作家の役割は情報を伝えること



 村上龍『啓蒙的なアナウンスメント』の第2集は、JMMで行った対談を収めている。日本ではメディアと教育が遅れているというのが村上の認識で、若い人たちにどうやってアナウンスすべきかを模索している。

 テレビからは、「クローズアップ現代」の国谷裕子、「News23」の草野満代、「ニュースステーション」の渡辺真理を引っ張り出している。露出度の高い女性に対する教育が効果的であると判断したのだろう。

 かつてマイクロソフトの日本法人の社長をつとめ、その後金融業に転じた成毛眞の指摘は鋭い。
日本の大企業は、全体のマネジメントを見ているとおかしな部分もたくさんありますが、ディテールに関しては模範になりえます。現場には賢い人がたくさんいますし、特に大企業にいる若い人たちの質は非常に高い。(p119)
 大企業に勤めたことはないけど、たしかに優秀な人は多いようだ。
どんな基本設計をして、会社をそういうスケジュールで立て直すか。最初の投資のときにまず決定したのはコストカットでした。要するに工場の生産工程の見直しであるとか、購買の見直しです。購買にしてもEマーケットプレイスを使おうなどとはまったくしていません。(中略)コストカットの次は営業力を挙げるための施策を練り、それと平行して人事システムの見直し、最後がIT化といった感じです。(p120)
 つまりIT化は、業務改革の最後のプロセスで行うものなのだ。これをカン違いしているのが、電子政府の動き。行革が先だろうに。
官僚から商社、都銀まで、すべて「上は無能」と思っているはずです。(中略)金融機関などは、少なくとも国有化して、支店長以上をクビにするとか、年齢制限をもうけて45歳以上を切るとかすれば、すぐに再生します。賭けてもいいです。(p121)
 まずは金融、政府、自治体から実行してみよう。

 「日本の雇用システム」の章では、高梨昌と対談している。
経済学の対象は人間の経済的行為の分析ですから、温かい目で見ながら、多数の人が経済変動に適応しやすくするのにはどうしたらいいのか、という発想で経済学を勉強するべきだと思うんです。(p144)
 話はフリーターとその原因のひとつになっている教育におよぶ。
私は普通高校廃止論者で、職業課程の高校だけであとは要らない。勉強好きな人だけ勉強すればいいんです。手先の器用な人は、十代の前半から入職しなければ一人前にはなれません。今の学校システムはその能力を摘み取っている。
 と、しごくまっとうな意見である。しかし学校教育は、そのシステムを誰が作り、誰が運用するのかという問題がある。これは地方分権と密接に結びついている。
(2003-09-03)
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