出版に明日はない、かもね



 先日NHK教育で、糸居重里が幻冬社の見城徹にインタビューしていた。高校時代の彼は、本とビートルズが大好きな文学青年で、毎日日記を書いていたそうな。そういう入れあげた体験があるから、ユーミンなどのミュージシャンとつきあえると語っていた。そして次のように締めくくった。「葛藤の深さの先にクリエイティブがある」と。この年代にしては、希少な人かもしれない。

 こういう人が率いる出版社だからこそ、幻冬社はビッグヒットを連発できるのだろう。でもひとつの本が100万冊以上も売れてしまうということが、どうにも理解できない。集団催眠なのだろうか。いずれにしてもミリオンセラーの出る今が、出版の最後のピークだと思う。

 そして安原顯、永江朗の名前があったので手にしたのが、『超激辛 爆笑鼎談・「出版」に未来はあるか?』。出版業界の裏話を、3人でえんえんと繰り広げている。中央公論社、三一書房、その他の出版社、再版制の問題が大きな柱だ。

 安原顯が古巣の中央公論社をボロクソにけなしているのを読んでいるうちに、だんだんイライラしてきた。すでにこのホームページで4冊も紹介している中公新書はどうなっているのだ。とてもあほが作ったとは思えない良質本なのに。本の中ほどにいたりやっと誉めてくれたので、なんとか一息つけた。

 中央公論社や三一書房の話よりも、後半で語られるマガジンハウスや若手編集者に対する悪口のほうがおもしろかった。タイトルどうりのすさまじい鼎談で、話がどこに行ってしまうのかときどき不安にもなる。そんなとき行司役の永江朗が解説を入れてくれるので、業界のことをよく知らない私でも、楽しく読み終えることができた。

 最後に、安原氏が業界再建のためのプランを提示している。その中で「編集者は週に最低10本の企画を出せ」と言っている。あなおそろし。私なんか売れない企画ばかり出して、すぐに首になってしまいそう。そもそも紙の本にそれほど執着がないので、1本も出せないかも。いやいや、本を出すのをやめようと提案してしまうかもしれない。
(2000-09-01)