医療の常識を疑えがんで有名になった近藤誠は、他の病気にも手を広げている。そして『成人病の真実』では、暴き系の本領を発揮している。 まな板にのっているのは、高血圧症、コレステロール、糖尿病、脳卒中、インフルエンザ、定期健康診断など。もちろん「がんを放置したらどうなる」とか「ポリープはがんにならない」とか、専門分野についても語っている。 近藤氏は、極力データで語ろうとする。だから総死亡率に着目する。ある検査を受けたら、ある治療を受けたら、そうでない場合よりも総死亡率が下がるのか。なぜなら、それが科学の手法だからだ。しかし、医療は必ずしも科学ではない。 未開の地では、6割の病気は祈祷師でも治るという。医療にはまじないの要素がある。今風にいえば、ヒーリングとしての医療か。 そういう意味では、近藤氏の本を読んでも癒されることはない。冷徹な推論がアマチュアにもわかるように書いてあるだけだ。しかし社会制度としての医療は、少なくとも科学に反することはしないでもらいたい。医者のわがままのために、患者が犠牲になるのはまっぴらだ。そうならないためには、健康診断をする根拠は何か、と政治家に問い、どうしてその治療法がいいのか、と医者に問う必要がある。 本書は、21世紀にふさわしい医療の常識を形成するために必要な本である。成人病予備軍は、ぜひご覧あれ。
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