AGL
1989年7月15日号 No.47
AGL:acute gastric lesion;急性胃病変
<2003年追記>出典:Medicament news 2003.2.25 等
AGML:acute
gastric mucosal leion;急性胃粘膜病変
1.急性びらん性胃炎、2.急性胃潰瘍、3.2つ混在するもの、4.急性出血性潰瘍
AGMLは1968年に海外で提唱された概念、1973年に日本で提唱されたの「急性胃病変」と概念的にはほぼ重なっています。具体的には、突発する上腹部痛・悪心・嘔吐・出血などで発症し、内視鏡的に胃粘膜に急性の炎症性変化(発赤、浮腫)、出血・潰瘍性変化が確認される疾患を指します。
古くからの用いられている「急性胃炎」は、病因論的にはAGMLと同一の機序によると考えられています。しかし、臨床の現場では、内視鏡的に急性胃炎と診断する例は限られていて、急性胃炎に潰瘍性病変を加えたAGMLの方がより包括的な概念で、使用頻度も多いと考えられます。
薬剤による急性胃病変(acute
gastric lesion;AGL)は、日常診療で比較的良く遭遇します。 これは薬の副作用として頻度が高いことから十分注意する必要があります。 薬剤によるAGLの年齢別発生頻度は、50歳代にピークがあり、ついで60歳代と70歳代が同じ程度に頻度が高いという調査結果がでています。 結局、50歳代以上が全体の65%を占めており、老年者に薬剤を用いる場合、急性胃病変の発生について一層の注意が必要です。 {参考文献} PHYSICIANS'THERPY MANUAL 1988.3 |
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<急性胃病変を起こしやすい薬剤>
1、NSAIDs
日本人の場合、アスピリンの用量は、1日3.0gを越えない方が良い。特に1回の用量が1.0gを越えるとAGLが発生しやすくなる。また、アルコールの飲用が重なると、AGL特に出血性変化を来すことがある。(インダシンやボルタレン等を坐薬の形で使用しても、血中に入るので胃に潰瘍性の変化を生じることがある。
2、副腎皮質ホルモン
いわゆるステロイド剤は、潰瘍の他に粘膜出血だけを来す場合がある。
ステロイド剤とNSAIDsを併用すると出血を来しやすい。
ステロイド剤とエンドキサンの併用はしばしば潰瘍を発生する。
ステロイド剤による出血穿孔の頻度は胃に比べ十二指腸潰瘍が4倍高い。
3、経口血糖降下剤〜特にダオニール錠(グリベンクラミド)はすさまじい潰瘍が発生することがある。
4、すべての抗生物質、抗悪性腫瘍剤
5、その他、総合感冒剤、漢方薬(葛根湯、コウジン末など)、サルファ剤、強心利尿剤、血圧降下剤
痛風治療剤、ピリ、農薬(自殺未遂の場合)など
AGLの症状と治療
腹痛(上腹部痛、心窩部痛)
72.5%
嘔気・嘔吐 50.4%
出血 41.0%
吐血・下血 30.4%
内視鏡的出血 10.6%
各種薬剤を服用してから自覚症状が出現するまでの日数
NSAIDs 6.4%
抗生物質 25.8%
一般的には1週間以内が多い。
<治療>
服用の中止、粘膜保護剤、H2ブロッカー、
非経口与薬への切り替え等の与薬方法の工夫
ステロイドの効力比較
{参考文献}大阪府薬雑誌 2001.2
薬品名
抗炎症力価(注1) 分類(半減期h:注2)
ヒドロコルチゾン 1
短期間型(8〜12)
コルチゾン 0.8
短期間型(8〜12)
プレドニゾロン 4
短期間型(12〜36)
メチルプレドニゾロン 5
短期間型(12〜36)
トリアムシノロン 5
中間型(12〜36)
パラメタゾン 10
中間型(36〜54)
ベタメタゾン 25〜30
長期型(36〜54)
デキサメタゾン 30
長期型(36〜54)
注1:従来一般的に評価されてきた抗炎症力価。ヒドロコルチゾンを1としています。臨床的には、1日の生理的ヒドロコルチゾール量であるヒドロコルチゾン20mg(1錠)に対応する各ステロイド薬の量として各々1錠に設定されています。
注2:ステロイド薬の生物活性半減期:視床下部、下垂体、副腎皮質計の機能抑制作用が1/2になるまでの時間をステロイド薬の生物活性半減期といいますが、具体的には副腎皮質機能が抑制され続ける時間を表しています。
FTU
finger-tip unit
外用「適量」=1FTU
ステロイド外用剤の量:第2指の先端から第1関節までチューブを押し出した量(約0.5g)が、成人の体表面積のおよそ2%に対する適量
プレドニン錠とリンデロン錠の使い分け
プレドニン錠はステロイドのとしては中程度作用で、作用時間も中程度です。鉱質ステロイド作用が少しあり、Na貯留作用が認められています。作用発現は比較的早く現れますが、1日くらいと考えておいたほうが賢明です。
ステロイドを中止できる人には、プレドニン錠を優先的に使用すべきで、これは半減期が中程度で作用も中程度なので、副腎の萎縮が少なく、漸減療法に適していると考えられるからです。
一方、リンデロン錠は強力で、作用時間が長いのが特徴です。作用発現には数日かかります。リンデロンの適応は炎症性の強い症状には最適と考えられます。また予後2ヶ月以内の患者さんの全身倦怠感などを取り除くにもよく使用します。鉱質ステロイド作用作用がないため、Naの貯留はなく、水が貯留することが少ないと考えられます。
プレドニン錠とリンデロン錠の変換率は通常10:1です。プレドニン錠10mgがリンデロン錠1mgに匹敵しますが、ターミナルに使用するときは7〜8:1の比率で変換すると言われています。つまりターミナルでのステロイドの使用はプレドニン錠15mgがリンデロン錠2mgに匹敵すると言われています。
出典:薬事 2003.12
ぶどう膜炎
虹彩、毛様体、脈絡膜の3つの組織を合わせて「ぶどう膜」といい、この部に炎症を認める場合をぶどう膜炎といいます。
ぶどう膜炎の種類は非常に多く、炎症の形態から肉芽腫性ぶどう膜炎と非肉芽腫性ぶどう膜炎に分類されます。様々な内科的疾患に伴って発症する場合もあります。
すべてのぶどう膜炎で認められる最初の徴候は、前房中の炎症細胞です。
ぶどう膜炎を確定診断するためには一般的な眼科検査だけでなく、特殊検査や全身検査をを行うことが必要です。
治療の基本は点眼による抗炎症療法及び瞳孔管理で、これだけで不十分な場合は結膜下注射やステロイド(全身療法)を用います。
ベーチェット病に対してはコルヒチンやシクロスポリンなどが用いられている他、最近はTNFα抗体による治験が進められています。
出典:臨床と薬物治療 2002.11