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悪性高熱症

1993年12月15日号 No.143

   悪性高熱症は死亡率の高い麻酔合併症で、典型例では40°C異常の高熱、筋強直、アシドーシス、交換神経刺激による頻脈、高血圧、筋破壊によるミオグロビン尿、CPK、LDH等の酵素逸脱等が急激に起こり、適切に処置をしなければ死に至ることもあります。

 諸症状は細胞内カルシウムの異常上昇で解説でき、特異的な治療薬として筋小胞体からのカルシウム遊離を抑制するダントリウムが有効です。近縁疾患として悪性症候群、労作性熱射病、筋疾患等があります。

{参考文献}医薬ジャーナル 1993.11

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 本邦での悪性高熱症の発生は、1974〜1991年までに263例が報告されています。毎年10例前後の発症があり、死亡率は1960年代には80%の高率でしたが、漸時減少して現在では15%前後です。

 性差は男女比3:1で男性に多く、年齢的には高齢者に少なく、10歳未満が最多となっています。ただ全身麻酔の件数の年齢分布が10歳未満と40〜60歳にピークがあることから、10〜20歳にピークがあるとも考えられます。

 誘因となる麻酔薬はハロタンが最も多く(70%)、次いでエトレン(20%)、セボフレン(3例)と報告されています。

<治療>〜麻酔中に悪性高熱症が疑われたら、誘因となる薬物を中止し手術も中止するようにする。

発熱:直ちに強力な冷却を行う。表面冷却では不十分なことが多いので、冷却した生食による術野、胃内等の体腔からの冷却や、可能であれば体循環装置を用いて冷却する。

筋強直:ダントリウム注が有効

その他:不整脈には、アミサリン(キシロカインは不適)、アシドーシスにはメイロン、ミオグロビン尿には大量の輸液と利尿剤、代謝亢進による酸素消費量、炭酸ガス産生量の増加には、低酸素血症または高炭酸ガス血症を招くので100%酸素で換気を行います。


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ハロタン(吸入麻酔)による肝障害

昭和62年12月1日号 No.12


医薬品副作用情報 No.87

 全身吸入麻酔剤ハロタン(フローセン)による肝障害は、すでに添付文書にも記載されていますが、英国のCSM(Committee on Safty of Medicines)が1964〜1987年の間に受理した報告を分析すると、肝障害が発現した82%が2回以上ハロタン麻酔を受けており、その内75%は28日以内に2回以上麻酔を受けていました。

 また、前回の麻酔から28日以上経過した後に、反復して麻酔を受けた場合でも63%に黄疸が発現するとされています。


  添付文書改定:少なくとも3ヵ月以内の反復使用は避けることが望ましい。

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<医学用語辞典>

MAC
minimum alveolar concentration
最小肺胞濃度

全身吸入麻酔剤の指標
皮膚切開を加えたとき、半数のヒトで体動が認められない1気圧(760mmHg)下での肺胞濃度

この指標は肺胞濃度脳内濃度が平衡状態にあることを前提にしており、各種吸入麻酔薬の強さを比較検討する場合に重要な指標です。

MAC BAR
blocking of adrenergic responses
50%のヒトが皮膚切開に際し、交感神経反応を示さない肺胞濃度

MACTI
tracheal intubation
50%のヒトが気管挿管に際し、体動と咳を示さない肺胞濃度

MACLMI
laryngeal masc insertion
ラリンジアルマスク(ラリンジャールマスク:気道確保に使用)を挿入する際の指標

MACawake
麻酔からの覚醒に際し、50%のヒトが簡単な指示命令に応答できる時の肺胞濃度

AD95
95%のヒトが皮膚切開に際し、体動を示さない最小肺胞濃度


キチン
chitin

キトサン
chitosan

 キチンはカニ、エビ、貝類等甲殻類や昆虫類の甲羅に含まれる成分(キノコ類にも含まれている)です。

 キトサンはキチンを化学的に処理することで精製される、セルロースに似たポリマーです。
食物繊維として、食物中のコレステロール吸着による吸収阻害作用、体重減少効果や降圧効果に期待がもたれています。さらに人工皮膚の材料としての有用性も検討されています。

 海外での検討では、脂質改善作用(LDLコレステロール低下作用)では有効性が報告されていますが、体重減少作用は否定されています。

 キチン・キトサンは唯一の動物性由来の食物繊維であることから、最近注目されています。


       出典:治療 2002.1等

キチン・キトサンで期待されている効用

・コレステロール沈着除去による循環器疾患の予防
・血管を健康に保つ、血栓の溶解
・肝臓機能強化作用
・抗ガン作用
・免疫細胞の活性化作用
・腸内有用細菌を増加する働き
・重金属による人体の汚染を防止する

<キチン・キトサンの特徴>

抗菌性(食品の防腐剤・人工皮膚等をいいます)
保湿性(ヒアルロン酸の1.5倍〜2倍、だからシャンプーリンス・化粧品に使われる)
生体親和性が高い(人間とキトサンの最小分子構造が同じ)
凝集性(水中での異物を固める性質キーレート化)


 40年前頃までは土壌の中に「キチン・キトサン」が豊富にふくまれ作物を通じて人間の健康維持に しかし現在では農薬や化学肥料等により昆虫類が死滅し「キトサン」が土壌の中から消え始め自然に摂取することがすくなくなり、昔は無かった病気が非常に多くなっております。「キトサン」は空気、水、太陽と同じように健康には欠かすことのできない大切な物質です。役立っていたと考える説もあります。


プロテインチップ

 疾病や薬剤によって生じる生体側の様々な応答の中には、疾患や薬効発現の程度を知る上で有用な、いわゆるバイオマーカーとしての蛋白質の発現量変化が数多く含まれています。
 しかし、従来の蛋白質分析技術(二次元電気絵移動法等)では、これらを網羅的に解析することは極めて困難でした。

 近年、開発されたプロテインチップは、血液や尿などの生体資料を直接用いて、多検体間、あるいは様々な条件下での蛋白質の発現パターンを網羅的に検出し、比較することのできる画期的なツールです。

 その本体は表面に化学的修飾を施してある1?×8?大のごく小さい金属板(チップ)です。プロテインチップは通常、時間飛行型の質量分析計(TOF-MS)と組み合わせて用いられ、チップ錠に補足された蛋白質の分子量と発現量の情報を同時に得ることができます。

 このプロテインチップの手法は、卵巣癌や前立腺癌ついて、従来の腫瘍マーカーによる診断法をはるかに上回る検査法として臨床に応用され始めているほか、新薬開発の面でもその活躍が期待されています。

 出典:日本病院薬剤師会雑誌 2004.9 Do You Know

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