ぼけたら宅老所へ行ってみたい



 いきなり介護問題に首を突っ込んでしまったので、いもづるをやってしまった。

 1発目は、講演記録の「なぜ"寝たきりゼロ"なのか」を読んで軽くジャブをかました。看護婦さん相手の口八丁ぶりがおもしろくて、一気に読んでしまった。寝たきりがなぜいけないかという問いに対して、「老人から生きる意欲を奪うからだ」ときっぱり言い切っている。お見事。

 この講演を企画したのが、ライフケア浜松という会社。その流れで「自在流らくらく介護術」を読んだ。見野さんたちは、お年寄りに対して見守る、待つ、本人の力を奪わないという姿勢で接しているそうだ。また心が動けば体はついてくるとも言っている。お年寄りが心を動かす対象を見つけたら奪ってはいけないと。たとえそれがギャンブルであっても。その他にも名言がいくつも散りばめられている。

生活を再建するためのリハビリが求められる。
介護とは生き方の支援である。
寝たきりは、終末期の1週間だけが目標。
 3冊目は「宅老所よりあいの挑戦」で、九州の宅老所「よりあい」の立ち上げから軌道に乗るまでをレポートしている。収支決算などのデータも載せているので、宅老所を開きたい人には参考になるだろう。リーダーは、福祉もサービス業なのだから、接客業のお馴染みさんの関係から学べと言っている。いちいちもっともな話である。宅老所なんて託児所をもじったようで老人を馬鹿にしていると早とちりした私だが、中身をよく読んでみると自分の家の延長に宅老所があるという位置づけゆえに、意味のある名称であることが納得できた。

 三好氏や宅老所の話を読んで、老後のことをそんなに不安に思う必要はないな、と再確認した。高齢化だの、少子化だのとマスコミや行政は大騒ぎをしてきたが、これはまったくのこけおどしだ。米の自由化問題とまったく同じ手法を使っている。三好氏は言い切る。行政は、民間の5年後を遅れないようについてこいと。多くの実践例を目にしているからこそ自信を持って言えることなのだろう。

 ここまで来てはっと思いついた。今度の介護保険、弱小のまだ軌道に乗っていない宅老所に保険金が払われるのだろうか?どういう認定基準で支払われるのだろう。もし支払われないのなら、行政による福祉の足きりになってしまうじゃないか。それにデイケアに通っているうちに回復した場合、保険金の支払いが少なくなるとしたら、老人を介護漬けにしてしまう施設も出るよな。もし私が宅老所の運営者なら大いに困る。先発の人たちは介護保険についてどう対処するのだろうか。急に不安になってきた。行政が民間を不安に陥れていいのだろうか。いいわけないよな。

  • なぜ"寝たきりゼロ"なのか 新しいケアが始まっている 三好春樹 ライフケア浜松 発売筒井書房 1994 NDC369.2
     三好氏の講演をまとめた本。伏せ字ならぬ伏せ写真あり。

  • 自在流らくらく介護術 見野孝子 静岡新聞社 1998 NDC369.2 \1200+tax
     見野氏は、介護を専門とする会社ライフケア浜松の設立者。

  • 宅老所よりあいの挑戦 井上英晴、賀戸一郎 ミネルヴァ書房 1997 NDC369.2 \1800+tax
     学者さんが宅老所の実践をレポート。装丁が良くない。
(1999-10-25)

 その後、私の不安に答える本が出版された。介護保険制度でのサービス提供が可能であることを知り、少しは安心した。NPO法人となり対処しているグループが多いようだ。
  • 宅老所・グループホーム介護保険Q&A 宅老所・グループホーム全国ネットワーク編 全国コミュニティライフサポートセンター 発売筒井書房 2000 NDC364 \1100+tax
(2000-05-05)
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