呪ってやる書棚を見ていて、思わず手にとってしまった。『子どもは判ってくれない』とは、ずいぶんとツボを刺激してくれるタイトルだ。いったいだれが書いたのかと思ったら、内田樹だった。 本書は、「自分の意見に同意してくれない」人々と共生するために、「大人の思考と行動」とはどういうものかについて、「若者たち」に提出する人類学的なリサーチリポートである。大学の先生だけあって、むつかしい言葉をさらりと定義してくれる。 論理性とは、言い換えれば、どんな檻にもとどまらない、思考の自由のことである。(p89)なかでも「呪いのコミュニケーション」という論考はいい。わずか数ページの文章なのだが、これを読むだけで買ったもとがとれる。田口ランディの文章を引用し、それをハラスメントの定義に結びつけていく。 このような「ハラスメント的呪詛の根にあるのは、「生き方について影響を与えたい」という「関係への渇望」なのではないかと思う。(p138)「なにが気に入らないのかはっきり言ってよ」とか「そんなことじゃ誰も友達になんかなってくれないわよ」なんて言ったことがある人、「こんなにおまえを愛し、気遣っているのに、どうしておまえにはその真意がわからないのだ」とつい思ってしまう人。そんな方にとって必要な処方箋です。
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