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男性に与薬された胎児に及ぼす薬剤の影響

1994年4月15日号 No.150

 

 理論的には、薬剤の影響を受けた精子は受精能力を失うか、受精してもその卵は着床しなかったり、妊娠早期に流産して消失します。

 出生に至る可能性があるとすれば、染色体異常か遺伝子レベルの異常で、いわゆる催奇形のような形態的異常は発生しません。

 また薬剤の影響があるとすれば、精子形成期間はおよそ74日とされていますので、受精前約3ヶ月以内に与薬された薬剤です。

 射精の直前にはすでに精子となって蓄えられていますので受精の1〜2日前に服用した薬剤の影響はむしろ考えられません。

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 男性側に与薬された薬剤の影響に関するデータはあまりありませんが、女性側とは異なり、抗癌剤でさえ、胎児に及ぼす影響はほとんどないと考えられています。

 ただし次の薬剤では、催奇形が指摘されていますので注意して下さい。

チガソン(角化症治療剤)、コルヒチン錠(通風発作・高尿酸血症治療剤)、グリセオフルビン錠(皮膚糸状菌による白癬、黄癬、渦状癬治療剤)

{参考文献}薬事 1994.3


妊婦と喘息

出典:医薬ジャーナル 1998.12

* β2刺激剤

 吸入薬、内服薬、注射剤のいずれも胎児への影響は少ないと言われています。

* テオフィリン製剤

 胎児に対しては、新生児黄疸と関係があるとの報告がありますが、催奇形成など重篤な合併症の報告はみられず、比較的安全な薬剤と考えられています。

 しかし、妊婦の喘息に対する有効性については意外に否定的な報告が出されています。
アミノフィリンは発作の時間や入院期間の短縮には貢献しなかったと報告されています。

<軽症例の治療>

 軽症で間歇的な発作の妊婦ではβ2刺激剤の吸入だけで十分なことが多い。
β2刺激剤の吸入で症状が消失し、肺機能が正常化されれば、発作時のみの吸入を行う。

<中等症例の治療>

 週に3回以上β2刺激剤の吸入を必要とする場合は、抗炎症作用のある吸入薬、インタール、アルデシンを考慮すべきです。

 これらの薬剤の開始2〜4週後、症状やピークフローの改善がみられます。
ステロイド吸入の有効性についての報告は多い。
ステロイド吸入療法群では早産児、低出生体重児などの発生率が増加しなかったと報告されています。

 β2刺激剤の吸入は作用時間が4〜6時間と短いため、夜間の発作を抑え切れない場合があります。このような例では、テオフィリンの徐放製剤や作用時間の長いβ2刺激剤の内服を夜1回補助的に使うと効果的です。

 また、妊婦では、血清蛋白に結合したテオフィリン量が減少します。従って測定された血中濃度の中でフリーのテオフィリンの割合が多くなりますので、妊婦のテオフィリンの治療濃度域は通常より低い5〜12μg/mlがよいと言われています。

<重症例の治療>

単期間ステロイドの内服を行います。

プレドニンを40mg/日(1日1〜2回)を1週間使い、7〜14日かけて漸減、中止します。

 それでも発作が頻発する場合は、定期的なステロイド内服が必要になります。
大量、長期のステロイド内服は、母体への副作用に加えて胎児への悪影響の危険性が高くなります。
致死性の発作を起こすような重症喘息に限り、大量ステロイドの長期内服が考慮されます。


<治療>

軽症 :発作が週3回未満    発作時のみβ2刺激剤の吸入
    夜間の発作が月2回未満
肺機能:80%以上

中等症:発作が週3回以上    インタールorステロイド吸入にテオフィリンを加える
肺機能:60〜80%

重症 :発作は毎日で日常生活が制限される。 ステロイドの内服
                    (発作活動期のみ短期間毎日あるいは隔日)
肺機能:60%以下

<実例Q&A>

妊婦の喘息に使える薬は

Q:妊娠13週目テオドール内服アルデシン、ベロテック吸入をしても大丈夫かドクターはまあいいでしょうと頼りなげに答えられたので調べてほしい。

A:テオドールで人による催奇形性の報告はなく(動物実験であり)先天性心奇形が生じているが、因果関係が明かでない。13週目で危険な時期も過ぎておられ、喘息の発作で流産も有り得ることもあり一応大丈夫と答える。アルデシン、ベロテックは内服よりずっと影響が少ないと考えられるが、必ずうがいをするようにと答える。悪い時期にテオドールとベロテックで対処しアルデシンは少し控えますといわれていた。

参考文献:実践妊娠と薬


妊婦(NSAIDs)

*ランツジール錠: 与薬しないこと。 授乳中の婦人には授乳を中止させる。

*インフリー :与薬しないこと。 PFC、胎児の動脈管収縮、動脈管開存症、胎児腎不全、胎児腸穿孔、羊水過少症

妊娠末期:早期出産した新生児に壊死性腸炎の発生率増加母乳中へ移行

<妊娠末期では禁忌>

*ロキソニン錠: 有益性 分娩遅延妊娠末期で、胎児の動脈管収縮乳汁へ移行
*ナイキサン :有益性 安全性は確立していない。母乳中へ移行分娩遅延(周産期)、胎児の動脈管収縮(末期)
パラミジン 有益性 妊娠末期の婦人及び新生児には与薬しないことが望ましい。弱い胎仔の動脈管収縮が報告されている
*スルガム錠: 有益性 安全性は確立していない。妊娠末期で、分娩遅延、胎児の動脈管収縮母乳中へ移行

<妊娠末期では与薬しないことが望ましい>

*ボルタレン坐薬・錠: 有益性 安全性は確立していない。妊娠末期にPFC、胎児(動物)の動脈管収縮子宮収縮を抑制、母乳へ移行

*ボルタレンSR: 有益性 妊娠末期には与薬しないことが望ましい。子宮収縮を抑制することがある。母乳中へ移行

*ポンタールシロップ: 有益性 安全性は確立していない。類薬でPFC母乳中へ

*小児用バッファリン:有益性 催奇形性(動物)、新生児(ヒト)に出血異常、妊娠末期で弱い胎児の動脈管収縮、母乳中へ移行

*アスピリン: 有益性 動物で催奇形性、人で新生児に出血異常動物:弱い胎児の動脈管収縮

*ソランタール細粒: 有益性 安全性は確立していない。母乳中へ移行

*ミナルフェン錠: 有益性 安全性は確立していない。妊娠末期では胎児の動脈管収縮乳汁へ移行

*メナミン坐薬: 有益性 動物で分娩遅延、妊娠末期で胎児の動脈管収縮(PFC)、乳汁中へ移行(動物)
*フロベン顆粒: 有益性 妊婦、授乳:安全性は確立していない。動物、妊娠末期:分娩遅延、胎児の動脈管収縮〜末期には与薬しないことが望ましい。

*フェルデンサポジトリ: 有益性 安全性は確立していない。周産期で分娩遅延(妊娠末期には与薬しない)動物:胎児の動脈管収縮、母乳中へ移行

*プランサス: 有益性 安全性は確立していない。妊娠末期:胎児の動脈管収縮

*セデスG: 有益性 (類薬)スルピリンで催奇形性、胎児の動脈管収縮乳汁移行で乳児にメトヘモグロビン血症

*ハイペン錠 有益性 安全性は確立していない。動物:分娩障害、妊娠末期で胎児の動脈管収縮母乳中へ移行

塩基性(ソランタール、イソキサール)でも妊婦に対する安全性は確立していません。危険性<有益性の場合のみ


妊婦(化学療法剤)

第一選択剤としては、ペニシリン系、セフェム系等のβラクタム剤が、次いでマクロライド系が適しています。

・アミノグリコシド系は、第8脳神経障害で慎重
・テトラサイクリン系は、骨発育不全、歯牙の着色、先天性白内障などの催奇形性が報告されているので禁忌
・ニューキノロン剤は、すべて禁忌

ケフラール 有益性 羊水内に移行、母乳中への移行は極めて低い(婦人科で妊婦に使用例あり)

*有益性 安全性は確立していない。:セフテム,メイアクト,トミロン,オラスポアDS,,バナン錠,セフゾン
*ユナシン〜 有益性 催奇形性報告あり。

*ホスミシン錠 与薬しないことが望ましい。 安全性は確立していない。

*ルリッド錠 有益性 胎児の外表異常、骨格異常の発現頻度高母乳中へ移行
*クラリシッド錠 有益性 毒性が現れる。高用量において,胎児毒性(心血管系の異常,口蓋裂,発育遅延等)、ヒト母乳中へ移行
*ミノマイシン 有益性 妊娠後半期:胎児に一過性の骨発育不全、歯牙の着色、エナメル質形成不全母乳へ移行〜中止させること。
*リファジン 有益性 催奇形性報告、母乳へ移行
*フルビスタチンUF 与薬しないこと〜与薬中の患者には避妊させること。また少なくとも与薬中止後、婦人では、1ヵ月間、男子では6ヵ月間は避妊させること。

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