マネー:環境から考える景気対策を望む有権者が多いということは、まだ懲りていないということだ。懲りない限り、自分から日本の社会を変えたいとは思わないだろう。そして懲りていないものが他にもまだある。かつて日本で公害と騒がれてから30年もたつのに、まだ懲りない。日本企業がオイルショックを比較的うまく乗りきったのがいけなかったのではないか。地球という限られたスペースに、これだけ多くの人口を養うにはどうすればいいか、という発想のもとに考えないといけないのに。 ミヒャエル・エンデは次のように述べている。 現代社会のあらゆる問題の根は金融システムの矛盾にある。貨幣システムを見直すこと、これがこの惑星で今後も存在できるか否かを決める決定的問いだ。かなり昔から宇宙船地球号とか、Small is beautiful.なんていうフレーズがあった。こういった系譜をちょっと紹介してみよう。 『宴のあとの経済学』では、都市のあるべき姿を提示し、適正技術の開発法を紹介している。そして著者は言う、「あなたが何かを知っていながら、それでも行動に移ろうとしないのなら、あなたは内部から腐敗するのみである」と。 『居酒屋の経済学』では、密度商品という概念を示し、臨界規模に達した社会を分割して、適正規模の社会にしようと提案している。 これらの本が出版されてかなり年月が経つというのに、今読んでもそれほど古く感じない。それだけ今の日本は進歩していないということだ。その後いろいろな派生が生じている。 ひとつはイリイチのシャドウワークという概念で、ちょうど今の時代に合っている。税制では、配偶者控除の問題であり、年金では第3号加入者の問題である。イリイチ曰く「女と男の関係をよくするためにどうすればいいかと尋ねられても答えはない。しかし一つだけはっきりしているのは、生産の縮小なしには何も始まらないということだ。」 もうひとつは、国際協力の面で適正技術に正面から取り組む人がいる。たとえば「風の学校」を主宰する中田氏だ。 最後は、エントロピーの概念を中心にして論を展開している人たちで、室田武などがその代表である。いわばエントロピー学派とでもいおうか、環境保護に熱心な人たちに人気がある。水土論を展開する室田は、ガストン・バシュラールの要請「詩学のない科学、人間の目標についてシンボル的理解をもたない純粋な知性、人間的主体を表現しない客観的知識は、人間の疎外にすぎない」にこたえようとしている。 お金というだれでも持っていて、たいていの人が大好きなものだけど、アプローチが違うだけでいろんな顔を見せてくれる。
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