華麗なる転進器用に転職する人を見ると、とてもうらやましくなる。私には、そういう才能がまったくないのだ。そのくせ思い切ったことをして周囲を驚かしたりするんだけど。 安藤哲也はそんな転職名人の一人だ。『本屋はサイコー!』は、そんな転職人生を熱く語っている。彼のプロフィールは、 '62年 東京に生まれ書店業に手を染めてから、わずか数年で業界有名人となり、カリスマ書店員などという称号までもらってしまった。そんな安藤が往来堂からbk1に移ったときには、中小・零細書店で働く人たちから批判を受けた。 批判の声を浴びせる人に僕が言いたいのは、しごくもっともな反論である。さらに 店頭で見る限り、書店にくるお客さんというのは、良質な”本好き”が2割、せいぜいベストセラーを買う程度の人が2割、残りの6割は『何か面白い本はないかな』と思いながら、見つけられずにいる。この6割の”無党派層”を掴まえることが売り上げアップにつながる私はまちがいなく無党派層の一人だ。そして私をつかまえてくれる書店がない。 僕は書店員として、以前から一つの疑問を持っていた。いよいよ核心部をついてきた。私もそう思う。自分でホームページをつくっていて、「いったいどこの誰に向かって書いているんだ」と自問することがたびたびある。こんな寝言みたいなこと書いてだれが喜ぶんだと。 その後安藤はbk1を辞めて、糸井重里の事務所に移り、さらにNTTドコモに転職した。今は電子出版(eブック)の販売をしている。
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