですが、発症機序の不明な例もあります。

{参考文献}医薬品ジャーナル 1988.7

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*テトラサイクリン系抗生物質

 爪甲剥離を生じる。症例の大多数は日光性皮膚炎が先行し、それに引き続いて爪甲剥離
を生じている。爪甲下に浸出液が貯留することがあり、剥離部は黄褐色調を示すことがあ
る。
ミノマイシンでは皮膚に着色を生じるとともに爪にも青灰色の着色を生じることがある。

*抗腫瘍剤

 全身与薬により、皮膚の色素沈着も増加するが、爪甲ではびまん性または縦走ときに
横走する帯状の褐色〜黒色の色素沈着を生じる。5-Fuでは爪の色素沈着の他に、指先に
疼痛を生じ、ついで爪甲剥離や爪甲の脱落を生じた報告もある。

 ブレオマイシンを爪甲周囲のイボの治療のために局注し、その後縦裂を伴う非薄な爪
甲を生じた例もある。

 メトトレキサートの大量使用後に爪周囲炎を生じ、ついで爪甲の脱落を生じた例もある

β遮断剤

 乾燥様皮疹の生ずることが報告され爪にも乾癬類似の変化を生じる。

 緑内障の治療にチモプトール点眼で6ヶ月後に全指爪甲に褐色のびまん性の色素沈着を生じ、薬剤を中止したところ爪甲基部から正常化したと報告されている。

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2000年追記

出典:日本薬剤師会雑誌 1997.8

 爪は目に付きやすく、そのために古くから爪の所見と病気に関しては真偽取り混ぜた説が流布されています。また全身性疾患に伴って爪の変化に生じることもよく知られています。

 爪半月部が乳白色に見えるのは新しく作られたばかりの爪甲は水分量が多いためです。
 半月部が大きくまた多く見えると健康であるとよく言われていますが、爪半月は幼児では出現率が低く、20歳頃に出現率は最高となり、50歳を過ぎると減少します。

 20歳ぐらいの男性で拇指(親指)の爪半月出現率は95%、小指で35%となっています。健康な男女200名を調べたところ7本以上の指に爪半月が認められた人は52%、全く爪半月を認めなかった人が3%であったと報告されています。

 手指を使いう機会が多ければ、後爪廓が押し下げられ爪半月が露出しやすくなります。爪半月の大きさ、出現率と健康状態は無関係だと言えます。

 日常しばしば認められる変化が爪甲点状白斑と爪甲点状凹窩です。どちらも爪母に小さな外傷が加わった結果生じます。爪母の一番奥に対する外傷は爪甲表面の凹窩となり、それよりも前方に対する外傷では白斑となります。外傷に伴う角化異常が原因で、一般に少数に認められる場合には放置して差し支えありません。

<薬剤と爪>

・色素沈着

 多くの抗癌剤により爪甲の褐色ないし暗褐色の色素が沈着します。
ミノマイシン、フェノチアジド、アジドチミジン、チモロルマレイトでも認められます。
テトラサイクリンで爪半月の黄染

・黄色爪症候群

 爪甲が分厚くなり、黄色調を帯びる疾患で通常はリンパ浮腫が原因で生じる疾患ですが、薬剤性の症例もあります。〜D−ペニシラミン、ブシラミン

・脆弱な爪

 エトレチナートやヒドロキシウレアにより爪甲は菲薄化し、脆く折れやすくなります。金製剤でも爪甲は脆弱化します。

・爪囲炎

 エトレチナートを多量に使用した場合に認められます。亜鉛欠乏状態でも生じます。

・爪甲剥離

 日光過敏を生じる薬剤により生じます。ドキシサイクリン、ミノマイシン、オフロキサシン、オクソラレンなど。カプトリルでも報告があります。

妊娠

 妊娠中に服用した薬剤により胎児の爪に変化を生じたことがあります。フェニトイン、テグレトール、アルコールなど


 ウエルネス運動

             出典:治療 2002.12

 ウエルネス(wellnes)の語源は「爽快」「心地よい」「元気」を意味する“well”です。

 ウエルネスは、病気=イルネス(illnes)の対称語として、単に病気でない状態=ヘルス(health)よりも積極的かつ総合的な考え方で、ライフスタイル、スピリチュアルに着目した新しい健康観です。1960年代にアメリカで生まれ発展してきました。

 ウエルネスとは、必ずしも病気ではない状態や、悩みのない状態を指すものではなく、年をとっていても、病気であっても、大きな悩みを抱えていても、人は健康になれるものです。なぜなら、私たちには自分自身の今の健康状態を十分に自覚し、改善していこうとする過程の中で生きることの価値を認め、より豊かで幸福な生活に自分を導いて行くことが出来るからです。

<大切なこと>

・たとえ病気や障害があったとしても「生きていて良かった」と思える人生
・心豊かに安心できる人々との繋がりの中で「自分らしく生きてきた」と思える人生
・人生の最後は「自分らしく死にたい」と願うこと。

 健康はより幸福で充実した人生を送るための手段の1つで、一人一人の主観的健康観に基づく個人の健康作りに対する取り組みと、生活基盤であるコミュニティの健全性を原点にするアプローチが「ウエルネス」です。

 2020年過ぎまで続く少子高齢化社会の急速な流れは、3つの大きなアンバランスを顕在化させていくと考えられています。それは「世代間」「地域間」「価値観」のアンバランスです。それらを解決し、活力ある豊かな健康文化社会実現のためには、個人の自立(QOL)と、社会に支援(QOC:クオリティ オブ コミュニティ)との結合が、時代のテーマだと考えられます。

 ウエルネス運動の基本は、国民一人一人のQOLの維持、向上とそれを支える社会基盤としてのQOCの持続と向上を図り「健康なライフスタイル作り」と「健康な地域環境作り」を目指すものです。

 財団法人日本ウエルネス協会は、厚生省(当時)所管の公益法人として昭和57年に運動、栄養、休養などを総合した健康生活・ウエルネスライフの普及、推進を図ることを目的として設立され、調査研究事業、国際交流事業、普及啓発事業、人材育成事業、出版事業などを柱に、「まちづくり」「ひとづくり」「ふれあいづくり」「ネットワークづくり」の事業を展開しています。

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健康とは(ルネ・デュボス)

 健康とは、病気を完全に排除することによって達成される幸福の状態ではなく、不完全な現実に対処しながら生きる価値を持ち、あまり苦痛でない生活を送れる状態

 病気から完全に解放されることを夢見るのは幻想

 豊かさや満足度は個人によって様々で、健康観も各々の価値観で決まります。

 「病気にならないように」というネガティブな施行ではなく、「いきいきと生きるために」というポジティブな生き方、考え方を大切にすることです。

 「健康が人生の目的ではなく、人生の目的を達成するために健康が大切」という社会の創出が、ウエルネス社会です。

生きていく力、幸せになる力、それは私たち自身の中にあるものなのです。

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