体育の時間



 丘沢静也は、ランニングと水泳をマイペースで楽しんでいる。けっして頑張ったりはしない。雑文集『マンネリズムのすすめ』では、そんなスローライフが味わえる。

 「自分を小さなものと考えれば、小さな幸福に恵まれる」と説く丘沢氏は、野口体操へとつながっていく。本当の自分なんてないんだよ、相手の必要に応じようとした結果、自分らしさが出るのさ。同感です。

 内田樹は、武闘派である。こちらは甲野善紀へとつながっている。能楽もたしなむようだ。『期間限定の思想』‐その意味は、あとがきを読むとわかる‐は、3部構成になっており、ロングインタビューのできがいい。

 もともと『「おじさん」的思考』が売れて有名になったらしい。週刊誌が作り出すおじさん像に異議を唱える、というのが趣旨らしいが、内田氏は女子大のれっきとした教授である。おじさんでも本が書けるんだ、と思って手にとった人もいるだろう。そういう人の期待を裏切る本でもある。

 フランス文学者が体育の授業で合気道を教えている。これだけでもセールスポイントになるのだろう。本書の中で、2002年末を区切りとして物書き廃業宣言をした。今後いっさい時評、エッセイ、公演、コメントの類いは受けつけずに、ウェブ日記ライター専業に戻ると。それなのにその後も本を出しまくっている。

(2003-07-17)
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