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聴覚障害を起こす薬剤

1989年8月1日号 No.48

 

 薬剤による聴覚障害としては、『ストマイ』を代表とするアミノ配糖体が有名ですが、その他にも多種の薬剤が聴覚障害を起こすことが知られています。

 薬剤が内耳に障害を与えるには、それが行って医療内耳の膜迷路や内外リンパに移行することが必須となっています。

 内耳に到達するルートには、血行性、経髄液、経中耳の3通りがあります。
血行性の場合は血液‐脳関門を通過しなくてはいけないため、薬剤自体耳毒性のあるポリミキシンB、クロラムフェニコール、エリスロマイシン等が容易に内耳障害を引き起こさないのは、これらの薬物がこの関門を通過しにくい為です。

{参考文献}薬局 1989 7

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*ヒビテングルコネート:強力な耳毒性を有するので内耳への使用はもとより、耳手術の器具消毒にも使用しない配慮が必要。

*ループ利尿剤(ラシックス等):静注した時、一過性の難聴、めまいが生じることが報告されている。

*抗癌剤:アルキル化剤やシスプラチン(ランダ)は聴器毒性を持つ。これらの薬剤による障害度は用量に依存する。

サリチル酸製剤:アスピリンをリウマチ熱などの患者に大量使用した場合に、耳鳴り、難聴が生じ、服用中止により回復したことが報告されている。

<アミノ配糖体による難聴の頻度>

ストマイ: 5%、ゲンタマイシン:10%、トブラマイシン11%

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テグレトール錠による聴覚異常

副作用情報 No.117 (1992年12月1日号に掲載)

 テグレトール錠服用中にピアノの音階を正確につかめない、チャイムの音が大きく聞こえるなどの聴覚異常を起こしたとする報告が4例なされています。

 報告された症例の年齢は10〜11歳で、4例のうち3例の血中濃度が測定されていますが、1例で有効血中濃度よりも高い濃度が測定されていますが、他の2例では濃度異常は認められていません。

 テグレトール錠服用開始から症状発現までの期間は、数日から1〜2週間頃までで、服用継続によっても回復していることから、服用初期の一過性の中毒症状であったとも考えられます。

 外国文献では、ヘルベッサー(ジルチアゼム)併用例で血中濃度上昇時に一過性の聴覚過敏を生じた例が報告されています。


構音障害

Dyslalia
articulation disorders

 口から言葉を出す際の発音障害
言葉の発音に必要な声や共鳴や調音の異常によって、語音を組み立てる上で障害があること。
 広義の言語障害のうち、ことばの音の障害、すなわち意図した音が正しく生成されない状態

原因によって、器質性、機能性、麻痺性(運動障害性)に分類されます。

 器質的構音障害:構音器官の器質的ないし形態的障害によるもの、
 機能性構音障害:誤った癖、ないし構音器官の使い方の誤りによるもの
 麻痺性(運動障害性構音障害:構音運動に関与する筋や神経の障害に基づくもの

 障害の発現様式としては、音の脱落、音の置換、音の歪みなどがあり、疾患によってこれが恒常的な誤りであったり、変動的であったりします。

 治療方針は原因によって異なるが構音訓練が有効である例が多く、正しい診断が大切です。

<<構音障害の副作用の記載の薬品(当院採用分のみ)>>

エクセグラン錠、エスクレ坐剤、サイレース錠、セニラン坐剤、ソラナックス錠、デジレル錠、テルネリン錠、トリプタノール錠、フェノバール錠、フェノバール注、フェノバルビタール散、マイソリン、メイラックス錠、ラボナ錠、ランドセン、ワコビタール坐剤、トレンタール錠、アクチバシン、臭化カリウム、マイスタン細粒


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日本薬局方の改正

1991年6月1日号 No.88

 薬局方は、薬事法の規定に従い国が定める医薬品の規格書であり、日本国内流通のすべての医薬品の性状と品質の水準を示し、安全性と有効性を保証し、さらに試験法と判定基準を定める拠り所となるものです。また、同時に、医薬品の承認申請にあたっては原則低に薬局方の用語、表現等を使用あるいはそれらに準拠するよう指導されています。

 従って、薬局方の改正は、既存の医薬品から今後申請されるであろう医薬品まですべてにわたって、わが国の医薬品の品質を大きく左右する影響力を持つといえます。

 1976年より年ごとの改定となり、本年(1991年)4月に12改正が行われました。

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<極量の削除>
 
 極量とは、「通常その量を超えては用いない大人に対する量」のことで、原則として毒薬および劇薬に規定されていました。

 この極量は常用量とともに長く日本薬局方に規定され、重要な役割を果たしてきました。しかし、昭和54年の薬事法の改正により、日本薬局法収載品であっても他の医薬品と同様に承認が必要となり、その移行処置は現在では完了しています。

 すなわち、個々の品目ごとに効能・効果、用法・用量などについて承認がなされており、それに基づいて処方されるようになりました。このような状況下では、薬事法改正前の許可のみで製造することが出来たときとは異なり、極量の役割は終了したと考えられますので廃止することとなりました。

 ただし、極量が無くなることは、病院の薬剤部での処方量管理に困難が生じるおそれがあるため、日本薬局方の付録に承認処方量の上限が付され、利便を図れるようになりました。

 なお、常用量は第10改正日本薬局方制定の際に廃止されています。


老化マーカーとしての糖鎖の可能性


 老化に伴う身体機能の低下は、ごく日常的な現象です。しかしその機能低下の程度は個体差があり、この差異は老化の特徴の1つです。このことから、老化現象は多因性であることが予想されます。

 老化の背景には糖鎖に含まれる情報と認識機序の変化があるという考えに基づき、糖蛋白質糖鎖の機能と老化という問題に取り組んだ研究が行われています。


<糖鎖についての予備知識>

 糖鎖はABO式血液型に代表されるような個体識別マーカーや、癌などの疾患マーカーとして知られています。

 蛋白質はリン酸化や糖鎖付加など翻訳後修飾を受けることがよく知られており、こうした修飾を受けることによって初めて細胞間の認識や細胞内情報伝達などで機能を持つようになると考えられています。

 多細胞生物の特徴は様々な形態と機能を持つ分化した細胞が、それぞれの役割を分担しながら全体として統一された個体を作り上げていることです。この高度に組織化された細胞社会形成し維持していくために、糖蛋白質糖鎖は存在意義を持つと考えられています。

 糖蛋白質は生体成分の中で特殊な存在でなく、生体で作りだされた多くの蛋白質は多かれ少なかれ糖を含んでいます。糖鎖には、蛋白質の安定性など物性を変えるだけでなく細胞内外での蛋白質輸送など、糖鎖が認識分子として重要な働きをしていることが、次々と明らかになっています。

<老化に伴う脳糖蛋白質マーカーの探索>

 老化に伴う脳の変化として、重量や大きさが減少することや灰白質の比率が変化することなどが知られています。
このような事実から、老化に伴って脳では多くの物質が変化することが予想されていました。

 ヒト脳の糖脂質の老化に伴う変化については、前頭葉あるいは前頂葉を対象とする一連の研究があり、リン脂質やコレステロールに加えて糖脂質の組成変化が起こっていることが報告されています。

 シナプス膜では、シアル酸を含む糖脂質ガングリオシドは加齢に従って減少していました。老齢シナプスではシナプスでの伝達物質アセチルコリンの放出が減少することが知られていますが、ガングリオシドの変化がシナプス膜流動性の変化を介して、伝達物質の放出を減少させ伝達効率を低下させているかもしれません。今後の検証が求められています。

 脳神経系のプロテオグルカンは、細胞外マトリックス分子、神経細胞接着分子や成長因子と結合するなど、神経突起形成を調節していることが明らかになり、脳の発生や修復過程で重要な役割を果たしていることが予想されています。

 糖蛋白質の加齢変化については、血清の免疫グロブリンGガラクトースが低下することが報告されています。

   出典:ファルマシア 2007.1


<医学辞典>

コロトコフ音

 血管を強く圧迫した後、それを徐々に緩めていくと、突然、血流音が聞こえ始め(収縮期血圧)、やがて音が聞こえなくなります(拡張期血圧)。この血流音の変化から簡単に血圧測定できる方法をロシアの医学者コロトコフが発見しました。今から100年前の1905年のことです。

 血圧を測るとき、看護師さんやお医者さんが耳に聴診器をしているのはこのためです。
 最近でも、色んな血圧計が作られていますが、原理はこのコロトコフ音によっています。

 

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