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本態性振戦

1994年2月1日号 No.145

 

 本態性振戦は日常しばしば見られます。この振戦は家族内発症が見られることがあり、
その時には家族性振戦と呼ばれています。

 進行性神経疾患とも異なることから良性振戦とも呼ばれています。

 発症は40歳以降に多く見られ、10歳20歳代でも見られます。

 特徴は姿位振戦、及び動作時振戦です。
上肢を伸展した時最も強く現れ、運動時に減弱し、運動の終了時にまた増強します。

 安静時に出現しない点が、パーキンソン病などに見られる静止振戦とは異なります。

 振戦の出現部位は一側性に出現することが最も多く、ときには頸部、眼瞼、口唇、顎、下肢などにも現れます。良性とも呼ばれていますが、社会生活で支障を来すことも多く、転職や退職を強いられることがしばしば見られます。

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<治療>

 治療薬としてまず第1に選択されるのは、インデラルなどのβ遮断剤です。作用機序はβ2受容体によるものとされています。

 β2受容体は気管支、血管、筋紡錘などに見られ、β遮断剤の振戦抑制作用は内因性交感神経刺激作用(ISA)が小さく膜安定作用が大きい薬剤ほど効果が期待できます。

*インデラル:1日30〜90mgが適当とされている。
 うっ血性心不全、AVブロック、気管支喘息では禁忌
 糖尿病では注意が必要

*アルマール:1日30mgで有効と言われている。

副作用は徐脈、血圧低下、めまい、ふらつき、?度AVブロック、頭重患、不眠など

*その他:シンメトレル、マイソリン、フェノバルビタールなどでも有効であったという報告があります。またアルコールは一過性に本態性振戦を軽減することが知られています。

{参考文献}医薬ジャーナル 1994.3


<<用語辞典>>

サイロイド・ストーム

甲状腺クリーゼ

出典:日本内科学会雑誌 1999.10

 甲状腺機能亢進症患者で、種々の身体的あるいは精神的ストレスが誘因となって、甲状腺中毒症状が極度に増幅され、代償不全に陥った状態。

<誘因>

 感染症、甲状腺切除術およびその他の手術、分娩、外傷、放射線ヨード治療
抗甲状腺剤の中止、脳血管障害、糖尿病性ケトアシドーシス、精神的ストレス

<治療>

*呼吸・循環の管理

 高熱による発汗・不感蒸泄の増加、下痢・嘔吐による体液の喪失には、十分な補液(100〜200ml/h)と電解質、グルコース、ビタミン(特にB群)の補給

 うっ血性心不全を伴う場合は、適切な呼吸管理

 ジゴキシンと利尿剤を用いますが、薬物代謝の亢進と分布容量の増加から、ジゴキシンの維持量は通常よりも多くなります。心房細動にはワーファリン錠を用います。

 頻脈以外の興奮、振戦、発汗などの症状も過剰なβ刺激によるものなので、心不全がなければβ遮断剤が症状の改善に有効です。気管支喘息のためにβ遮断剤が使用できない場合はレセルピンで代用します。

* 解熱剤(NSAIDs)は、その高い蛋白結合率から甲状腺ホルモンのTBGからの遊離を促進するおそれがありますが、緊急時には用いる場合もあります。クーリング・ブランケット、アイスパック、冷却輸液などを用いる物理的に速やかに高体温を是正する方法もあります。

* 精神症状は治療効果のマーカーとなりますので、鎮静は必要最小限にし、高度の興奮や痙攣がある場合はジアゼパム5mgを静注します。

* コルチゾール代謝の亢進により、大きなストレスの存在に対して相対的な副腎皮質不全の状態にあると考えられますので、ヒドロコルチゾン100mg/8h毎IVで開始します。

<甲状腺中毒症に対する治療>

PTU:プロピルチオウライル(チウラジール錠)200mg4h毎あるいはMMI:メルカゾール錠20mg4h毎〜好中球減少や肝障害の既往の有る場合は除く。

 末梢でT4→T3変換抑制作用を持つPTUが推奨されますが、ホルモン合成抑制作用自体はMMIの方がはるかに強力ですので、どちらでも良いとされています。

*濾胞内ホルモンの血中への分泌を抑制

Wolff-Chaikoff効果:大量の無機ヨードにより、ヨードの有機化を阻止し、またホルモン分泌もブロックします。一般にルゴール液として30滴(約2ml)を分3で服用させます。

ルゴール液〜I2 50mg/ml、KI100mg/mlで調整した場合 ヨード含有量は125mg/ml

 新たなホルモン合成への利用を防ぐために抗甲状腺剤服用後1時間に続けて服用
 
ヨード造影剤でも有効。
ヨード過敏症が有る場合は炭酸リチウムで代用300mg 6h毎経口で開始し、血中濃度を1mEq/lに維持

* 甲状腺ホルモンの除去

 T4の血中半減期は数日と長く、物理的ホルモン除去は速効性の期待できる方法です。
薬物治療が奏功しない場合、血漿交換療法(5%アルブミン液)を行います。

 甲状腺機能が正常化した後に、甲状腺切除術あるいは放射性ヨード治療を行います。

<基礎疾患に対する治療>

 約1/3の例では誘因が不明ですが、甲状腺クリーゼの誘因として感染症の頻度が最も高いと思われます。

 胸部X線、喀痰、尿、血液培養などで感染源の検索を積極的に行うとともに、感染の徴候が有れば広域スペクトラム抗生物質による経験的初期治療を開始します。


FT4・FT3

 FT4はフリーのチロキシン、FT3はフリーのトリヨードチロキシンですがバセドウ病で上昇します。
バセドウ病は女性に多くみられ、抗甲状腺剤メルカゾール錠やチウラジール錠(胎盤通過性が低い)が用いられます。

 副作用チェックにFT4・FT3が必要となります。

 抗甲状腺剤の過量は甲状腺機能低下となりますので、機能が正常化したときに用量を減らしていないと、甲状腺腫大などの副作用を生じます。また、減量に際し、急激な減量は筋肉障害などを起こす恐れがあります。

 甲状腺機能亢進時の薬剤の体内動態変化で特に注意が必要なのはインデラル、ジゴキシン、ワーファリン、インスリンなどで、肝代謝亢進、吸収・分布増加などプラス・マイナス両要因があるので用量の設定には注意が必要となります。また食事ではヨード含有食品摂取制限などの指導も必要です。


<医学辞典>

歯の漂白

過ホウ酸ナトリウム

 歯が変色した場合に、歯質を白くするために過ホウ酸ナトリウムが用いられます。

 熱触媒法では 30%-H2O2が、walking bleach 法では 30%-H2O2 と過ホウ酸ナトリウムが用いられます。


ユナニー医学
unani medicine

 インド、中央アジア、北アフリカ諸国の伝統医学で、中国伝統医学やアーユル・ヴェーダ医学とともに世界3大伝統医学の1つ。

 アラビア語でユナニーはギリシャの意味で、古代ギリシャ医学が起源といわれています。

 生理や病理的な考え方はヒポクラテスらの4体液説や4元素説を継承しており、食生活や睡眠といった生活習慣や生活環境が病気の原因と考え、それらの改善による病気予防を目指すとともに、自然治癒を重視して抵抗力を回復させることが治療の基本になっています。

 ケラ実、カミツレ、ザクロ、乳香などの地中海や中近東地域の生薬のほか、センナ、甘草、ニクズクなど世界各地の生薬が用いられます。

   出典:ファルマシア 2007.12
 

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