世界にはばたけ、日本のマンガマンガは、世界に誇れる日本の文化の一つである。しかしマンガが隆盛を誇っているのは、日本だけではない。『マンガ 世界 戦略』では、アメリカ、ドイツ、フランス、韓国、台湾、香港のマンガ事情を紹介している。 「国際化したマンガをたどると、日本と世界の関係や国際化の問題にたどりつく」と語る夏目房之介は、日本のマンガを広く紹介して歩いた最初の人かもしれない。 この本はまさにごった煮で、日本の出版業界や国際文化交流のお粗末さから、外国人のマンガオタクやそれを迎える竹熊健太郎の奮闘振りまで、なんでもござれの内容である。お好みに合わせて、いかようにも楽しめる本だ。 日本のマンガの素晴らしさは、一部の完成度の高い、芸術的・文学的なマンガだけによるものではない。とるに足らないように見えるもの、多くの類型的で庶民的なマンガがあり、それと有機的に結びついた市場と制作システムの中でこそ完成度の高いものも生まれる。逆ではないのだ。むしろ重要なのは中間的なマンガの作品・媒体・読者の層の厚さである。外国ではこの中間層がすっぽり抜けている、というのが夏目の指摘である。 日本のマンガは、ただ市場が大きいから優れているのではない。一部に高度な表現があるから優れているのでもない。層が厚く、豊かな多様性をもち、社会のあらゆる要求に応えているからこそ優れているのだ。そんな日本マンガの輸出を担う出版社の国際版権セクションは、かなりお寒い状況にあるらしい。こんな本を出せる小学館は、日本のトップランナーなのかもしれない。 ところで少女マンガというジャンルは、日本、韓国、台湾にしかないそうだ。消費文化の進んだ国で、高野文子や大島弓子を知らないなんて、『ガラスの仮面』というストーリーマンガを味わえないなんて、ああもったいない。 竹宮恵子の新刊も、海外のマンガ家の卵必読の専門書として、ぜひ輸出したい本の一冊である。単にマンガのテクニックばかりでなく、JUNEや大泉サロン、花の24年組などについても語っている。 『もののけ姫』が字幕スーパーでアメリカ人に受け入れられる日が、東アジアやヨーロッパにコミックマーケットができる日が、いつか来ることを願う。そのときこそマンガがカラオケ並みとなる日である。
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