メインページへ

1996年8月15日号 205

医薬品副作用情報 No.138

 

 

1.G-CSF併用癌化学療法の間質性肺炎

2.アセナリンと喘息発作

3.アダラート(徐放剤を除く)の適正使用について〜前号参照

厚生省薬務局

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

1.G-CSF併用癌化学療法の間質性肺炎
 
 該当薬品〜グラン注、ノイトロジン注、ノイアップ注

 G−CSF製剤は、癌化学療法による好中球減少等に用いられていますが、これらの製剤を使用した患者での間質性肺炎の発症又は増悪した症例が報告されており、薬理作用から考えて間質性肺炎の発症、増悪に関与した可能性が考えられます。

 これらの製剤では、必要以上の好中球が増加しないよう定期的な血液検査を行い、投与量の減量や中止を速やかに行う必要があります。更に間質性肺炎についての慎重な観察と、異常が確認されたときに使用中止などの適切な処置を行うことが重要です。

<添付文書改訂>

重大な副作用〜間質性肺炎

 間質性肺炎が発現又は増悪することがあるので観察を十分に行い、発熱、咳嗽、呼吸困難及び胸部X線検査異常等が認められた場合には、与薬を中止し、副腎皮質ホルモン剤等の適切な処置を行うこと。


2.アセナリンと喘息発作

 アセナリンは消化管の運動を賦活調整する薬剤であるが、これまでに喘息発作、喘息症状の悪化等が認められた症例が3例報告されています。

 アセナリンの喘息発作の発現に関しては、過敏症の可能性と、消化管の平滑筋に選択的に作用する薬理作用が、気管支平滑筋にも影響を及ぼす可能性が考えられ、作用機序は明らかではないが、過敏症と喘息発作を発現する可能性の高い患者への使用に対して注意が必要です。

 胃食道逆流性疾患(GORD)は慢性喘息患者でかなり高頻度でみられる疾患であり、気管支拡張療法によって悪化、続発することもあります。こうした患者では、、GORD及び消化管の運動障害にアセナリンが併用され、基礎疾患である喘息、気管支痙攣を発現あるいは悪化した症例が2例(5症例)報告されています。

<添付文書改訂>

 禁忌〜過敏症の既往歴のある患者
 
 その他の副作用〜まれに喘息発作


  1996年8月15日号 205

医薬品副作用情報 No.138 厚生省薬務局



4.近視を対象としたエキシマレーザーに関する米国の最新情報について
 
 FDAは、近視矯正エキシマレーザーについて、一般に流布し、時として誤解を生じやすい宣伝の活動に対する紹介、苦情を受けています。

 エキシマレーザーは、強度の近視、遠視、乱視の矯正に対しては安全性、有効性が確認されていません。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 エキシマとは、アルゴン、クリプトン等の希ガスと塩素、フッ素などのハロゲンの混合ガスに高電圧放電を加えた際に発生するArK、XeFなどの励起状態でのみ存在する分子を言い、これが分解する時にレーザー光を発します。冠動脈形成術にはファイバー伝導が可能であるXeClレーザーを使用します。

*RK
Radial keratotomy

 エキシマレーザーが導入する前は、角膜にメスで切開を入れる方法(RK)が行われてきました。

 角膜周辺部に放射状に切開を入れ、角膜中止部のカーブを変化させ視力を改善する方法です。しかし、角膜の強度が低下するという欠点があり、眼圧の変化で角膜の形状が変化し、視力が不安定になります。

*PRK
Photorefractive keratectomy

 角膜の上皮細胞を除去した後、その下の角膜実質の表層にエキシマレーザーを照射し、角膜の形状を平坦化させ、後は上皮細胞が再生してくるのを待つ方法です。

*LASIK
Laser in situ keratomileusis

 角膜の上皮から実質の一部をマイクロケラトームという電動のメスを用い円形で弁状のふた(フラップ)を作り、それをめくっておいて、その下の実質をエキシマレーザーで削った後、フラップを元に戻す方法。LASIKはPRKに比べ、術後の疼痛がほとんど無く、視力回復が早い、矯正が比較的安定しているなど多くのメリットがあります。

 しかし、全ての人にこの方法が向いているわけではありません。時にはPRKの法が適切な場合もあります。

<LASIKに向いてない人>

 12ジオブター以上の強度近視、円錐角膜による不整乱視、角膜が極端に薄い、網膜疾患、白内障など眼の疾患、眼球が極端に小さい、膠原病などの全身疾患、妊娠中、20歳以下など

 また、年齢的に60歳代の人も手術は可能ですが、当然老眼になります。LASIKを行えば遠くはよく見えるようになりますが、近くはメガネが必要になります。

              出典:治療 2002.3


<<医学辞典>>

虫歯の治療としてのリプレイスメントメントセラピー


 虫歯の発症にミュータンスレンサ球菌が関与することが明らかにされています。
この菌は歯面に特殊なバイオフィルムを形成しています。

 口腔にはviridans streptococciと総称される常在細菌叢が存在していて、ミュータンスレンサ球菌は、viridans streptococciとcell-to-cellのコミュニケーションをとりながら共生しています。

 ミュータンスレンサ球菌以外の他のviridans streptococciは、病原性が低く、外来の病原体の口腔への定着を阻止するという好ましい役割を担っています。

 口腔と腸内の違いの1つは、歯という硬組織が存在することです。常に移動している腸内細菌とは違い、歯面のバイオフィルムに閉じ込められた細菌は移動もせず死にもせず仮死状態で潜んでいます。

<リプレスメントセラピー>

 悪玉菌を善玉菌と入れ替えて病気を治すという考え方

 腸内の乳酸菌ではなく、viridans streptococciを有効利用して病原細菌を駆逐しようという試みは、古くから試みられてきました。

 リプレイスメントメントセラピーに用いる細菌は、口腔に容易に定着している平易無害なviridans streptococciであることがのぞましく、このような観点でいうとS.mitisが筆頭に挙げられます。(S.mitisは腸内細菌ではありませんが広義では乳酸菌の仲間に入ります。)
 

 外用消毒剤などによる口腔全体を除菌する方法では、S.mitisのような有用な常在菌も同じに減少してしまう危険性があります。歯面局所にだけ外用消毒剤を塗布する方法(Dental Drug Delivery System:3DS)が推奨されています。

  出典:ファルマシア 2006.6


バイオシミラー医薬品

 バイオシミラー医薬品は、「国内で既に新有効成分含有医薬品として承認されたバイオテクノロジー応用医薬品と同等/同質の品質、安全性、有効性を持つ医薬品として異なる製造販売業者により開発される医薬品」と定義されています。

ジェネリック(後発品)との違い

 ジェネリックは低分子の化学薬品で添加物は異なったとしても成分はまったく同一です。これに対しバイオシミラー医薬品は分子量が何十万と大きく、糖鎖など複雑な構造を持ちます。先行バイオ企業の製造用生産株と同等の生産株を得て製造しても、先行バイオ医薬品と同一のものを製造することは不可能です。このため先行バイオ医薬品との同一性を追求するのではなく、高い類似性(similarity)を持つ医薬品を開発するというコンセプトになります。

   出典:日本病院薬剤師会雑誌 2011.5


オーソライズド・ジェネリック(AG)

 特許失効前に先発医薬品メーカーの許可を得て販売される後発医薬品

後発医薬品が上市されると先発医薬品の売り上げは大きく減少します。そのため、先発医薬品メーカーは売り上げ減少を最小限に食い止める為に、独占的な販売権を子会社に与え、特許失効前にAGを上市させます。

 これにより、後発医薬品メーカーの利益は半減するとも言われています。


メインページへ