あこがれの原始人



 ETV特集で食生態学の西丸震哉にインタビューしていた。ディレクターは若い女性だ。NHKも、教育テレビでは若手にどんどん作らせているようだ。しかし、大半はこけているみたいだけど。この作品でも彼女はインタビュー力のなさをもろに出してしまっていた。

 西丸氏は、『41歳寿命説』なんていう結構売れた本も書いている。わりとマスコミ受けするネタを扱うのではずれも多いのだが、言っていることはまとももマトモ。ヘンテコな理論や思想から出てきたものではなく、彼自身が厚生省のお役人として研究の現場から実感したことと、彼自身の原始人としてのカンによって裏付けられたものだ。だからこそ信用できるのだ。

 原始感覚を持った人といえば、マタギと呼ばれる人たちが有名である。なにしろ山の中が生活の場であるから、山での生活の技術と動物的なカンがないと生きていけない。道のない山に入り込み、ニューギニアにまで探検に出かける西丸氏は、さしずめ都会に住む原始人といったところか。

 今西錦司や西丸氏は、日本の誇る原始人の代表だと思う。日本のサル学が国際的にハイレベルなのも、研究者がそんな原始感覚を持つ人が多かったからだろう。そういうアカデミックな場にいた人の共通点は、若い頃から山歩きをし、フィールドを仕事場とし、探検精神に富んでいたことだ。

 番組でも写真を紹介していだが、西丸氏は尾瀬が大好きである。墓は尾瀬に作って欲しいらしい。おまけに山のガイドブックまで書いている。そんな彼ももう75歳だ。なぜか私の敬愛する人たちは、70歳以上か死んでしまった人たちばかりだ。今の50代、60代には失望することが多い。いったいどこが違うのだろうか。

 いま子供向けのサマーキャンプなど自然体験する場が多くなっている。これからは大人向けに原始人養成講座が必要なのかもしれない。
  • 41歳寿命説 西丸震哉 情報センター局 1990 NDC498.3
(1999-03-15)
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