青い鳥



「ガイアの夜明け」では、シックハウスと化学物質過敏症を取り上げていた。ビジネス番組ゆえ、商売の対象となるほど増えたということか。

シックハウスというのは、家の外に出てしまえば症状がおさまる。化学物質過敏症になるのはシックハウスが原因とはかぎらない。自分ちの田んぼにまいた農薬のせいで、子どもが化学物質過敏症になってしまった農家もある。

いったん化学物質過敏症になってしまうと、さまざまな化学物質に反応してしまう。香りを楽しむ香料さえも、過敏な人にとってはシンナーのように感じる。こうなると、屋外には化学物質がどこにでも存在するので、居場所がなくなる。化学物質過敏症で苦しんでいる人が、70万〜100万人ほどいるそうだ。

症状が出てしまうと、本屋とか図書館にも入れなくなる。新刊本は、インクのにおいが飛ぶまで読めない。それを考えるだけで、恐怖を感じる。余談だが、いわゆる新古本屋には長居をしないほうがいい。換気が悪く、しかも消毒剤のにおいがきつい。とくに併設店舗がある店はあぶない。症状の出ていない私でさえ、ドアを開けたら即Uターンする店がある。立ち読みのお好きな方、ご注意くださいませ。

さて、番組では田舎に引越し古い民家に住んでいる人が紹介されていた。ただ、梅雨になると家の中でカビが発生して苦しい。転居先を探してあちこち歩くが、いい家を見つけても窓を開けると田んぼがあったりする。化学物質過敏症の人は、カビにも除草剤にも反応してしまう。

そこで自然志向の住宅が登場するわけだが、解答は他にもある。たとえば外丸裕『健康な家に住みたいな!』では、24時間連続して空気を入れ替えることで対処している。著者の奥さまは化学物質過敏症だが、かつて住んでいた家よりもずっと快適に暮らせると書いている。住める家を求めてさまようよりも、住める家を建ててしまえばいいという解決策だ。

建築基準法の改正で、24時間換気が義務づけられた。しかし、気密のしっかりした施工がなされていないと、いくら換気扇を回しても空気は入れ替わらない。高断熱・高気密の住宅は、北海道で発達した工法なので、本州以南では作れる人を見つけるがむつかしいかもしれない。

シックハウスが原因で、離婚してしまった人もいる。番組に出演した人も、家庭崩壊の危機を乗り越えた人たちだ。きちんと換気できる家なら、アトピーや花粉症の人も安心して住める。高断熱・高気密なので、冷暖房にかかるエネルギーも少なくてすむ。

類似本の多い中で、本書は化学物質過敏症の妻をもつユーザーのレポートという意味で貴重な一冊だ。ナチュラルハウス志向の私も、別解のひとつとして読んだ。 (2007-02-18)