HS病院薬剤部発行

薬剤ニュース

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  1994年

8月1日号

NO.157

 

光線過敏症を起こす可能性のある薬剤

     光線過敏症は様々な原因によりひき起こされます。薬剤の全身与薬あるいは、外用後に光照射を受けることにより薬剤性光線過敏症が発症する場合もあります。

 原因薬剤としては従来よりフェノチアジン系向精神薬やチアジド系降圧利尿剤、スルホニル尿素系血糖降下剤などが知られていましたが、最近NSAIDs(消炎鎮痛剤)やニュ−キノロン系抗菌剤による報告が増えてきています。

   {参考文献}大阪府薬雑誌 Vol.45 No7 1994

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 薬剤性光線過敏症の発症機序は光毒性反応と光アレルギ−反応に大別されます。光毒性反応では十分量の原因物質が皮膚に存在して十分量の光照射を受けた場合に第一回目の光暴露で発症するのに対し、光アレルギ−性反応では一定の潜伏期間(2日〜2週間)を経て発症し、類似化合物との交叉反応を起 こすことが知られています。

 光線過敏症を予防する為に、原因となり得る薬剤を与薬する際には、長時間強い光線を浴びる日光浴、海水浴を避けることや、万一普通でない日焼け症状がみられた場合には直ちに主治医に相談するなどのアドバイスをしておくことが必要です。

 光線過敏症が発現してしまった場合には、原因と思われる薬剤を中止し日光を遮断することで約2週間で症状はおさまりますが、その間、日中の外出を避け止むを得ぬ場合には長袖の衣類、帽子、手袋等を着用し、超波長紫外線(UVA)まで遮光するサンスクリ−ンを塗布するなどを行います。

 また薬剤のみならずセロリ、ドクダミ、クロレラなどの食品や、化粧品、そしてサンスクリ−ンそのものによっても光線過敏症を起こす可能性があることを念頭においておくことが必要です。

光線過敏症を起こす可能性のある薬剤  

==特に注意を要するもの==

 抗てんかん剤:  テグレト−ル

 筋弛緩剤:    アロフト

 抗ヒスタミン剤: ニポラジン

ニュ−キノロン系抗菌剤:スパラ、ロメバクト、シプロキサン、トスキサシン

 利尿剤:フルイトラン

 抗癌剤:サンフラ−ルS、UFT、ルナコ−ル

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[使用上の注意改訂]

スパラ錠(ニュ−キノロン系抗菌剤)

本剤を与薬される際には、日光暴露をできるだけ避けることを指導すること。光線過敏症、発疹等の皮膚症状があらわれた場合には、服薬を中止し、適切な処置を行うこと。


1999年6月15日号

光線過敏症の記載のある薬(当院採用の内服薬)


 下記の薬の添付文書には光線過敏症の記載がありますので、ご注意下さい。

ボルタレン・SR、ミグリステン、ナイキサン、スルガム、ハイペン
シンメトレル、コントミン散、メレリル、アナフラニール、ルジオミール
セレネース、テグレトール、ダントリウム、アロフト、キニジン
フルイトラン、ダイアモックス、ラシックス、タナトリル、レニベース
ロンゲス、カルスロット、ニバジール、ノルモナール、アダラート・L
ノルバスク、コニール、ヘルベッサーR、ペルジピン

メバロチン、オメプラール、セレスタミン、ボンゾール、インクレミンシロップ
フェロミア、プレタール、ユリノーム、ダオニール、グリミクロン
メソトレキセート、5−FU、ヤマフール、フルツロン、サンフラールS
ユーエフティ・E顆粒、オダイン、ニポラジン、ポララミン、リドーラ
ミノマイシン、サラゾピリン、バクタ
メガロシン、クラビット、シプロキサン、スパラ

*単回投与が可能な薬剤では夕方1回の与薬が望ましいとされています。

*過敏症の症状、発赤、浮腫、皮疹等が認められたら、それ以上の服用は
 続けずに、すぐに医師・薬剤師に連絡するよう伝えておくことも大切です。


光線過敏症の作用機序 

 光線過敏性薬剤が光アレルギー性反応を起こす機序はいまだ明確ではありませんが、多くの薬剤は光ハプテンとしての性格すなわち紫外線照射下で近傍の蛋白と共有結合し完全抗原となるという性質を持っているために起こると考えられます。

 この蛋白との光結合能はニューキノロン剤で確認されており、光線過敏性薬剤に共通した特性と思われます。

・光毒性反応〜発赤(紅斑)、浮腫に始まり重い日焼け症状
 薬物の薬理あるいは毒作用の結果であるため、個体の素因やアレルギー
 機序とは無関係に光毒性のある薬物が与薬された状態で十分量の日光に
 当たれば、誰にでも生じうる反応

・光アレルギー反応〜湿疹、多形性滲出性紅斑、偏平苔癬など多様な症状
 を呈する。アレルギー性に感作された一部の個体のみに発症し、皮膚症
 状は用量や日光照射量とは無関係に発現する。

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光アレルギー

出典:ファルマメディカ 1996.5

 光線過敏性薬剤が光アレルギー性反応を起こす機序はいまだ明確ではありませんが、多くの薬剤は光ハプテンとしての性格、すなわち紫外線照射下で近傍の蛋白と共有結合し完全抗原となるという性質を持っているために起こる考えられています。

 この蛋白との光結合能はアロフト錠、ニューキノロン剤で確認されており、光線過敏性薬剤に共通した特性と思われます。

光毒性

スパラ>ロメバクト、エノキサシン>タリビット、シプロキサン、ノフロ

 薬剤性光線過敏症は光毒性反応と光アレルギー性反応が密接に関わり合って生ずると考えられ、その機序を論ずる際、両者を同時に考えていく必要があります。

 薬剤によってはスパラのように光毒性反応のみが前面に出るものもありますが、光アレルギー性反応が主に見られる薬剤では、その成立機序に光毒性反応も関わっていることが多く見受けられます。

 例えばある光線過敏性薬剤が化学構造上光感受性のある部位を有しており、紫外線照射によりフリーラジカルが形成され、光毒性反応に結びつきます。しかし一方では、近傍に蛋白が存在すれば、外れた部分に蛋白の共有結合が起こり、完全抗原の形成、すなわち光アレルギー性反応を生ずる原因となります。


<光アレルギーの診断>

    出典:医薬ジャーナル 1998.1

1.薬剤摂取歴、日光曝露、皮疹出現の3者関連の有無
2.薬剤中止と皮疹の消退との関係の有無
3.光線テスト
UVA、UVBについてMED(下記)の測定
4.光パッチテスト(光貼付試験:下記)
5.内服照射テスト(下記)

MED(最少紅斑量)


 紫外線に対する感受性の基準
 UVA(長波長赤外線:320〜400nm)、UVB(中波長赤外線)のそれぞれについて、背部や腹部などは平常は日光曝露を受けない部分に一定時間、一定の面積に照射を行い、24時間後に紅斑が生じる最少量の光線照射量

 光線テストは、いくつかの異なった時間の照射を行い、正常人のMEDと比較して光線に対して過敏であるかどうかを調べます。

光貼付試験

 関連性のある薬を背部に貼付し、1〜2日後に光線を照射し反応を見る試験
 照射側と遮光側ともに反応のある場合は接触アレルギーと診断し、照射側のみ反応が強い場合で光り毒性を否定できる場合に光り接触アレルギーと診断できます。

 内服照射テスト

 関連する薬を実際に復湯させて光線に曝露させ、皮膚に反応が現れるかどうか見るもの。

<鑑別診断>

 慢性日光性皮膚炎、光接触皮膚炎、露出部の接触皮膚炎、晩発性皮膚ポルフィリン症、
 日光曝露により悪化するもの(脂漏性湿疹、アトピー性皮膚炎、酒さ、エリテマトーデスなど)

 

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