読感06年上半期

06/1/1読了『転落の歴史に何を見るか』
 この視点は大事だと思いました。(つづく)
<つづき>
 組織に対する見方がよく整理されていると思います。「仲間うちの摩擦を避けたがるという心
理が最もあらわれたのは、人事においてではなかったか。」(p.90)「…、仲間意識の深化が悪
平等的発想を強め、適材適所や抜擢が行われなくなる…」(p.94)「…、包容力、度量という名
の上司の態度が、結局は彼ら青年将校たちを増長させた」(p.98)
 また、表面に現れた戦前の軍国主義や戦後の平和主義といった単純化されたことよりも、
「『変化』の要因、転落のメカニズムを明らかにすること」(p.108)が重要であるといった、冷静な
分析視点は、分析内容はもちろんのことですが、参考になります。
 エリートとは何かという議論も視座が定まっています。「公のためには自らを犠牲にしてでもと
いう強固な精神と、その精神を無事開花させるための冷静なリアリズムとの双方を有するべき
である」(p.126)「…大好きな日本のために貢献したいという気持ちを持ち続け」(p.137)、道徳
的緊張をもった人々が社会の2割でもいいのでいてほしいとのべています。
 著者は、組織をコントロールするための機能は、制度よりも人に左右されると、考えているよ
うです。それゆえに、エリートの重要性が、この本の論点になっていると考えます。組織の構成
員全員に対する教育はもちろん重要ですが、それ以上に組織を正しく導くエリートの育成こそ
が重要であるということが説得力をもって書かれていたと思います。

 06/1/3読了『国家の品格』
 なかなかよかった。(つづく)
<つづき>
 この著者の本で最初に読んだのは『若き数学者のアメリカ』です。アメリカでの生活を、日本
文化のフィルターを通して語ったこのエッセイは、非常に詩的で印象的です。その後、この著者
は、産経新聞で論説を連載している様子でしたが、あまり関心をもってみていませんでした。今
回、日本社会についてまとめた論説が『国家の品格』とのタイトルで出版されているのをみて、
なにか心に引っかかるものを感じて読んでみました。
 この論説は近代合理主義への批判から出発して、情緒の重要性を説き、完全性の否定をへ
て、それ故に完全な市民や完全な情報といったものをありえないものとして受け入れることを
説いています。人間の不完全性を前提としたときに、国家が必要とするものが「品格」であるの
だと思います。
 各章が簡潔で、聞き手に納得してもらうという誠意ある文章です。少し極端ではないかという
論旨もありますが、著者は自分が少数派であるという視点を保持しているので、灰汁の強さを
感じずに読みすすめることができると思います。

06/1/8読了『Q&Aこんな時どうする?個人情報保護』
 よく整理されています。それ以上に特に感想はありません。

06/1/14読了『石原慎太郎の東京大改革』
 石原都政の初期の取組をまとめた文章で、好意的に書かれています。失言が多いという印
象はこの本においてさえします。文学者としての視点が、政治に顔を覗かせて、有権者に混乱
をもたらすといった感じです。

06/1/22読了『道州制 新制日本のかたち』
 あまり具体的な議論がなく、残念ながら資料集といった感じしかしません。いくつかの会議の
資料を切り貼りした印象を受けます。

06/1/22読了『初めてでもよくわかる 小さな会社の源泉徴収事務ができる本』
 わかりやすくてよかったです。まあ、実用書ですから当然ですが。

06/1/29読了『実践 わが家の防災対策』
 よく整理されていますが、なかなかこの通りに実行できる家庭は少ないと思います。

06/2/25読了『わが家の防犯マニュアル』
 よく整理されています。近年の犯罪検挙率が低下している状況がグラフで顕著に示されてい
て、どうして防犯意識を高めなければいけないのかがよくわかります。

2006/3/19読了『はじめてわかる国語』
 いつもどおりでよかったです。

2006/3/21読了『工学部・水柿助教授の逡巡』
 名調子です。
  「…、それが正解かどうかわからない状態とは、つまり正解ではないことに等しいからだ。自
分で正解だとわからないようでは、考えた意味がない。」(p.36)
  「しかし、こうした一種の恐怖政治的な社会の仕組みによって、子供はみんな良い子にして
いた。成人式で騒いだりしなかったのである。大人も単なる人間にすぎないのだということが判
明し、教師も単なる労働者であって、生徒を殴ったりしてはいけないのだ、ということが子供た
ちにもわかってしまった社会では、もうかつての秩序を回復することは難しいだろう。」(p.219)
 「ほら、そうやって、無理にのんびりしようとしているでしょう?やっぱり、元を取らないといけ
ないっていう心理が働くのね。温泉なんかにいくと、みんな、溜息ばっかりついて、ああ、のんび
りのんびり、とかって、必死になってのんびりしているもの、どうもいけませんねぇ。」(p.227-
228)

2006/3/25読了『女王の百年密室』
 分厚い本ですが一気に読めます。おもしろし。
 「やっぱり、僕は楽観的な人間だ。そう、死ぬときはきっと自由なんだって信じている。」(p.
15)

2006/3/30読了『森 博嗣のミステリィ工作室』
 ファンサービス充実の内容です。四コママンガが印象的でした。
 「さきが見えなくても、そこに道があると想定した方が、とりあえず人は歩きやすいからだ。」
(p.407)

2006/4/9読了『虚空の逆マトリクス』
 すぐに物語に引き込まれます。何気ない日常といった点から、思わず膝をうつアイデアがで
てくる軽妙さがよかったです。

2006/4/16読了『段取り力』
 段取りの必要性や協力して仕事をなす方法論など、当たり前のことですが、重要なことが書
かれています。新しい分野にどのように踏み込むかという点で、あらゆる人の将来に成功の可
能性があるという主張は、若い人向けという印象です。

2006/4/29読了『定跡からビジョンへ』
 なかなか、ビジネスマンとして刺激的な内容でした。ワールドビジネスサテライトで御立尚資
が番組中にすすめていたので読んでみました。
 仕事に責任をもつ、モチベーションを高くする、気力・情熱を持つなど、何か当たり前のことが
書いてありますが、常に意識して実行することは困難だと思います。ここをコントロールできる
ことが、人生を豊にするコツなのだと思います。
 また、この中でふれられているダイナミック・プログラミング(p.252)にちょっと興味がわきまし
た。どういった方法論なのか具体的なことを見てみたいです。
 「「たすき掛け人事」と言いますが、交互にやるほど人材が豊富なのか、それともベストの人
材を抜擢してみたら偶然たすき掛け人事になったというのかですが、いずれの場合も説得力
に欠けますね。」(p.94)
 「経済的に計算できる「目に見える価値」とは別次元の、独自性、風格、気品、イメージといっ
た「目に見えない価値」が根底になければなりません。」(p.107-108)
 「中小企業が磐石ではないという意味であまり自慢できないのであれば、大企業で歯車の一
つをやっていることのほうが明日をも知れぬという意味でよっぽど自慢できないはずです。」(p.
111)
 「日本企業が日本の資本から離れて、全部ヨーロッパやアメリカ、中国、韓国、アラブといっ
た人たちの資本に渡るということを日本沈没と言うのか、ということなのです。所有者が誰で
も、その中で個人個人が自分の能力を発揮するようにすればいいので、生き方の問題は所有
権の問題とは別と思います。」(p.122-123)
 「フランス人は「情報=りんご」と考えていると思います。(中略)フランス人は、自分のりんご
を決して人にかじらせないのです。りんごをアイデアと置き換えてもいいのですが、彼らは自分
のりんごをいっぱい溜めて、人に言わない、シェアしないわけです。」(p.141)
 「しかし、どんな小さな問題を放っておいてはいけないのです。そして、こういった問題解決の
積み重ねをずっと続けないと、個人同士として、お互いに顔を認知し合ったつき合いができな
いのがヨーロッパだと思います。」(p.161)
 

2006/5/7読了『法務省令対応版 新会社法の重要55ポイント』
 社会人として知っておかないといけないという危機感でよんでみました。理解しやすいと思い
ます。

2006/5/14読了『わかりやすい通勤災害の手引』
 大変わかりやすかったです。なんといっても行政庁の編集というところに安心感があります。

2006/5/14読了『今日からマのつく自由業!』
2006/5/15読了『今度はマのつく最終兵器!』
2006/5/15読了『今夜はマのつく大脱走!』
2006/5/15読了『明日はマのつく風が吹く!』
2006/5/15読了『閣下とマのつくトサ日記!』
2006/5/16読了『きっとマのつく陽が昇る!』
2006/5/16読了『いつかマのつく夕暮れに!』
2006/5/16読了『天にマのつく雪が舞う!』
2006/5/16読了『地にはマのつく星が降る!』
2006/5/17読了『お嬢様とは仮の姿!』
2006/5/17読了『めざせマのつく海の果て!』
2006/5/17読了『息子はマのつく自由業!』
2006/5/17読了『これがマのつく第一歩!』
2006/5/20読了『やがてマのつく歌になる!』
2006/5/20読了『宝はマのつく土の中!』
 NHKで放送されていたアニメを1話みて、まったく話の筋が理解できなかったので、気になっ
て読んでしまいました。アニメのどこがわからなかったかということを後から考えてみると、誰が
敵で誰が味方かがわからない点だと思います。日常生活の中でも、昨日の敵は今日の友とい
うことはありえますから、そうしたストーリィ設定は、表面上はドタバタコメディに見えて、極めて
現実的で、筋が理解できないということ自体が、この小説の成功を示しているような気がしま
す。
 なお、タイトルに含まれる「マ」は、本来は○で囲まれています(断りがなければ以下同様)。

2006/5/20読了『爆笑問題の風説のルール』
 いつもどおり面白かったです。

2006/5/21読了『箱はマのつく水の底!』
 前作同様によい調子です。だんだん話が重くなるので、ちょっとこの先が心配です。

2006/5/30読了『爆笑問題の偽装狂時代』
 前書きも後書きもややシリアスさがにじんでいます。「これは風刺だ」ということを強調した形
ですが、無責任さを装うということも風刺には必要かと思います。かといって、前書きと後書き
が蛇足かというとそうは思いません。

2006/06/02読了『日本史の一級史料』
 読みやすい文章と構成です。マニアックな史料が掲載されていますが、それをどのように読
み解いて広く知られている歴史に結びついていくかという過程が、わかりやすく書き上げられて
います。
 また、中学校の頃に教わった歴史の内容が若干修正されていることを知らされたのも、収穫
でした。

2006/06/09読了『Q&Aこれだけは知っておきたいアスベスト問題』
 よくまとまっています。
 高速道路や幹線道路沿いのアスベスト濃度はかなりショッキングでした。
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