カルシウム拮抗剤による歯肉増殖
1993年11月15日号 No.141
カルシウム拮抗剤の副作用として、歯肉増殖が出現することがあります。口腔環境の劣化のため摂食障害を来すことがあり、近年しばしば問題にされています。
{参考文献}医薬品ジャーナル 1993.10 |
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1984年から1992年までの期間に報告された文献的統計観察結果
1.中年男性に多く、発生率はアダラートで9.0%、ヘルベッサーで2.1%でした。
2.歯肉増殖の発生と、・薬剤服用期間 ・カルシウム拮抗剤の1日服用量 ・口内炎 ・口腔清掃状態
との関係は明らかではなかった。
3.歯肉増殖症患者には、歯肉炎が多かった。
4.糖尿病合併者は歯肉増殖症を起こしやすく、カルシウム拮抗剤服用に際しては注意を要する。
5.ブラッシングや除石処置では完全な治癒は認められず、歯肉切除では再発が多かった。
カルシウム拮抗剤の服用中止・変更は効果的であり、歯周囲炎処置と併用するとより効果的であった。
<歯肉増殖の発生機序>
一般に歯肉増殖の発生機序は次のように推定されています。
線維芽細胞にはコラーゲンの合成、分解作用があり、その分解にはCa++イオンが必要です。カルシウム拮抗剤はCa++イオンの細胞内流入を阻害するため、コラーゲンをはじめとする細胞外其質の分解が減少し、細胞外其質の蓄積が起こり、歯肉炎と重なり合った増殖を生じます。
糖尿病、口腔清掃不良が補助的な役割を果たすという考えです。
ブラウンバッグ運動とは
〜〜米国での持参薬管理〜〜
2010年7月1日号 No.524
ブラウンバッグ運動は、患者が日常的に服用している処方薬、OTC薬、健康食品・サプリメントを薬剤師に確認してもらうことによって、服用薬などに関する患者の理解を深めるとともに、その適正使用を推進する活動のことです。
1980年代にこの運動が始まった時、買い物に使う茶色い紙袋に服用薬などを入れて薬局に持参するよう薬剤師が説明したことから「ブラウンバッグ運動」という名がついたといわれています。
{参考文献} 薬事 2010.6
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薬剤師が患者の持参薬を確認することによって、相互作用や重複投与、過量投与、不適切もしくは不要な薬剤使用、服薬アドヒアランスの改善もしくは、それらに伴う避けられる危険性の回避などが期待されます。また、病気や服用薬などについて不安や疑問を持つ患者とのコミュニケーションツールとして活用でき、
薬剤師からのアドバイスやかかりつけ薬局を持つことの重要性を認識してもらうことにもつながります。
米国では、このブラウンバッグ運動が地域活動の一環として数多くの自治体や団体で実施されています。この運動では、患者に広く呼びかけるためのポスターやパンフレット、服用薬チェックの実施者や活動コーディネーターを対象にした実施マニュアル、実施スケジュールや記録用紙(服用薬チェックリスト)などを提供しています。
この運動を通じて患者から直接確認した服用薬と薬局の調剤記録がどの程度一致しているかについて調査が行われ、その結果、調剤記録との不一致は76%の患者で認められました。
その内容は、下記の通りです。
・調剤されていない薬を服用していた。51%
・調剤された薬を服用していない。 29%
・服用量が違っていた。 20%
などが認められました。(対象545名)
また別の調査では、処方薬を5剤以上同時に服用している多剤併用(29%)、OTC薬(42%)やサプリメント(49%)との併用を行っている中高齢者が多く、25人に1人の割合で薬物間相互作用の危険に曝されていることが明らかになりました。
日本(広島)でも同様な調査(対象508名)を行ったところ確認できた問題として、ロキソニン錠とその他のNSAIDs、頭痛薬と風邪薬の併用(OTC薬を含むことが多い)、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の過量、多数のサプリメントの同時服用、複雑な薬剤使用(骨粗鬆症治療薬や糖尿病治療薬)などが挙げられています。
横紋筋融解症の恐れがあるとして原則禁忌となっているベザフィブラートとHMG−CoA還元酵素阻害薬の併用も2例確認されました。
その他、添付文書情報をもとに併用注意が疑われた例が358件、処方同士の併用注意が332件、処方薬とOTCの併用注意が59件、OTC薬同士に併用注意が11件確認されました。
領域別では睡眠・不安、高血圧、糖尿病の治療域で併用注意の薬が多く確認されました。
ブラウンバック運動は薬剤師と患者のコミュニケーションを手助けする有用な手段であり、患者自身がその重要性を認識して医薬品の適正使用の推進に役立つと思われます。
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持参薬は宝の山
入院患者の約70%が持参薬を有し、そのうち90%が継続しています。
持参薬は患者情報の「宝の山」です。患者一人一人持参薬の管理の仕方(きちっとピルボックスに日付ごとに小分けしているなど)、残薬数、残薬数の薬剤ごとのばらつきなどから、患者が几帳面な性格かといったことや、生活リズム、治療への関心度などを推測することができます。
これらの推測はアドヒアランスを確保するためのカウンセリングに欠かせない情報です。すなわち患者と良好なコミュニケーションをとり、持参薬の安全管理も含めた患者が服薬意義を理解し、主体的に薬物療法を遵守するための支援をすることが重要です。
持参薬の現状として
1)複数の施設から処方された薬を1つの袋に詰め込んでいるため、どこの調剤薬局でいつ処方したか不明。
2)薬袋に用法指示が明確に記載されていない。
3)同じ薬剤が複数の薬袋に入っている。
4)薬袋に記載されている用法用量から算出する残薬数と合致しない。
5)薬の残薬数と服用できる日数が異なっている。
6)薬の飲み方を患者が理解していない。
7)患者の裁量で服用している。
などの問題があり、放置しておくと重大な医療事故の発現が危惧されます。
{参考文献} 薬事 2010.6
木酢液
出典:東邦医薬ニュース 2000.5
木酢液とは、木炭を製造する際に抽出される黒褐色で特有の燻臭を有する液体です。明治以降、盛んに行われた木材乾留業の副産物として得られる木酢液からメチルアルコールや酢酸が製造されていましたが、現在は合成法によりその姿は見られなくなりました。
木酢液は、消臭・殺菌・防腐作用を持つことから、消臭剤や防腐剤、犬・猫・害虫の忌避剤、農業用の土壌消毒剤などに利用されてきました。また、古くから除菌作用、消炎作用、鎮痒作用を期待して民間療法として使用されてきました。
しかし、木酢液は医薬品でないため、人体への使用には十分な注意が必要です。
<木酢液の組成>
有機化合物(約10〜20%)
脂肪酸、ラクトン:蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、バレロラクトン、カプロン酸など
アルコール:メチルアルコール、アリルアルコールなど
エステル:酢酸メチル、蟻酸メチルなど
アルデヒド:ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなど
ケトン:アセトン、ジエチルケトン、エチルメチルケトンなど
塩基:アンモニア、メチルアミン、ピリジンなど
炭水化物:トルエン、キシレン、クメンなど
*成分は、原料となる木材や生成法により異なります。
<民間療法>
木酢液の主成分である酢酸による皮膚表面の角質軟化・収斂作用、アルコールによる殺菌消毒作用のほか、炭素粒子の皮膚細胞の活性化、老化防止作用(推測)など、皮膚疾患時の炎症を鎮め、痒みを改善するとされています。(直接又は10倍程度に希釈して使用)
入浴剤として20〜30mlを浴槽に加えることで湯がまろやかになり汚れにくくなるといわれています。これは塩素が除去され、水分子が小さくなり運動性が高い活性水になるためであると考えられています。
<抗真菌作用>
木酢液は白癬金の1種Trichophyton mentagrophytesによる水虫に有効であることが確認されています。木酢液の成分についてはまだ不明な点もありますが、抗真菌活性成分は炭焼きの副産物として生成されたフェノール化合物であるとされており、主な成分としてメトキシフェノール誘導体の名が挙げられています。
<園芸用>
土壌の防菌、土中の有機微生物の増殖、植物の生育促進、害虫の忌避などに200〜1000倍程度の希釈液を葉面や土壌に撒布
TEQ
toxic equivalents
毒性等量
ダイオキシン類のリスク評価に用いられています。
ダイオキシンは異性体により毒性が異なることから、残留濃度を加算するだけでは生体リスクは評価できません。そこで最も毒性が強い2,3,7,8-tetrachlordibenzo-p-dioxinを1とした時の他の異性体の相対的な毒性を等価計数(TEF;toxic
equivalent factor)として定め、この係数に該当する異性体の濃度を乗じ、それらの値を合計したものがTEQsです。
出典:ファルマシア 2003.8
NMS
neurally mediated syncope
神経調節性失神
(類似語〜neuroleptic malignant syndrome:神経遮断薬による悪性症候群)
NMSは、臨床的に色々な場面で生じる神経反射による失神です。この中には、血管迷走神経性失神、情動失神、頸動脈洞失神、状況失神(咳嗽失神、排尿失神、排便失神、運動失神など)が含まれます。
NMSの発生時の特徴として、1)失神前に交感神経の緊張状態が存在する、2)心過動状態がmechano-recptorの発火に関与する、3)循環血液量の減少は血管迷走神経反射を生じ易くさせる、があり治療の際にはこれらを予防することに留意します。
薬物療法
これまでの報告とNMSの機序から、以下の作用を持つ薬物が有効と考えられています。
・弱心作用:β遮断剤〜mechanorecptorの発火を予防。
・血管収縮剤、・循環血液量増加剤、・徐脈予防作用、
リスモダン、ピメノール、抗コリン剤
・その他 ミトドリン、アメジニウム、ドロキシドパ、ジヒドロエルゴタミン
フルドロコルチゾン
生活指導
ストレスの回避(交感神経の緊張を抑制)、
過度の運動を避ける。運動後のクールダウン
上半身挙上による夜間の就寝(レニン-アンジオテンシン系の賦活による日中の症状が軽減)
弾力性下着、靴下の着用(下肢静脈系への血液貯留の軽減)
失神に至る前に症状のある場合は、臥位もしくは座位をとる。
PTM Vol.9.(4) OCT 1977